外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第1話 空き家?

 アクアキアを出発して三日目の夜。俺達はいつも通り浮遊馬車でのんびりとした時間を過ごしていた。


 で、俺はいつも通りの釣り……ではなく、武器やアイテムに絞って釣りをしていた。


 リビングにいるのは俺とミケ、白部屋にはエリオラとイライザがいて、釣った装備やアイテムの仕分けとメンテナンスを任せている。


「よっと。あ、何だっけこれ? ゴミの雫?」


「神の雫ね。あんたもっとアイテムの名前とか覚えなさいよ……」


「いやぁ、魚の名前以外マジで興味なくて」


「褒めてないからね?」


 何だ。


 しっかし、こんな何処にでもありそうなガラス細工が、神の雫ねぇ……使い方も分からないアイテムばかりだし、価値がどうとかもイマイチ理解出来ない。


 だけど成長したのか、昔みたいに本当のゴミとかガラクタは釣っていない。絶対に何かしらのアイテムや装備は釣れるようになっている。


「お姉ちゃん、何で装備とアイテムばかり釣ってるの?」


「約束を果たすため。ひいては人助けと、装備やアイテムの断捨離と、お金のため」


「つまり売るってこと? 何だか勿体ないのだわ。これだけ超激レア装備や超激レアアイテムがあるのに……」


「勿論全部は売らない。不老不死の原液や神器みたいな、この世にあっちゃいけないものは売らない。私とルーシーの元で永遠に監視する」


「……何でこの世にあっちゃいけないものを平然と釣ってるの、お兄ちゃんは……」


「それは……私にも分からない……」


 いやまあ、俺もその辺は分からんなぁ。なんか知らんけど釣れてるって感じだし。


 こういうのは理屈じゃないんだ。


「よっ。あ、これは知ってるぞ。炎獅子のほにゃららだ」


「炎獅子のたてがみ。覚えてないなら無理しなくていいから……」


 スマソ。


 だが、もうかなりの量になったはずだ。この三日間、ずっと装備とアイテムばかり釣ってるし。


「ルーシー、もうそろそろいいんじゃないか?」


『うむ、そうじゃの。これだけあればエミュールも満足じゃろ』


「じゃ、明日になったらあいつの店に行くか。エリオラ、王都まで転移を頼むぞ」


「ん、任せて」


 さーて、これを見たらあいつ、どんな反応するかね。


 ちょっとだけ、楽しみだったりする。


   ◆◆◆


 翌日。俺達は《虚空の生け簀》の外に出ると、エリオラの転移魔法で王都の門の前に来た。


「……相変わらず便利な魔法ね、転移って……流石古代魔法……」


「ミケちゃん、この時代の魔法使いは使えないの?」


「使える人はいるけど、古代魔法だから門外不出なのよ。私の知ってる人は、宮廷魔導師師団長くらいね」


「あんまり難しい魔法じゃないのに、門外不出って……現代人の感覚は分からないのだわ」


 へぇ……この魔法って、そんなに珍しい魔法だったんだ。結構エリオラに使ってもらってたから、そこまで気にしてなかったけど。


 まあいいや。取り敢えず今はエミュールの店に行こう。


 ミケが女性門番に身分証を見せると、ギョッとした目で身分証とミケを交互に見る。


「あれ……み、ミケ様!?」


「ご苦労様。ちょっと王都に用事があって戻って来ました。入っていいかしら?」


「勿論ですとも! 騎士団長にお話しした方がよろしいですか?」


「いえ、今回は本当に私用だから、そこまでしなくてもいいわ。それじゃ、お仕事頑張って」


「は、はいっ!」


 ……何だか、羨望の眼差しでミケを見てるな。まあ《騎乗戦姫》って異名まで持ってるんだ。同じ女として、憧れはあるんだろう。


 その後順番にエリオラ、イライザ(今回も偽名のイーラ)、俺の順に身分証を見せ、無事王都に入れた。


「あいつの店ってこっちだったよな」


「ん。確か……あれ? この辺だったような……」


 この通りのこの店並び、覚えがあるぞ。


 服屋、アクセサリーショップ、土産屋、雑貨屋、空き家……空き家?


 ……こんな所に空き家なんてあったか?


『……あ』


 あ?


『閉店のお知らせ。平素より当店をご利用頂きましてありがとうございます(利用してくれる客いないけど……)。この度、当店は売れ無さすぎて下手すると餓死しかねないと判断したため、閉店することとなりました。お客様には大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございません(迷惑をかける客すらいないけど)。これまで当店をご愛顧いただき、誠にありがとうございました(ご愛顧してくれる客いねーけど!)。装備屋エミュール店長、エミュール・ハーフナー……』


 …………。


 マジか。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品