外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第5話 もっと撫でるがよい
「ぐずっ……うぅっ……」
「……なあ、もう泣きやめよ」
あと、さっきから俺の背中で涙拭くの止めろ。今、俺の服これ一枚しかないんだから。
「も、もう無視しないか……?」
「ああ、しないしない」
「お話しするか……?」
「ああ、するする」
「それでよいのだ!」
魔族っ娘は俺の肩に手を置くと、そこを支点に跳び上がって胡座をかいている俺の膝の上に座った。
「むふふっ。貴様がそこまで余と話しがしたいなら仕方ない。余が話し相手になってやるから感謝せよ」
「お前が話したいだけだろ」
「何を言っておる。心優しい余は、寂しい思いをしてる貴様と話してやるのだ。感謝するのだ♪」
……あくまで、しょうがないと言うスタンスは崩さないのか。まあ俺はどっちでもいいけど。
ゆったり釣り糸を虚空に垂らしていると、魔族っ娘は興味津々と言った感じで俺を見上げてきた。
「貴様、何をしているのだ? 釣りか?」
「まあな。俺は異界の魚や武器を釣ることが出来るんだ。その力を利用して、元の世界にいる仲間にここから引きずり出してもらおうと思ってる」
「何と! では帰れる可能性があるのだな!?」
「ああ。お前が大人しくしてるのなら、一緒に連れてってやるぞ」
「勿論だ! 勿論だとも!」
めっちゃめちゃ目を輝かせてるな。まあ気持ちは分かるぞ。こんな所、ずっといたくないもんな。
魔族っ娘が俺の膝の上でパタパタと脚を動かす。それを見ていた精霊も、俺の肩や魔族っ娘の頭の上でパタパタと手足を動かしている。
はぁ……一人変なのが釣れたけど、平和なのは変わらないなぁ。
空を見上げると、いつもより厚手の雲がゆったりと流れている。……いい時間だ。俺はこういったゆったりした時間が好きなんだよ。
全身で自然を満喫してると、魔族っ娘が俺を見上げてきた。
「ところで人間。貴様、名をなんと申す」
「……何だ突然」
「この異界に存在するのは余と貴様だけだ。名を知っていれば、親しみを持ちやすいであろ? な?」
「精霊もいるんだが」
「残念だが精霊族は虚ろな存在だ。いてもいなくても変わらん」
それはそれでこいつらが可哀想な気が……。
「なんとー」
「ぼくら、いらんこ?」
「そんなごむたいな」
「でもまちがってないです」
「しゅぞくのてーへんですゆえ」
「いたしかたなし」
お前らも受け入れるなよ。抵抗しろよ。
「それで、貴様の名は?」
「……タナトだ」
「タナトか、よい名だな」
……シャウナもそういってたが、別にいい名前ではないぞ。俺の名前は、親が家の棚を見て適当に付けたものだからな。
「で、お前の名前は? 俺だけ知ってもフェアじゃないだろ」
「ふっふっふ。そんなに知りたいなら仕方な──」
「あ、やっぱいいです」
「そんなこと言うなぁ! 余も! 余も自己紹介するのだぁ!」
分ーかった、分かったからジタバタするな。
魔族っ娘はピョンッと立ち上がると、無い胸を張って俺を見下ろすような格好になった。
……見下ろす、と言っても座ってる俺より小さいが。
「……改めて見ると、お前ちっさいな」
「茶々を挟むでない! 黙って聞くのだ!」
さーせん。
魔族っ娘は手を掲げて、ギザ歯が特徴的な自信満々の笑みを浮かべると──。
「広い銀河に紅一点! 混沌と破壊を司りし、最強無敵の天才美少女大魔王! 破壊の魔王イヴァロン・ケイオスとは余のことなのだ!」
──とんだ自己紹介をしやがった。
…………。
「嘘だろ」
「う、嘘じゃないわい!」
地団駄を踏む自称イヴァロン。見れば見るほど子供だ。
「だって俺達の時代で語られるイヴァロンって、悪鬼のような形相に天を衝く筋骨隆々な巨大な肉体。自分以外、同族の魔族すらも虫けらにしか思ってない人畜有害な鬼畜野郎って言われてるんだが」
「……誰だそのイヴァロンは?」
知らねーよ。
自称イヴァロンは腕を組んで、むーっと頬を膨らませた。
「余は女ぞ。確かに今は魔力を失ってこんな見た目だが、完全回復した余は誰にも負けない絶世の美女なのだ。ぐらまーでえろえろだぞ」
「……ああ、だからそんな身の丈に合わない服なんだな。ダボダボと言うか」
「うむうむ」
「……それ抜きにしても、お前の行動全てが幼女っぽいんだが」
「幼女言うなぁ! 余は強いのだぞっ、怖いのだぞっ!」
……何だか、子供がイキがってるようにしか見えなくて微笑ましいな。
「うんうん。そうだなー、怖いなー」
妙にホッコリして、自称イヴァロンの頭を撫でる。
「むふふ、そうなのだ。余は怖いのだ。だからもっと撫でるがよい。許可する」
やっぱただの幼女だろお前。
気に入ったのか、俺の膝の上で黙って撫でられている自称イヴァロン。多分、人肌を欲してたんだろうなぁ。
「ところでタナト。色々と聞きたいことがあるのだ。余の質問に答えよ」
「ん? ああ。答えられるものなら」
「では、余は何年封印されていた?」
「お前が本当にイヴァロンなら、封印されたのは約二〇〇〇年前だな」
「ほう! では二〇〇〇年もの間、誰が魔王をしていた? 余の変わりだ。恐らくイライザか、ロゥリエあたりではないかと思うのだが」
……イライザとロゥリエも知ってるのか、こいつ。
「……イヴァロンが封印されてからは、人間と魔族は融和した。だから魔王はいないぞ」
「…………」
あ、固まった。
石のように固まった自称イヴァロンが、壊れたブリキ玩具のようにこっちを振り向いた。
「……ゆ、融和……? 人間と魔族が……?」
「ああ、イライザが融和を進めたんだ。だから俺もお前相手にビビってないだろ? 今の時代、魔族なんてその辺にいるからな。街で共生もしてるし」
「…………」
……おい?
