外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第3話 女を釣ったって言った方が適切かもね

「おぉ……ここがあの有名なアートミュージアムか」


 噂には聞いてたけど、ここまで人を魅了する建物だったのか……。


 見た目からして荘厳。まるで神殿のような見た目だ。他の建物と比較しても、力の入れようが圧倒的に違う。


 広場の中央に位置する神殿のような建物と、その周囲を囲うように位置されている数々の芸術作品。そうそう、こういうのが見たかったんだよ。


「全世界の芸術作品が集まってるアートミュージアム! 私がいなくなって二〇〇〇年経った今、どれくらい進化を遂げてるのか楽しみなのだわ!」


「私も一度来たことがある。当時はこんなに整備されてなかった」


「確かに、昔はこの広場に乱雑に展示されていただけだったな」


 魔族っ子三人は当時のアートミュージアムとの違いに感動してるのか、楽しそうに辺りを見渡している。


 そんな中、ミケだけが何かに警戒しているように周囲を見渡していた。


「どうした?」


「……視線を感じる」


「……ミケも感じるか?」


「ええ。でも捉えきれない……多分、相当の手練よ」


 やっぱり、さっき感じた視線は正しかったのか。


 でも、今の俺は何も感じない。多分どこかに潜んで、俺達のことを見ているんだろう。ミケほどの実力を持つ奴がようやく嗅ぎ分けられるほど、巧妙に隠れてるんだ。


 まずいな、敵か味方かも分からないのは……。


「敵意は?」


「ないと思う。余りにも希薄な視線……でも女かしら? 観察って感じね。主にタナトの」


「俺?」


 え、何で俺? こう言っちゃなんだがスキル以外全部平凡な俺だけど? 全平凡ですよ?


「ってか、女? そこまで分かるのか?」


「今までの経験上、男ならあんたのことを嫉妬に狂った目で見るわ。でもこれにはそれがない。それどころか興味深げな感じもするから、十中八九女ね」


 へぇ……視線一つでそこまで分かるのか。凄いなミケ。


 ……嫉妬に狂ったような目って言うのは、多分美少女達を侍らせてるからなんだろうなぁ。どうだ、羨ましいだろ。ふふん。


「じとーーー……」


「……おい、何だそのジト目は」


「べっっっつにぃ? まーたどっかで女を引っ掛けたのかと思ってぇ〜」


「人聞きの悪いことを言うな。俺は別に引っ掛けた覚えはない」


「ふぅ〜〜〜ん。まあタナトだから、女を釣ったって言った方が適切かもね」


 失敬な。俺は女の子を釣るような下衆なことはしとらん。物理的に釣ったことはあるが。二回ほど。


 と、抗議の声を上げようとした丁度その時。アートミュージアムに天辺に備え付けられていた巨大な鐘が鳴り、十三時が来たことを告げた。いやぁ、巨大な鐘だけあって、音もでかいなあ。


「……私だって早くタナトと結ばれたいのに……何で新しい女の子ばかり……」


「え? 何だって?」


「なーんにも。三人とも中に入っちゃったし、私達も行きましょ」


「お、おう?」


 何かミケ、不機嫌?


 うーん……ミケは笑ってた方が似合うんだけどなぁ……どうしたもんか。


 ……まあ、取り敢えず今は皆とはぐれないようにしなきゃな。もし俺を見てる相手が敵なら、俺が一人になったらやばそうだし。


 俺は思考を切り替えると、急いで不機嫌なミケの背中を追いかけてアートミュージアムの中に入っていった。


   ◆◆◆


 アートミュージアムの中は、一言で言えば異界のような場所だった。


 なんと言うか……統一性のない感じとか、この空間にいてふわふわしたような気持ちになるというか……とにかく、不可思議な空間だ。


 宙に浮かぶ絵画や壺。至る所に点在する歴史のありそうな彫像。俺でも見たことのない希少そうなアイテム。


 まだ建物の入り口に入っただけなのに、見るもの全てに魅了される。こんなこと初めてだ。


「……で、三人はどこ行ったんだ?」


 入り口には見当たらないけど……。


「多分、もう奥に進んじゃったんじゃないかしら」


「全く、勝手な奴らだ……ミケ、俺達はゆっくり見て回ろうぜ」


「……え?」


「ん? どうかしたか?」


「いや、その……追い掛けなくていいの?」


「あいつらなら大丈夫だろ。エリオラもイーラもいるし、問題ない」


 最悪イヴァロンの正体がバレても、あの二人がいる限り絶対に大丈夫だ。


「それより久々に二人になれたんだ。一緒にゆっくり回ろうぜ」


「ぇ、ぁ……ぇ……?」


「俺この中初めてだし、ミケは来たことあるだろ? 案内してくれよ」


「…………」


「……ミケ?」


 どうしたんだ、そんなに惚けて?


「……タナト、さっきの聞こえてた?」


「え? さっきのって?」


「……んーん、やっぱ何でもない。へへ……そっか……しょうがないわね! 私が案内してあげるわ!」


「お、おう?」


 いきなりそんな張り切ってどうしたんだ……って。


「う、腕に抱きつくなよっ、歩きにくいだろ……!」


「ええっ、いいじゃない。私とタナトの仲なんだしさ♪」


「ただの幼馴染みだろうが……」


「今はね〜」


 あっ、こいつエリオラの冗談を真に受けでやがるな。いくらエリオラでも、本気でハーレムを許可するはずないだろ。……え、違うよね? 冗談だよね?


「何ぼーっとしてるのよ。さ、行くわよ!」


「ちょっ、ひ、引っ張るな……!」






「……やっぱり、あの男の子は……」

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