外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第6話 えへへ……ほめられた……♪
「申し訳ありません、タナト様。あの子には後できつく言っておきますので……」
「いや、本当に気にしなくていいから」
シャオン様が一体何を考えているのかは分からない。
それでも、今の会話で分かったことがある。
シャオン様はこの国が好きで、この国に住む国民を愛しているのが伝わった。自分が強くなることで、この国を他国や災害から守りたいという強い意志が感じられる。あの人の瞳には、そんな思いが見て取れた。
その思いが今の彼を作り、俺の本当の実力を見抜くほどの慧眼を宿したのだろう。
強くなり、レゼンブルク王国をためには、相手が平民だろうと自分より強い奴に教えを乞う。極端だが、その志は嫌いじゃない。
それにしても、まさか俺が釣りをしてるだけで俺の力を見抜くような奴がいるなんてなぁ……これからは、釣りをするときも場所を選んで釣りをしなきゃ。
だがエリオラはシャオン様の態度が不満だったらしく、俺の腕に抱き着いてむすっとした顔をした。
「むぅ……タナトがそう言うなら我慢する。でもあいつ無礼過ぎ。せっかくアドバイスをしたタナトにお礼も言わないなんて……」
「本当に……本当に申し訳ございませんっ。かくなるうえは死んでお詫びを……!」
「やめろ、マジやめろお前! そんなことされても俺喜ばないからな!?」
逆に夢見が悪くなるわ!
全く……シャオン様もそうだが、シャウナも暴走することがあるから困る……。
シャウナを落ち着かせた俺は、気を取り直して釣りを再開した。
「それにしても……タナト様のその力は、そういった経緯があって得られたものだったのですね」
「まあな。俺が昔から釣りが好きだってのもあるけど、努力とか頑張るとか……そんな辛い思いをしてもいずれ辛くなって逃げ出しちまうだろ? それならスキルをおもちゃとして楽しんだ方が、自然とスキルレベルも上がるってもんだ」
「スキルを楽しむ……私も初めて聞きました。私に【水銀】スキルの使い方を教えてくれた宮廷魔導師師団長も、修行と努力が実を結ぶと言っていましたし……」
え。俺の考えって一般的じゃない? 世の中そんなもんなの?
シャオン様も、十極天の奴らも同じようなことを言ってたっていうし……そんな効率の悪いことして、なんも違和感持たないのかな。
「私はタナトの考え方、すごく共感出来る」
「エリオラも、自分のスキルはそうやってスキルレベルを上げたのか?」
「私はスキルレベルは上げてない。イライザのスキルレベルを上げるのを手伝ったくらい」
……え? 上げてない……?
……そう言えば、エリオラのスキルって聞いたことないな。もしかしてエリオラって……スキルを持ってない、とか?
「あれ? そう言えば私、エリオラ様に触れたのにスキルが見えなかったような……?」
「ん。誰にもばれないようにブロックしてる」
……は? ブロックしてる? そんなこと可能なのか?
「魔法でスキルを隠蔽してる。スキルがばれるということは、対策されやすい。だから私のスキルは誰にも教えない。でもタナトになら後で二人っきりのときに教えてあげる」
「えー。私はダメなんですか?」
「だめー」
「けちー」
……エリオラのスキル。気になる……。だけど。
「エリオラ。スキルレベルを上げたことがないっていうのは、どういうことだ? そんなこと可能なのか?」
「ん。可能」
スキルは生活と密接な関係にあるし、生きていれば必ず上げざるを得ない。それがスキルだ。
だがエリオラは、スキルレベルを上げたことがないという。一体、どういうことなんだ……?
