外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第12話 わ、私の体でお支払いを!

   ◆◆◆


「タナト様、私には敬称も敬語もいりません。どうぞいつも通りお話ください」


「……ならそうさせてもらう。その方が俺も話しやすいし」


 一国の王女相手にタメ口なんて駄目だろうけど、シャウナ様……いや、シャウナがこう言うなら、お言葉に甘えさせてもらおう。


「タナト様、私の力についてはご存知で?」


「ああ。さっきレヴァイナスに聞いた。相手のスキルを覗く力だって……」


「はい。触れた相手のスキルを覗く力。魔法でもスキルでもない、全く別の力が私にはあります」


 なら、下手に隠すようなことは出来ないな。


 さてどう説明したらいいんだろう……。


「まず、俺のスキルに関してはシャウナが見たままだ。【釣り】スキル、レベルマックス。これが俺の力だ」


「……見間違いじゃなかったのですね……ふひっ」


 ……ん? ふひ?


「んっ、んんっ。失礼しました。……ですが、私がこの国にいて今までタナト様のお噂は聞いたことがありません。その力、隠されていたのですか?」


「隠してたというか、ミケに言うなって言われてたんだ。スキルレベルがマックスの人間って、十人しかいないんだろ? パワーバランスを崩すとかなんとかって……」


「その通りです。十極天と呼ばれる、スキルを最大まで極めた十人。あの方達がいるからこそ、世界は戦争を起こさず平和を保っています」


 ……たった十人が世界の抑止力になってるってことか……てことは、一人一人が国家を単騎で滅ぼせるほどの強さ……そりゃヤバいな。


「ですが、そんな中に異分子が現れました」


「異分子?」


「タナト様です」


 ……俺?


 ……ああ、そういやルーシーも言ってたな。俺の力があれば最強装備も伝説のアイテムも簡単に手に入るって。


 考えたくはないが、軍事転用ってやつか……。


「タナト様の力があれば、レゼンブルク王国の騎士団も、魔法師団も、冒険者も、末端の兵士に至るまで強力な装備を手に入れられます。文字通り、最強国家の誕生です」


「……言っておくが、俺を無理に従わせようとした瞬間にエリオラ達が黙ってないぞ。最強国家が出来る前に、レゼンブルク王国は地図上から消える」


「分かっています。そんなことをお願いするのは三流ですよ」


 何の三流だよ。


 シャウナはニッコリと笑うと、手を組んでテーブルに肘をついた。


 な、何だ、この笑顔の圧力は……。


「タナト様。私達は互いに幸運だと思いませんか?」


「……幸運?」


「ええ!」


 うおっ、ビックリした。いきなり前のめりになるなっ。


「私は激レア装備やアイテムを集めている収集マニア! そしてタナト様は、簡単に激レア品を手に入れることの出来る超超超逸材! これを運命と言わずなんと言うのでしょう!」


 え……ええ……何でこの人クルクル回ってるの……?


「私の日頃の行いが良いからか、神様は素晴らしい贈り物をくださいました! ああ神様、私はこれからもあなたを崇拝致します……!」


 ……何を盛り上がってるのかは知らないが、おめでとうと言うべきか……?


 だが……ははん、シャウナの言いたいことが何となく分かったぞ。


「つまり、俺のスキルを秘密にする代わりに自分に優先的に装備を回せと?」


「その通りでございます!」


 シャウナは俺の手を握ると、思い切り顔を近づけて来た。ちょっ、マジ近いって。やめてそんな綺麗な顔を近付けないで、うっかり惚れてまうやろ。


「タナト様のスキルを見た限り、ここにある品々などほんの一部! 恐らく、神器級の装備や神話級のアイテムも釣れてるんじゃないでしょうか!?」


 うっ……当たってる……。


「さ、流石にそれはやれないぞ。エリオラに監視してもらって、封印してるからな」


「なんだぁ……でもそれ以外! それ以外の世に出してもいい品もあるんじゃないでしょうか!? うへっ、うへへへへへ……!」


 汚い汚い汚い! 美人がヨダレ垂らすな!


「べ、別に俺は構わないが……互いに幸運ってのはどういうことだ? シャウナはともかく、俺に得があるとは思えないが……」


 むしろ俺にとっては不運と言っていいだろう。


「勿論タダとは言いません! 全ての品を高額で買い取ります!」


「俺、金にも興味ないからなぁ。それにエミュールから売上金の四割貰ってるから、金には困ってないんだわ」


「でしたら爵位を!」


「自由に生きていたいから村人のままでいいや……」


「で、でしたら名誉国民として……」


「栄誉も名誉もいらん」


「邸宅を……」


「今持ってる高級浮遊馬車があるからいらんなぁ」


「あなた欲が無さ過ぎません!?」


「失礼な、人並みの欲はあるぞ」


 ただ、釣り以外にマジで興味が無いだけなんだよ。自分でもどうかと思うけど。


「人並みの欲……で、でしたら!」


 シャウナは顔に紅葉を散らし、手をモジモジさせ──。














「……わ、私の体でお支払いを!」


「ノーセンキュー」

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