外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第13話 仮じゃないですよ!?
「大変ッッッ! 申し訳ッッッ!! ございませんでしたァッッッ!!!」
「はぁ……いやまあ、気持ちは分かるけどよ……」
客室にて椅子に座る執事服の俺。その横に立つメイド服のエリオラ。そんな俺達の前に超綺麗な土下座をかます第一王女。
第三者が見たら間違いなく処刑されるな、これ。
「うぅ……だってぇ、だってぇ……!」
「仮にも第一王女が泣きそうな顔するなよ」
「仮じゃないですよ!?」
だって今のお前、どう見ても王女っぽくないもん……。
「はいはい。つまりあれだろ、俺が異界と繋がれる力を持っている。エリオラから昔の封印について聞く。俺なら異界とこっちの世界を繋げられる。ならイヴァロンの封印が解かれる前に向こうで倒す……こんな所だろ」
「は、はい……」
ふーむ……正直、その案はありだと思ってる。イヴァロンが封印を解いてこっちに戻って来る前に、いくら被害が出ても問題ない異界で処理する……発想としては間違ってはないだろう。
ただ、間違ってるとしたら三つ。
一つ目は、イヴァロンは既に復活していること。
二つ目は、あいつは俺達がコントロールしていること。
この二つに関しては、絶対に言えない。うん、言えない。言えるわけがない。
そして三つ目。
「確かに俺のスキルを使えば異界には繋げられる。だけど、異界っつっても無限にあるし、無限に広い。その中でイヴァロンの封印されてる異界の、更にイヴァロンの近くにピンポイントで繋げるのは不可能だ」
「あ……確かに……」
そこまで思考が回ってなかったのか、あからさまにしょぼん顔になるシャウナ。
申し訳ないが、これが現実だ。俺がイヴァロンを釣り上げた時なんて本当に偶然だった。いや、偶然と言うより奇跡に近い。
「とにかく、この案は使えない。絶対に俺の寿命が足りないし、何より俺の力はこんなことのために使う力じゃない」
俺の力は俺のためにあり、俺が釣りを楽しむだけの存在していると言っても過言ではない。うん。
項垂れてるシャウナには悪いけど、こればかりはどうしようも──。
『告。《虚空の釣り堀》及び【釣り】スキルを残り一万六五七〇回使用後、任意の異界、任意の場所へ繋げることが可能。推定使用可能日数、五十五日』
…………いや、あの、《釣り神様》? 凄く久々に声が聞けて恐縮なのですが……マ?
『解。マ』
……マジか。
い、今はそんなことはどうでもいいんだ、うん。……いや、待てよ? 任意の異界、任意の場所ってことは、俺の好きな異界の魚を狙って釣れるってことじゃないか? 何それ超優秀。と言うか優勝間違いなし。
そんなことを悶々と考えてると、シャウナが立ち上がって頭を下げてきた。
「タナト様、ご無理を言ってしまい申し訳ありませんでした。お父様や十極天の皆様には、私から謝罪しておきます」
「……悪いな」
「いえ。それでは戻りましょう」
苦しそうな顔なのに、無理に笑顔を作る。やっぱり……自分達を滅ぼそうとする暴力の権化が復活するってなると、怖いもんな……。
…………。
「シャウナ」
「はい?」
「あー……もしもだが……俺がエリオラを釣り上げたときみたいに、偶然にもイヴァロンを釣り上げたら……どうする?」
…………。
痛いほどの沈黙。そしてシャウナの悲痛な顔。
この沈黙が……俺も辛い。
その沈黙を破ったのは、シャウナだった。
「……そう、ですね……もしタナト様の【釣り】スキルが、魔王イヴァロンを復活させる可能性があるのだとしたら……私としては、タナト様に釣りをしてほしくありません」
キュッ……。口を真一文字に結んで、ドレスの裾を握る。
そんなシャウナを見たエリオラがムッとした顔で前に出ようとするのを止めると、シャウナの次の言葉を待った。
「……でも、私の崇拝するタナト様にこのようなことは言えません。私、タナト様の釣りをしている姿、大好きですから」
────ッ。
「……ぁ……ち、違っ……! この好きは敬愛と言うか尊敬と言うか、そう言った意味での好きでして決して疚しい気持ちでは……!」
「お、おう。分かってる分かってる」
流石に俺もそこまで自惚れてない。
だってあのシャウナだぞ? 王族で、第一王女で、王国随一の美女とまで言われているあのシャウナだぞ? 超激レアマニアでうへうへヨダレを垂らしてるのを抜きにしても、そんな人が俺を好きなんて、ないない。
あわあわしていたシャウナが、キュッと手を握る。
「でも……うーん、そうですね。もし本当に、万が一にもタナト様が魔王イヴァロンを釣ってしまわれたら……」
シャウナは一瞬思案顔になったが……直ぐに満面の笑みになり……。
「何だか、大丈夫な感じがしますね」
…………。
「お前、強いな」
「そうですか? まあこれでも水銀の魔女なんて呼ばれてますからっ」
そういう意味じゃないんだが……ま、いいや。
シャウナが振り返って、大広間までの廊下を進む。その直ぐ後ろに俺とエリオラが並んでついて行った。
「タナト、言うの?」
「……いや、言わない」
今はその時期じゃない。そのタイミングじゃない。