無言でエリオラの方を見ていると、エリオラはいつもの無表情で……予想の斜め上を行く、とんでもないことを口走った。
「私、生まれた時からスキルレベルがマックスだったから」
……オゥ……規格外。
◆◆◆
昼過ぎ。釣りと散策を終え、俺とエリオラは客室に戻ってきていた。
なんでも俺達が着ることになる執事服とメイド服が出来たらしく、その試着をするために戻ってきたのだが……如何せん着方が分からない。俺の服なんて、常にティーシャツとズボンだけだからな……こんな沢山ボタンが付いてる服なんて着たことないんだが。
仕方ない。メイドさんを呼ぼう。
部屋に備え付けられているベルを鳴らしてメイドさんを呼ぶと、服を着るのを手伝ってもらった。
その結果。
「おぉ……これ、俺か……?」
姿見に映る執事服姿の俺。白い襟付きシャツに黒い服。中にはベストと呼ばれるものを着て、首元には黒のネクタイとタイピンが付けられている。
乱雑に伸びた髪も整えられて、背筋を正して黙っていれば執事に見えなくもない。
姿見の前でなんとなく襟元を正していると、不意に客室の扉が開いてエリオラが顔を覗かせた。
「タナト。……はぅ……」
「お、エリオラ。どうだこれ。似合ってるか?」
エリオラの前で見せつけるように立つと、エリオラの目が僅かに見開かれた。
「はゎ……似合いすぎ……かっこいい。濡れる……」
「濡らすな。だけど、似合ってるみたいでよかった」
これで似合ってないって言われたら、ちょっと傷ついてたぞ。
「エリオラはどうだ? 着替えてきたんだろ?」
「……笑わない?」
「笑う訳ないだろ。早く見せてくれ」
エリオラが躊躇するように目を泳がすが、すぐに扉が開き……メイド服姿のエリオラが現れた。
「う……わ……」
す、げ……。
いつも儚げに佇んでいるエリオラが、フリルのあしらわれたメイド服に身を包んでいる。
似合うとか、似合わないとかそういった次元の話じゃない。まるでこの服そのものが、エリオラのために開発されたんじゃないかって錯覚するほどだ。
「ど、どう、かな……?」
「……可愛い……」
「ほ、ほんと……!?」
「ああ。めちゃめちゃ可愛い……!」
うわ、どうしよう。あの時白のワンピースを買ったときも思ったけど……エリオラってどんなものを着ても本当に似合いすぎる。めちゃめちゃ心臓が高鳴ってるぞ、これ……!
「えへへ……ほめられた……♪」
っ……くそ、可愛すぎて直視出来ねえ……。
「じゃ――ヤろ?」
「……は? うお!?」
べ、ベッドに投げられた……!?
「ま、待てエリオラ! せっかく用意してもらった服が汚れて……!」
「ご安心をタナト様。我らメイドの服は、汚れても自動的に綺麗になる魔法の生地で作られています。ご存分に欲望を解放されても問題ありません」
問題大ありだよ! てかメイドさんいたのね!?
「る、ルーシーっ、助けてくれ……!」
『聞いたぞタナト。すでにエリィと一線を越えたようじゃな。ならば仕方ない――思う存分にやるといい』
俺の味方は誰もいないのか!?
あ、ちょ、待っ――。
「いや、本当に気にしなくていいから」
シャオン様が一体何を考えているのかは分からない。
それでも、今の会話で分かったことがある。
シャオン様はこの国が好きで、この国に住む国民を愛しているのが伝わった。自分が強くなることで、この国を他国や災害から守りたいという強い意志が感じられる。あの人の瞳には、そんな思いが見て取れた。
その思いが今の彼を作り、俺の本当の実力を見抜くほどの慧眼を宿したのだろう。
強くなり、レゼンブルク王国をためには、相手が平民だろうと自分より強い奴に教えを乞う。極端だが、その志は嫌いじゃない。
それにしても、まさか俺が釣りをしてるだけで俺の力を見抜くような奴がいるなんてなぁ……これからは、釣りをするときも場所を選んで釣りをしなきゃ。
だがエリオラはシャオン様の態度が不満だったらしく、俺の腕に抱き着いてむすっとした顔をした。
「むぅ……タナトがそう言うなら我慢する。でもあいつ無礼過ぎ。せっかくアドバイスをしたタナトにお礼も言わないなんて……」
「本当に……本当に申し訳ございませんっ。かくなるうえは死んでお詫びを……!」
「やめろ、マジやめろお前! そんなことされても俺喜ばないからな!?」
逆に夢見が悪くなるわ!
全く……シャオン様もそうだが、シャウナも暴走することがあるから困る……。
シャウナを落ち着かせた俺は、気を取り直して釣りを再開した。
「それにしても……タナト様のその力は、そういった経緯があって得られたものだったのですね」
「まあな。俺が昔から釣りが好きだってのもあるけど、努力とか頑張るとか……そんな辛い思いをしてもいずれ辛くなって逃げ出しちまうだろ? それならスキルをおもちゃとして楽しんだ方が、自然とスキルレベルも上がるってもんだ」
「スキルを楽しむ……私も初めて聞きました。私に【水銀】スキルの使い方を教えてくれた宮廷魔導師師団長も、修行と努力が実を結ぶと言っていましたし……」
え。俺の考えって一般的じゃない? 世の中そんなもんなの?
