外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第27話 想像と違う!?

 騎士団長の馬に乗せられ、走ること数時間。夜が明けると同時に、俺達は既に王都へ到着した。


 さっきまで眠そうにしていた門番が、騎士団長の姿を見て背筋を伸ばした。


「き、騎士団長!? と……そ、そいつは……!」


「うむ、捕まえた。これよりイライザ教団へ向かう。門を開けてくれ」


「は、はいっ。開門!」


 ……あー、ここまで来ちゃったなぁ……結局逃げ出す算段もつかなかったし、どうするか……。


 エリオラも、さっきから俯いて黙ってるし……。


 何とかして、騎士団長だけでも《虚空の生け簀》に入れられればいいんだが……流石にそこまで隙を見せるような奴じゃない。


 結局何も案が思い浮かばないまま、王都の中央通りを進む。


 まだ人通りが少ないのが救いだが、俺達を見た王都の人達は小声で何か話している。


 居心地の悪いことこの上ない。


「エリオラ、大丈夫か?」


「……ん……」


 ……まあ、大丈夫じゃない、か……こんな状況で大丈夫な奴なんていないよな。


 大通りを進み、噴水広場を通り過ぎる。そこから少し歩いた所で、巨大な建物の前に止まった。


「ここが、イライザ教団の本部、教会堂だよ。中で依頼主の教主が待っている」


 城と見間違える程のデカさ。あの騒動がなければ、エリオラと一緒に来ようと思っていた場所だ。詳しくは知らなかったが、まさかイライザ教団の本部だったなんて……。


 馬から降ろされると、教会堂の前に立っていたローブ姿の奴が近付いてきた。


 ……あいつは……。


「ミレイ……!」


 やっぱり、こいつもイライザ教団の……!


「騎士団長様、ご苦労様です」


「いや、これも仕事だからな。……念の為に、教主に身柄の引渡しを見届けさせてもらってもいいかな?」


「はい」


 ……なんか、あの時とは印象が違うな。しおらしいと言うか、大人しいと言うか……。


 ミレイが先導し、騎士団長、騎士団長に捕まってる俺、その後ろにエリオラが付いてくる。


「……おぉ……凄いな……」


 大聖堂っていうんだろうか。煌びやかではないが、装飾が細部にまで行き渡っているし、絵画や芸術品が並んでいる。


 まるで、ここ全体が芸術みたいだ……。


 それに……一番奥に見える、巨大な肖像画。


 優しく微笑むそれは……髪の毛が紫色で、瞳も同じ紫だが……エリオラそっくりだ。


「……イライザ……」


『ああ。成長しているが、イライザじゃな……』


 ……あれが……エリオラの妹、イライザ……。


「レヴァイナス」


「……教主殿」


 っ……あいつが、イライザ教団の教主……!


 柔和な笑みを浮かべているそいつは、呆れた顔で騎士団長レヴァイナスを見た。


「もう、ハレイって呼んでよ。私とあなたの仲でしょ?」


「公私混同はせん。それにただの幼なじみだろ。……さあ、連れて来たぞ」


 騎士団長はエリオラを前へ押し出す。


 教主ハレイはその姿を見ると、目を見開いた。


「……あなたが、《第十三紫電・空堕とす雷光イライザ》を使ったという……?」


「……ん。……エリオラ」


「…………っ!」


 口元を手で覆い、目に涙を溜める。


 ……反応がおかしいぞ……? 何だ……?


「……教主殿、どうしたのだ?」


「……ぁぁ……本当に……本当に……!」


 ハレイは体を震わせながら手を組み、エリオラの前に跪いた。


 まるで、本物の神に会ったかのように──。






「お待ちしておりました、天雷の魔女エリオラ様……この三〇〇〇年、あなた様のお帰りを……!」


   ◆◆◆


 ハレイは俺、エリオラ、騎士団長、それにミレイを連れて、祭壇の奥にある通路から奥へと進んでいく。


「イライザ教団は、晩年のイライザ様が創られた教団なのです。創った理由は伝わっておりませんが、彼女の最後の言葉はこうです」


『《第十三紫電・天堕とす雷光イライザ》を使う者、もしくはエリオラと名乗る魔族が現れたら、必ずここへ連れて来るように』


 ……合致するな、エリオラと。まあ本人だし。


「その理由、分かる?」


「それも分かりません。ただ、この先にある魔水晶を見れば分かる、と」


「……あの子らしい。イライザはサプライズ、大好き」


『イタズラっ子じゃったからなぁ』


 さっきより晴れやかになったエリオラは、ルーシーと楽しそうに話す。


 それを見た騎士団長は、驚いた顔でエリオラを見る。


「待って欲しい。奇跡の魔女イライザ様は、亡くなって一〇〇〇年経つのだが……」


「ん。私、封印されてた」


『エリィは三〇〇〇年前の魔族じゃぞ』


「…………」


 お、騎士団長が唖然としてる。ふふふふふ……驚いておるわ。


 薄暗い廊下を歩き続ける。


 よく手入れがされてるのか、それとも魔法が掛かってるのか……まるで新品同様。異様なまでに綺麗だ。


「……見えて来ました。あれが魔水晶です」


 特に扉もなく、廊下を抜けると大きな部屋に出た。俺達全員が横に並んでも、余りあるくらいの広さだ。


 その中央にある、小さな台座と紫色のクッション。その上に俺の頭くらいのサイズの水晶玉が乗っている。


「この魔水晶をエリオラ様に観せれば、全て分かるとのことでしたが……」


「……ん、分かる。この魔水晶には魔力でロックが掛けられてる。イライザ本人か、私の魔力じゃないと開けられないように」


 エリオラが、魔水晶に手をかざす。


 すると、そこから白い電撃が迸り、魔水晶へ吸収されていった。


 神秘的な光景。それもつかの間、魔水晶に変化が訪れた。


 魔水晶が無数のブロック片に変わると、それが円錐状になって、底面が光る。


 その光りが、俺達の正面にある壁を照らす、と……一人の女の子が浮かび上がった。


 肖像画と同じ、紫色の髪、紫色の瞳。


 柔和な笑みではなく、眉間に皺を寄せている彼女は……。


「……イライ、ザ……?」


 ……嘘……何で、イライザが映って……?


『んー? ちょっと、これ撮れてんの? さっきと変わんないんだけど。……え、撮れてる? そういうのは早く言いなさいよ!』


 ……何と言うか、その……。






『えー、こほん。やっほーお姉ちゃん、イライザだよ。ひっさしぶりぃ♪』


 …………。


 想像と違う!?

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