なら、言わない方がお互いのためで……世界のためでもあるよな。
「はぁ……いやまあ、気持ちは分かるけどよ……」
客室にて椅子に座る執事服の俺。その横に立つメイド服のエリオラ。そんな俺達の前に超綺麗な土下座をかます第一王女。
第三者が見たら間違いなく処刑されるな、これ。
「うぅ……だってぇ、だってぇ……!」
「仮にも第一王女が泣きそうな顔するなよ」
「仮じゃないですよ!?」
だって今のお前、どう見ても王女っぽくないもん……。
「はいはい。つまりあれだろ、俺が異界と繋がれる力を持っている。エリオラから昔の封印について聞く。俺なら異界とこっちの世界を繋げられる。ならイヴァロンの封印が解かれる前に向こうで倒す……こんな所だろ」
「は、はい……」
ふーむ……正直、その案はありだと思ってる。イヴァロンが封印を解いてこっちに戻って来る前に、いくら被害が出ても問題ない異界で処理する……発想としては間違ってはないだろう。
ただ、間違ってるとしたら三つ。
一つ目は、イヴァロンは既に復活していること。
二つ目は、あいつは俺達がコントロールしていること。
この二つに関しては、絶対に言えない。うん、言えない。言えるわけがない。
そして三つ目。
「確かに俺のスキルを使えば異界には繋げられる。だけど、異界っつっても無限にあるし、無限に広い。その中でイヴァロンの封印されてる異界の、更にイヴァロンの近くにピンポイントで繋げるのは不可能だ」
「あ……確かに……」
そこまで思考が回ってなかったのか、あからさまにしょぼん顔になるシャウナ。
申し訳ないが、これが現実だ。俺がイヴァロンを釣り上げた時なんて本当に偶然だった。いや、偶然と言うより奇跡に近い。
「とにかく、この案は使えない。絶対に俺の寿命が足りないし、何より俺の力はこんなことのために使う力じゃない」
俺の力は俺のためにあり、俺が釣りを楽しむだけの存在していると言っても過言ではない。うん。
項垂れてるシャウナには悪いけど、こればかりはどうしようも──。
『告。《虚空の釣り堀》及び【釣り】スキルを残り一万六五七〇回使用後、任意の異界、任意の場所へ繋げることが可能。推定使用可能日数、五十五日』
…………いや、あの、《釣り神様》? 凄く久々に声が聞けて恐縮なのですが……マ?
『解。マ』
……マジか。
い、今はそんなことはどうでもいいんだ、うん。……いや、待てよ? 任意の異界、任意の場所ってことは、俺の好きな異界の魚を狙って釣れるってことじゃないか? 何それ超優秀。と言うか優勝間違いなし。
そんなことを悶々と考えてると、シャウナが立ち上がって頭を下げてきた。
「タナト様、ご無理を言ってしまい申し訳ありませんでした。お父様や十極天の皆様には、私から謝罪しておきます」
「……悪いな」
「いえ。それでは戻りましょう」
苦しそうな顔なのに、無理に笑顔を作る。やっぱり……自分達を滅ぼそうとする暴力の権化が復活するってなると、怖いもんな……。
…………。
「シャウナ」
「はい?」
「あー……もしもだが……俺がエリオラを釣り上げたときみたいに、偶然にもイヴァロンを釣り上げたら……どうする?」
…………。
痛いほどの沈黙。そしてシャウナの悲痛な顔。
この沈黙が……俺も辛い。
その沈黙を破ったのは、シャウナだった。
「……そう、ですね……もしタナト様の【釣り】スキルが、魔王イヴァロンを復活させる可能性があるのだとしたら……私としては、タナト様に釣りをしてほしくありません」
キュッ……。口を真一文字に結んで、ドレスの裾を握る。
そんなシャウナを見たエリオラがムッとした顔で前に出ようとするのを止めると、シャウナの次の言葉を待った。
「……でも、私の崇拝するタナト様にこのようなことは言えません。私、タナト様の釣りをしている姿、大好きですから」
────ッ。
「……ぁ……ち、違っ……! この好きは敬愛と言うか尊敬と言うか、そう言った意味での好きでして決して疚しい気持ちでは……!」
「お、おう。分かってる分かってる」
流石に俺もそこまで自惚れてない。
だってあのシャウナだぞ? 王族で、第一王女で、王国随一の美女とまで言われているあのシャウナだぞ? 超激レアマニアでうへうへヨダレを垂らしてるのを抜きにしても、そんな人が俺を好きなんて、ないない。
あわあわしていたシャウナが、キュッと手を握る。
「でも……うーん、そうですね。もし本当に、万が一にもタナト様が魔王イヴァロンを釣ってしまわれたら……」
シャウナは一瞬思案顔になったが……直ぐに満面の笑みになり……。
「何だか、大丈夫な感じがしますね」
…………。
「お前、強いな」
「そうですか? まあこれでも水銀の魔女なんて呼ばれてますからっ」
そういう意味じゃないんだが……ま、いいや。
シャウナが振り返って、大広間までの廊下を進む。その直ぐ後ろに俺とエリオラが並んでついて行った。
「タナト、言うの?」
「……いや、言わない」
今はその時期じゃない。そのタイミングじゃない。
なら、言わない方がお互いのためで……世界のためでもあるよな。
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