「……そんな……余、頑張ったのに……種の発展のために、頑張ったのに……」
「あらー」
「とてもおちこみ?」
「おちこみもーど」
「おぉーん」
「だうーん」
何でお前らも落ち込むんだよ。
「……時代は変わるのだな……」
「まあ二〇〇〇年も経てばな」
「…………」
「……言っておくが、お前がまた世界中に混沌と破壊を撒き散らそうって考えてんなら、ここに置いてくからな。今度は助けないぞ」
「ギクッ」
……図星を口にする奴、初めて見た。
「約束しろ」
「うぐっ……わ、分かった、約束する……」
「因みに連れ帰って約束を破ったら、俺の力でまた異界に投げ込むからな」
「そんなっ!? き、貴様は鬼か!」
魔王のお前に言われたくないわい。
「くぅっ……! だ、だが所詮貴様は人間……完全回復した余には勝てぬぞ……!」
「まあ、俺はなぁ。でもエリオラならどうだ? あいつ強いだろ?」
「あー、奴は完全回復した余でも勝てんなぁ。奴はこの世のバグよバグ。でも奴は余が封印………………………………」
……また固まっちまったな。
固まった自称イヴァロンは口をパクパクさせ、ゆっくりと俺を見上げる。
「……な、何故……何故タナトが奴の名を知っておる……?」
「ああ、俺が釣り上げた。お前を釣り上げたみたいに」
「……きゅぅ〜……」
ばたり。あ、気絶した。
……暫く寝かせといてやるか。
「……なあ、もう泣きやめよ」
あと、さっきから俺の背中で涙拭くの止めろ。今、俺の服これ一枚しかないんだから。
「も、もう無視しないか……?」
「ああ、しないしない」
「お話しするか……?」
「ああ、するする」
「それでよいのだ!」
魔族っ娘は俺の肩に手を置くと、そこを支点に跳び上がって胡座をかいている俺の膝の上に座った。
「むふふっ。貴様がそこまで余と話しがしたいなら仕方ない。余が話し相手になってやるから感謝せよ」
「お前が話したいだけだろ」
「何を言っておる。心優しい余は、寂しい思いをしてる貴様と話してやるのだ。感謝するのだ♪」
……あくまで、しょうがないと言うスタンスは崩さないのか。まあ俺はどっちでもいいけど。
ゆったり釣り糸を虚空に垂らしていると、魔族っ娘は興味津々と言った感じで俺を見上げてきた。
「貴様、何をしているのだ? 釣りか?」
「まあな。俺は異界の魚や武器を釣ることが出来るんだ。その力を利用して、元の世界にいる仲間にここから引きずり出してもらおうと思ってる」
「何と! では帰れる可能性があるのだな!?」
「ああ。お前が大人しくしてるのなら、一緒に連れてってやるぞ」
「勿論だ! 勿論だとも!」
めっちゃめちゃ目を輝かせてるな。まあ気持ちは分かるぞ。こんな所、ずっといたくないもんな。
魔族っ娘が俺の膝の上でパタパタと脚を動かす。それを見ていた精霊も、俺の肩や魔族っ娘の頭の上でパタパタと手足を動かしている。
はぁ……一人変なのが釣れたけど、平和なのは変わらないなぁ。
空を見上げると、いつもより厚手の雲がゆったりと流れている。……いい時間だ。俺はこういったゆったりした時間が好きなんだよ。
全身で自然を満喫してると、魔族っ娘が俺を見上げてきた。
「ところで人間。貴様、名をなんと申す」
「……何だ突然」
「この異界に存在するのは余と貴様だけだ。名を知っていれば、親しみを持ちやすいであろ? な?」
「精霊もいるんだが」
「残念だが精霊族は虚ろな存在だ。いてもいなくても変わらん」
それはそれでこいつらが可哀想な気が……。
「なんとー」
「ぼくら、いらんこ?」
「そんなごむたいな」
「でもまちがってないです」
「しゅぞくのてーへんですゆえ」
「いたしかたなし」
お前らも受け入れるなよ。抵抗しろよ。
「それで、貴様の名は?」
「……タナトだ」
「タナトか、よい名だな」
……シャウナもそういってたが、別にいい名前ではないぞ。俺の名前は、親が家の棚を見て適当に付けたものだからな。
「で、お前の名前は? 俺だけ知ってもフェアじゃないだろ」
「ふっふっふ。そんなに知りたいなら仕方な──」
「あ、やっぱいいです」
「そんなこと言うなぁ! 余も! 余も自己紹介するのだぁ!」
分ーかった、分かったからジタバタするな。
