外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第12話 懇意とは……?

   ◆◆◆


 翌日、再び大広間には十極天と国王様、シャウナ、プラスして俺とエリオラが集まっていた。


 勿論例の気配の収穫はゼロ。余りにも非自明な現象に、十極天からは昨日よりもピリピリとした空気が漏れ出している。


 その中でも一段とイラついている空気を醸し出していたのは、シャバルト国王陛下だった。


「十極天でも捕えられぬ気配、か……」


 トントントン。指で肘掛を叩く音がやけに大きく聞こえる。


 十極天で捕えられない。その言葉が、プライドの高い十極天の心をえぐったらしく聖王天が食らいついた。


「国王さんよォ。それは俺らが無能だって言いてぇのか? あ?」


「これ止めんか! 国王陛下に向かってなんじゃその口の利き方は!」


「よい、要塞天。聖王天よ、そう聞こえたのなら謝罪しよう。俺はただ現実を述べたのみ。他意はない」


 うわ……その言葉、逆効果じゃ……。


 聖王天が揺らりと立ち上がり、瞳孔の開いた目で国王陛下を睨み付ける。だが陛下の眼光と圧も、聖王天に全く引けを取っていない。


 うっそだろ……国王陛下のこの圧、十極天並じゃ……。


 高まった二人の圧が部屋の隅々まで満たしていき、テーブルや椅子、調度品がミシミシと音を立てる。


 ちょ、お前らマジでやり合うんじゃないよなっ?


 俺が内心慌ててると、十極天の他のメンツもシャウナも、何も行動に移そうとしていなかった。エリオラも、何故かずっと欠伸をしている。この肌を突き刺すような圧の中で、よく平気だね君達……!?


 風船のように膨れていく圧。


 やがてそれが限界まで達した、次の瞬間──!






「はーいはい。お二人共、お戯れはそこまでです」






 シャウナが手を叩いてピリついた空気を霧散させた。


 国王陛下と聖王天から溢れ出ていた圧も消え、いつの間にかこの場の主導権をシャウナが握っている。


「全くもう。お父様も聖王天様も、遊んでる場合じゃないんですよ? めっ」


「うむうむ、分かっているよシャウナ」


「けっ」


 ……あの超絶強面国王陛下が、シャウナの「めっ」にめっちゃ破顔してる。と言うか別人レベル。どんだけ娘が可愛いんだ。


 聖王天もシャウナ相手には何も言えないのか、そっぽを向いてシャウナの方を見ようとしない。……あれ? あんた顔赤くない? もしかして超分かりやすい人?


 ……他の奴を見るに、このやり取りは最早定番なのかもな。全く動じてない。


 シャウナが前に出ると、少し咳払いをして口を開いた。


「では改めてまとめると、破壊の魔王イヴァロンに関しては現状何も分かっておらず、昨日感じた謎の力の正体も現状は謎、ということでよろしいですね」


 …………。誰も、何も言わない。それが現実だし、反論する要素が作れていないんだ。当たり前か。


「それを踏まえた上で、どう対処するか……考えたのですが、一つだけ私達が出来ることがあるかもしれません」


 …………何?


 シャウナの発言に驚きを隠せない十極天と国王陛下。エリオラも、目をパチクリさせている。


「私が思うに、魔王イヴァロンが封印されている場所は異界と呼ばれる所だと推測しています」


 ……急に異界の話をしだしたぞ。え、何が言いたいの?


 十極天も、シャウナが何を言いたいのか分からないらしく首を傾げている。


「シャウナ王女。異界とは何ナリか?」


「この世とは隔絶された、全く別の未知の世界。無限に広がるマグマの世界もあれば、全てを凍らせる永久凍土の世界もある……それが異界です」


 俺がシャウナに伝えたまんまの知識……待て、何か……何か嫌な予感がする。


 背中に冷たい汗が流れるのを感じながらも、シャウナの言葉を止める手立てがない。そんなことしたら、間違いなく一瞬で(俺の息の根が)止められる。


「混沌と破滅が蔓延っていた数千年前。封印と言えばその異界へ飛ばすことが常識とされていたようです。これは信用ある伝手からの情報なので、間違いありません」


 その伝手って……間違いなくエリオラだよな。そうだよな。


「ふむ! と言うことは、魔王イヴァロンも異界とやらに封印されているという訳だな、シャウナ王女!!」


「まず、間違いないかと」


 ザワッ──!


 今回の会合一番のざわつき。それもそうだ。限りなくゼロに近いイヴァロンの情報で唯一の手掛かりが現れたのだ。気分が高揚しないわけがない。


「ならシャウナ様。その異界とこっちの世界を繋ぐ手段は、何かないの? もし出来るなら、向こうに行って総攻撃を仕掛けた方がいいんじゃないかしら」


 魔弾天の案に同意の声が上がる。ま、そう考えるよな。


「……ゼロとは言いませんが……私が知る手段としては、一つだけあります」


 …………。






 シャウナてめぇぇぇぇぇええええ!? それ、それっ! それ俺のことじゃねぇかあああああああああああ!?!?!?






 心臓がどっきんどっきんのばっくんばっくんだよコンチキショーがああああああああ!!!!


「ならば、その者を直ぐここに……!」


「ですがその方は私が個人的に懇意にしている方。お父様や皆様からのご要望でも、この場にお呼びすることは出来ません」


「……は? 懇意……? しゃ、シャウナよ、懇意とは……?」


「私はこれよりその方とコンタクトを取ります。皆様、今暫くお待ちを」


 シャウナが国王陛下の言葉を遮り、腰を折って頭を下げると、しっかりとした足取りで大広間を出る。


 ……チラッと俺にアイコンタクトしたのは、多分ついて来いって意味だろう。言われなくてもついて行くさ。


 俺とエリオラも頭を下げると、急いでシャウナの後を追って外に出た。

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