シャオン様も、十極天の奴らも同じようなことを言ってたっていうし……そんな効率の悪いことして、なんも違和感持たないのかな。
「私はタナトの考え方、すごく共感出来る」
「エリオラも、自分のスキルはそうやってスキルレベルを上げたのか?」
「私はスキルレベルは上げてない。イライザのスキルレベルを上げるのを手伝ったくらい」
……え? 上げてない……?
……そう言えば、エリオラのスキルって聞いたことないな。もしかしてエリオラって……スキルを持ってない、とか?
「あれ? そう言えば私、エリオラ様に触れたのにスキルが見えなかったような……?」
「ん。誰にもばれないようにブロックしてる」
……は? ブロックしてる? そんなこと可能なのか?
「魔法でスキルを隠蔽してる。スキルがばれるということは、対策されやすい。だから私のスキルは誰にも教えない。でもタナトになら後で二人っきりのときに教えてあげる」
「えー。私はダメなんですか?」
「だめー」
「けちー」
……エリオラのスキル。気になる……。だけど。
「エリオラ。スキルレベルを上げたことがないっていうのは、どういうことだ? そんなこと可能なのか?」
「ん。可能」
スキルは生活と密接な関係にあるし、生きていれば必ず上げざるを得ない。それがスキルだ。
だがエリオラは、スキルレベルを上げたことがないという。一体、どういうことなんだ……?
無言でエリオラの方を見ていると、エリオラはいつもの無表情で……予想の斜め上を行く、とんでもないことを口走った。
「私、生まれた時からスキルレベルがマックスだったから」
……オゥ……規格外。
◆◆◆
昼過ぎ。釣りと散策を終え、俺とエリオラは客室に戻ってきていた。
なんでも俺達が着ることになる執事服とメイド服が出来たらしく、その試着をするために戻ってきたのだが……如何せん着方が分からない。俺の服なんて、常にティーシャツとズボンだけだからな……こんな沢山ボタンが付いてる服なんて着たことないんだが。
仕方ない。メイドさんを呼ぼう。
部屋に備え付けられているベルを鳴らしてメイドさんを呼ぶと、服を着るのを手伝ってもらった。
その結果。
「おぉ……これ、俺か……?」
姿見に映る執事服姿の俺。白い襟付きシャツに黒い服。中にはベストと呼ばれるものを着て、首元には黒のネクタイとタイピンが付けられている。
乱雑に伸びた髪も整えられて、背筋を正して黙っていれば執事に見えなくもない。
姿見の前でなんとなく襟元を正していると、不意に客室の扉が開いてエリオラが顔を覗かせた。
「タナト。……はぅ……」
「お、エリオラ。どうだこれ。似合ってるか?」
エリオラの前で見せつけるように立つと、エリオラの目が僅かに見開かれた。
「はゎ……似合いすぎ……かっこいい。濡れる……」
「濡らすな。だけど、似合ってるみたいでよかった」
これで似合ってないって言われたら、ちょっと傷ついてたぞ。
「エリオラはどうだ? 着替えてきたんだろ?」
「……笑わない?」
「笑う訳ないだろ。早く見せてくれ」
エリオラが躊躇するように目を泳がすが、すぐに扉が開き……メイド服姿のエリオラが現れた。
「う……わ……」
す、げ……。
いつも儚げに佇んでいるエリオラが、フリルのあしらわれたメイド服に身を包んでいる。
似合うとか、似合わないとかそういった次元の話じゃない。まるでこの服そのものが、エリオラのために開発されたんじゃないかって錯覚するほどだ。
「ど、どう、かな……?」
「……可愛い……」
「ほ、ほんと……!?」
「ああ。めちゃめちゃ可愛い……!」
うわ、どうしよう。あの時白のワンピースを買ったときも思ったけど……エリオラってどんなものを着ても本当に似合いすぎる。めちゃめちゃ心臓が高鳴ってるぞ、これ……!
「えへへ……ほめられた……♪」
っ……くそ、可愛すぎて直視出来ねえ……。
「じゃ――ヤろ?」
「……は? うお!?」
べ、ベッドに投げられた……!?
「ま、待てエリオラ! せっかく用意してもらった服が汚れて……!」
「ご安心をタナト様。我らメイドの服は、汚れても自動的に綺麗になる魔法の生地で作られています。ご存分に欲望を解放されても問題ありません」
問題大ありだよ! てかメイドさんいたのね!?
「る、ルーシーっ、助けてくれ……!」
『聞いたぞタナト。すでにエリィと一線を越えたようじゃな。ならば仕方ない――思う存分にやるといい』
俺の味方は誰もいないのか!?
あ、ちょ、待っ――。
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