魔族っ娘はピョンッと立ち上がると、無い胸を張って俺を見下ろすような格好になった。
……見下ろす、と言っても座ってる俺より小さいが。
「……改めて見ると、お前ちっさいな」
「茶々を挟むでない! 黙って聞くのだ!」
さーせん。
魔族っ娘は手を掲げて、ギザ歯が特徴的な自信満々の笑みを浮かべると──。
「広い銀河に紅一点! 混沌と破壊を司りし、最強無敵の天才美少女大魔王! 破壊の魔王イヴァロン・ケイオスとは余のことなのだ!」
──とんだ自己紹介をしやがった。
…………。
「嘘だろ」
「う、嘘じゃないわい!」
地団駄を踏む自称イヴァロン。見れば見るほど子供だ。
「だって俺達の時代で語られるイヴァロンって、悪鬼のような形相に天を衝く筋骨隆々な巨大な肉体。自分以外、同族の魔族すらも虫けらにしか思ってない人畜有害な鬼畜野郎って言われてるんだが」
「……誰だそのイヴァロンは?」
知らねーよ。
自称イヴァロンは腕を組んで、むーっと頬を膨らませた。
「余は女ぞ。確かに今は魔力を失ってこんな見た目だが、完全回復した余は誰にも負けない絶世の美女なのだ。ぐらまーでえろえろだぞ」
「……ああ、だからそんな身の丈に合わない服なんだな。ダボダボと言うか」
「うむうむ」
「……それ抜きにしても、お前の行動全てが幼女っぽいんだが」
「幼女言うなぁ! 余は強いのだぞっ、怖いのだぞっ!」
……何だか、子供がイキがってるようにしか見えなくて微笑ましいな。
「うんうん。そうだなー、怖いなー」
妙にホッコリして、自称イヴァロンの頭を撫でる。
「むふふ、そうなのだ。余は怖いのだ。だからもっと撫でるがよい。許可する」
やっぱただの幼女だろお前。
気に入ったのか、俺の膝の上で黙って撫でられている自称イヴァロン。多分、人肌を欲してたんだろうなぁ。
「ところでタナト。色々と聞きたいことがあるのだ。余の質問に答えよ」
「ん? ああ。答えられるものなら」
「では、余は何年封印されていた?」
「お前が本当にイヴァロンなら、封印されたのは約二〇〇〇年前だな」
「ほう! では二〇〇〇年もの間、誰が魔王をしていた? 余の変わりだ。恐らくイライザか、ロゥリエあたりではないかと思うのだが」
……イライザとロゥリエも知ってるのか、こいつ。
「……イヴァロンが封印されてからは、人間と魔族は融和した。だから魔王はいないぞ」
「…………」
あ、固まった。
石のように固まった自称イヴァロンが、壊れたブリキ玩具のようにこっちを振り向いた。
「……ゆ、融和……? 人間と魔族が……?」
「ああ、イライザが融和を進めたんだ。だから俺もお前相手にビビってないだろ? 今の時代、魔族なんてその辺にいるからな。街で共生もしてるし」
「…………」
……おい?
「……そんな……余、頑張ったのに……種の発展のために、頑張ったのに……」
「あらー」
「とてもおちこみ?」
「おちこみもーど」
「おぉーん」
「だうーん」
何でお前らも落ち込むんだよ。
「……時代は変わるのだな……」
「まあ二〇〇〇年も経てばな」
「…………」
「……言っておくが、お前がまた世界中に混沌と破壊を撒き散らそうって考えてんなら、ここに置いてくからな。今度は助けないぞ」
「ギクッ」
……図星を口にする奴、初めて見た。
「約束しろ」
「うぐっ……わ、分かった、約束する……」
「因みに連れ帰って約束を破ったら、俺の力でまた異界に投げ込むからな」
「そんなっ!? き、貴様は鬼か!」
魔王のお前に言われたくないわい。
「くぅっ……! だ、だが所詮貴様は人間……完全回復した余には勝てぬぞ……!」
「まあ、俺はなぁ。でもエリオラならどうだ? あいつ強いだろ?」
「あー、奴は完全回復した余でも勝てんなぁ。奴はこの世のバグよバグ。でも奴は余が封印………………………………」
……また固まっちまったな。
固まった自称イヴァロンは口をパクパクさせ、ゆっくりと俺を見上げる。
「……な、何故……何故タナトが奴の名を知っておる……?」
「ああ、俺が釣り上げた。お前を釣り上げたみたいに」
「……きゅぅ〜……」
ばたり。あ、気絶した。
……暫く寝かせといてやるか。
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