外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第17話 つまんなーい

「おうまさんです」
「ぱからっぱからっ」
「それゆけぶーけばろす」
「ひひーん」


 俺達の足元でちょこまか動き回る小人、精霊族。


 いやまあ、可愛いよ。うん、小動物みたいで可愛い。


 ……だけどさ……。


「エミュール。こいつら俺の足によじ登って遊んでるんだけど。臆病じゃなかったか?」


「ふふん。私の長年の努力で、私がいればこの子達は人間を怖がらなくなったのよ。どう、凄い? 凄い?」


 ……確かに凄いが……臆病なのに警戒心ガバガバ過ぎない?


「こまい……」


「ふおぉ……ぎざかわゆすなのだわ……!」


 エリオラとイライザが草の絨毯の上に座り込み、精霊族と楽しそうに遊んでいる。やっぱり二人も女の子なのか、可愛いものには目がないみたいだ。


「こんな王都のすぐ近くに精霊族がいるなんて……今まで聞いたことなかったわ……」


「精霊族はどこにでもいるの。ただ姿を現さないだけよ。まあ、ここはちょっと特殊だけど」


 ……あ、そういや目的は精霊族じゃなかったな。


「幻想樹ファントム……それが精霊族と関係あるんだよな?」


「その通り! 幻想樹ファントムは精霊族が一緒じゃないと姿を現さないのよ」


 なるほど、そのためにここまで来たのか。


「でも、一つ問題があって……まだ完全に信用を勝ち取れてないのか、幻想樹ファントムの所に案内してくれないのよね……」


 ふむ、そういうことか……エミュールは精霊族と交流し、幻想樹ファントムを手に入れようと考えてるんだな。


 だけどそうなると、俺の釣り竿とか言ってる場合じゃないな……。


 エミュールは草原の上に座ると、精霊族の一人を手の平に乗せた。


「ねえ精霊さん。お願い、幻想樹ファントムの木の枝が必要なの。今回だけ……本当に今回だけでいいから、ファントムまでの道を開けてくれないかしら?」


「「「「…………」」」」


 精霊族は首を傾げると、わらわらと集まって何か話し合っている。


「「「「ごにょごにょごにょごにょ」」」」


 そして。






「「「「おことわるです」」」」






 断られた!?


「……まだダメなの……?」


「るーる、きりつあるです」
「るーるあるならいたしかたなし」
「あんまりにもあんまりだ」
「き、のらぬです」


「お、お菓子とか甘い物持ってきたわよ!?」


「おかし、かんしゃです」
「かんげきです」
「あめあられです」
「でもたのしさたりぬです」
「にんげんさんはおもしろさ、たりぬです」


「そ、そんな……! 腹踊りも裸踊りも一人漫才もやったのに……!」


 …………。


「「「「つまんなーい」」」」


「グサッ」


 悪意のない純粋な言葉に打ちひしがれるエミュール。


 何と言うか……ドンマイ?


 てかこいつ、こいつらの前で裸踊りとかしたのか。それって人として、女としてどうなの……?


「ひっく……う、うぅ……私の尊厳とプライドが……」


「安心しろエミュール。そんなもの、初めて会ったときから無いと確信してるから」


「酷っ!」


 そりゃあ、初対面であんな接客されたらな……。


 閑話休題。


 俺の足に登っていた精霊族の襟を摘むと、俺の顔の位置まで持ち上げた。


「なあ、お前らの言う面白さとか楽しさってのは、どんなものなんだ?」


「……さあ?」


 いや、さあって……。


「何かあるだろ。笑えるとか、嬉しいとか」


「てつがくですな」


 そんかガバガバな哲学あるか。


「ぼくたち、ほんきのにんげんさんおうえんしてるです」


「……本気の人間を応援?」


「がんばえー」
「がんばえーっ」
「にんげんさんがんばえーっ」


 な、何だ? 何を応援してるんだ? 本気の人間って何のことだ?


「にんげんさんは、あのにんげんさんよりがんばってるです」
「がんばってるひとたのしいひと」
「ふれー、ふれー」


「……エミュールより、俺が?」


「たぶんー」
「おそらく?」
「めいびー」
「そこはかとなく」


 エミュールと顔を見合わせる。どうやらエミュールも初めて聞いたのか、困惑してるみたいだ。


「精霊さん。それってタナトとエミュールちゃんだけなの? 私とか、エリオラちゃん達は?」


「あー……」
「んー……」
「ほー……」
「にんげんさん、たりぬです」
「まぞくさん、ろんがいです」


 ……俺とエミュールを比べたら俺の方が頑張ってて、俺達とミケを比べたらミケは足りない……そして魔族のエリオラとイライザは論外、と……。


 ……ダメだ、分からん。


「がーん……論外……戦力外通告……」


「生まれてこの方、論外なんて言われたのは初めてなのだわ……」


 ど、ドンマイ、二人共。


 落ち込む二人の頭を撫でながら、俺達の違いを確認する。


 俺達とエリオラ達の違い。それは強さとかの前に、根本的に種族が違う。


 そして俺とエミュールとミケの違い。


 強さで言えばミケが圧倒的だ。


 人間性で俺とエミュールが、ミケに勝てるとは思ってない。


 それ以外の何か。


 俺が今まで頑張ってきたもの。
 そしてエミュールも頑張ってるもの。
 ミケには足りないもの。


 …………。


 ……ぁ……。


「……スキルレベル……?」


「「「「おーーー」」」」


 呟くと、精霊族が誰ともなく拍手を始めた。


「にんげんさんかしこいです」
「あたまよきよき」
「こっちのにんげんさんとちがうです」


「わ、私!?」


「ま、エミュールと比べたらな」


「タナトさん酷いですぅ!」


 いや、面白い=裸踊りする奴と比べたら……。


「じぶんたち、ぼんやりです」
「ちゃんとみえぬです」
「しゅぎょーたりぬです」
「できるひと、もーすこしでくるです」


 で、出来る人? 何だそれ?


 困惑してると、足元にいた精霊族がわらわらと一箇所に集まり、中央に道を作って半分に分かれた。


「できるひとの、おなーりー」
「「「「ははー」」」」


 精霊族が頭を下げる。


 そして……草むらの奥から、神輿に担がれた何かが現れた。


「「「「んーしょ、んーしょ、んーしょ、んーしょ」」」」


 四人の精霊族の担ぐ神輿の上に乗ってるのは、同じく精霊族。


 ただ、他の精霊族と違って帽子を被っている。


 その神輿が俺の足元に来ると、神輿の上に乗っている精霊族が俺を見上げた。


「はぁい」


「……は、はぁい……?」


 随分とフランクな……。


「ぼく、せーれーぞくぞくちょーです。だいとーりょーとよんでほしいです」


「族長じゃないんかい」


「だいとーりょーのほーがかっこよきですゆえ」


 さいですか……。


「にんげんさん、にんげんさん」


 大統領がちっちゃい指を俺に向ける。何だ? 俺も指を出せばいいのか?


 しゃがみこみ、大統領に指を向けると、俺と大統領の指が触れ……そこが小さく光出した。


「「「「おーーーー」」」」
「「「「わーーーー」」」」
「「「「なんとぉ」」」」


 え、何、何が?


「にんげんさんごーかくです」


「ご、合格?」


「にんげんさん、ちょーがんばったひとです。ちょーがんばったひと、たのしーひとです」


 ……つまり、スキルレベルを最大まで上げた人間は、こいつらの感覚で言うと楽しい人認定なのか。分かりづら。


「ちょーがんばったひと、ごしょーたいするです」


「しょ、招待? どこに?」










「ふぁんとむー」

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