外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第7話 デレデレです!

 城に来て四日が過ぎ、十極天会合前日。


 俺とエリオラはシャウナに連れられて、会合の会場となる大広間にやって来ていた。


 流石王城。大広間と言うだけあって、とんでもない広さだ。


 中央には円卓。その周りには背もたれが天まで届きそうなほど高い椅子が並べられている。


 椅子にはそれぞれ、『予知夢』『剣聖』『魔弾』『重力』『要塞』『呪殺』『聖王』『確率』『創造』『炎極』と刻まれている。


 その他に一つ、明らかに他とは違う豪華さを誇る椅子がある。これが国王様の座る椅子なんだろう。


「この円卓に座るのは十極天の皆様と、会合を行う国のトップであるお父様……国王陛下となります。この度、私は司会進行を仰せつかりました。タナト様とエリオラ様には、私の側に控えていただきますので、よろしくお願い致します」


「控えてるのはいいが、何をすればいいんだ?」


「何もする必要はありません。強いて言うなら、エリオラ様には揉め事が起こった際に制圧していただきたいのです」


 せ、制圧……? 随分と物騒だが……。


「ただの会合だろ? 確かに魔王復活について話し合うみたいだけど、揉め事なんて起こるのか?」


「あ、はは……普段は起こらないんですけどねぇ……引き起こる災害の規模によっては、誰が止めるとか誰がやるとかヒートアップしてしまうらしくて……」


「ヒートアップ?」


「皆様、血の気が多いですから」


 血の気が多いってだけでスキルレベルを極めた奴がバトっちゃダメだろ……何なんだそいつら、頭でも湧いてるのか?


「エリオラ様、お願い出来ますでしょうか?」


「ん、よゆー」


「あ、ありがとうございます!」


 ……心配だ……果てしなく心配だ……。


 何事もなく終わりますように……。


   ◆◆◆


 翌日。遂に十極天会合の日になり、俺とエリオラはシャウナと共に大広間の入口横にて十極天が来るのを今か今かと待っていた。


「あー、だーるるるるるっ。帰りてぇ」


 嘘です、待ってません。超帰りてーです。


 エリオラが見たいって言うから俺も付き添ってるけど、ぶっちゃけマジで俺いる意味ないよね。釣りしたい。帰って釣りしたい。


「まあまあタナト様、もう少しのご辛抱ですので」


 はぁ……まあイヴァロンの敵なら、俺達の敵だもんな……あいつの為に少しくらい我慢するか。


 歯を噛み締めて欠伸を我慢してると、扉から見慣れたお方が入ってきた。


「おい、貴様」


「げ」


「げ、とは何だ。無礼者」


 とか言いつつ、そんなに気にしてる様子のないシャオン王子。


 ここ数日で、俺とシャオン王子はこのくらいの軽口が言えるくらいの関係になっていた。


 ていうか、シャオン王子が「許可する」とか言い出したんだが。要らぬ気遣い恐れ入るわ。


「何の用っすか、シャオン王子。暇っすか?」


「暇ではない。だが、一つ貴様らにアドバイスしに来た」


 貴様ら……てことは、俺とエリオラのことだよな。


 シャオン王子は一瞬で周囲を確認すると、俺の肩に手を置いてグイッと顔を寄せてきた。つか近い、離れろ気色悪い。


「貴様らの力がどんなものかは知らんが、十極天の前では大人しくしておけ」


「……どういうことっすか?」


「奴らは自分こそが至高の存在だと自負していて、そこに異分子が紛れ込むことを恐れている。世界のバランスを崩す可能性のある存在。魔王や、それに匹敵する者。……下手をすれば、殺されるぞ」


 ゾッ──。


 言葉の端々に感じる圧力。恐らくこれは脅しじゃない。本気だ。


 十極天の機嫌を損ねれば、俺みたいな奴は一瞬で消し飛ぶんだろうけど……。


「いや、俺にそこまでの価値はないっすよ、マジで。皆俺を買い被りすぎだ」


「……ふむ。貴様は自分の価値を客観的に見た方がいい。いずれ後悔するぞ」


 は? 客観的に見て、朝から晩まで釣りばかりしてるクソザコナメクジですが何か?


「特に女の貴様。貴様の真の力は俺でさえ見えん。どう言ったカラクリかは知らんが……注意しろ」


 シャオン王子は言いたいことを言って満足したのか、俺達に背を向けて大広間を出ていった。


 ……何がしたかったの、あいつ?


「おぉ……シャオンがデレましたよ、タナト様!」


「デレた……って言うのか?」


「シャオンが他人に対してあそこまで心配するなんて、今までありませんでしたから! 間違いなくデレてます! デレデレです!」


 男にデレられても嬉しくないんだが。


「むっ、私の方がタナトにデレてる。というか愛してるまである。今ここで求められたら直ぐに子作り出来るレベル」


「張り合うな張り合うな」


 まあ……あいつが何を言いたいのかは何となく分かった。


 十極天を怒らせるな、だろ。分かってる分かってる。怒らせるも何も、話しをするようなこともないだろうし。


「エリオラ、お前も十極天相手には何もするな。シャウナに言われた通り、バトりそう
なったら制圧してくれ」


「うい」


 はてさて、どうなることやら……。


 若干の不安を残して、更に待つこと暫し。


 突然メイドさんの声が王城に響き渡った。






「十極天の皆様が到着されました」


 いよいよ始まるのか──十極天会合が。

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