外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第23話 ずっとずっと、大好きよ

 ミケがエリオラの一大事を知らせてくれてから、三日が経った。


 村のみんなは、俺の信じたとおり誰にも言わないと約束してくれている。お陰で、俺達は今日ものんびり釣りが出来ていた。


「よっ。んー、また装備。ルーシー、これも仕分けしといてくれ」


『了解じゃ。おぉ、天狗シリーズの兜じゃないか。また珍しいものを釣ったのぅ』


「いくらになると思う?」


『エミュールの店の値段で考えると、これだけで三〇〇万ゴールドじゃな』


 へぇ。やっぱり俺の釣り上げる装備って、本当に高価なものばかりなんだなぁ。


「ぬぬぬ……えいっ」


 エリオラも、見よう見まねで俺の釣り方を真似している。人竿一体ってやつだ。


 流石に真似は出来てないが、それでも今のところ百発百中で魚を釣り上げている。


「タナトっ、どう?」


「おう、立派なレインボーフィッシュだ」


 しかも大きさからして、俺でも一日に一回しかお目にかかれない主級だな。エリオラの脚くらいのデカさもある。


「エリオラには釣り人の才能もあるな」


「タナトと一緒?」


「おう、俺と一緒」


「むふーっ。一緒、一緒♪」


 にこにこルンルン。楽しそうだな。


 エリオラがもう一度湖に糸を投げると、装備やアイテムの仕分けをしていたルーシーが戻ってきた。


『ふぅー。タナト、大分仕分けも進んだぞ。使い物にならない装備もあるが、シリーズ別に分けると三〇八シリーズもあった。もう少し増えそうじゃが』


「それをランク別に分けるとどうなる?」


『うむ。下級装備が九五。中級装備が八二。上級装備が六七。最上級装備が三五。究極装備が十八。神器が十一じゃ。神器以外は、全部十個以上揃えられているぞ』


 そんなにあるのか。こりゃ、今のままじゃ持ち運ぶの大変だな。


 確かシリーズは、兜、鎧、腕、脚、武器、指輪、腕輪に分けられていたはずだ。


 それが三〇八シリーズ、十個もあるって考えると……最低でも、二九七〇個のシリーズ装備がある計算になる。


 俺、よく今までこんなに釣ったなー……自分で自分を褒めてあげたい。


『タナト、これを運ぶのは骨が折れそうじゃが、大丈夫かの?』


「ああ。もう少しで俺の新しい力が解放されるからな」


《釣り神様》、あとどのくらいだ?


『解答。《虚空の釣り堀》使用回数、九五二八回。推定、《虚空の生け簀》獲得回数、残り四七二回』


 えっ、いつの間にあと五〇〇回切ってたの!? こんなに使ってたんだ、俺……。


「タナト、どうしたの?」


「え? あ、いや……」


 そうだ、この事、まだこいつらに話してなかったな……。


 うーん、話すべきか話さないべきか悩んでここまで来たが……流石に、これ以上一緒にいるといつかバレるだろうしなぁ……。


「……エリオラ、ルーシー。実は俺、お前達に隠してたことがあるんだ。この話を聞いたら、お前達は俺を嫌いになるかもしれない。それが怖くて、言い出せなかったが……それでも、聞いてくれるか?」


 言った。言っちゃった。どうする、もう後には引けないぞ。


 心臓がうるさいくらい高鳴ってる。


 だがエリオラはそんなこと知らず、首を傾げて俺の頭を撫でてきた。


「タナト、頭打った? それとも悪いもの食べた?」


「い、いや、俺は正常だが……」


「良かった。……安心してタナト。私、タナトが何を言っても絶対嫌いにならない。ずっとずっと、大好きよ」


『ウチもじゃ』


 ……お前ら……。


 ……よし、覚悟は決まった。言うぞ……!


「実は──」


 俺は話した。


 俺の【釣り】スキルと、《虚空の釣り堀》のことを。


 そして、その力によってエリオラ達を異界から引っ張り、あまつさえ殺しかけてしまったことを。


 洗いざらい、全て。


「…………」


『…………』


 ……反応は、ない。


 ど、どうだろうか……?


『た、タナト、お主……!』


「タナト……!」


「みぞおちっ!?」


 と、突進……! こやつ、的確に急所を……!


『タナト……ありがとう……本当にありがとう……!』


「タナトっ、タナトっ……!」


 ……え……泣いて……え?


「な、何だよ。俺、お前らを殺しかけて……」


『何を言う! タナトがウチらを引っ張って来なかったら、ウチらはまだ異界に閉じ込められていたのじゃぞ! タナトは命の恩人じゃ!』


「うんっ、タナト、私達の救世主……!」


 ……そう、か……そう思ってくれるなら、俺も嬉しいな……。


「タナト……好き、大好き、超好き……!」


『ウチも大好きじゃ〜……!』


「わ、分かった! 分かったからそんな引っ付くな……!」


 あとめちゃめちゃ恥ずかしい……!


   ◆◆◆


「それで、《虚空の生け簀》はもう出来そうなの?」


「ああ。あと四七二回釣り堀を使えば、生け簀も使えるようになるらしい」


「それなら、私達に気にせずやって欲しい。というか早く私も見たいっ」


 ……エリオラがそう言ってくれるなら、遠慮なくやってやるぞ。


「来い、《神器釣り竿》」


 喚ぶと、俺の手に黄金の釣り竿が現れた。相変わらずの美しさ、惚れ惚れする。


「おぉ……これがタナトの神器……!」


『美しいのじゃ……!』


「はは、ありがとう。それじゃ……よっ」


《神器釣り竿》を、湖じゃなくて空間に向けて振るう。


 空間が波打ち、釣り糸がゆらゆらと揺れる。


「……これが、《虚空の釣り堀》……」


 エリオラが波打ってる空間を触ろうとするが、触れず空振りする。俺も触ろうとしたけど、あれって神器じゃないと触ることも出来ないんだよな……不思議なものだ。


「……お、引いてる。よっと」


 神器を引いて釣り上げる。と……何だ、レッドドレスフィッシュか。


「エリオラ、これ食うとスキルレベルが一つ上がるけど、食う?」


「食う!」


 元気のよろしい返事だ。


 釣った魚はエリオラに食わせ、装備はルーシーに仕分けてもらうこと数時間。


 すると。


『告。《虚空の釣り堀》の使用回数が一万を達成。《虚空の釣り堀》が派生し、《虚空の生け簀》を使用可能』


「あ、終わった」


「生け簀、出来るようになった?」


「みたいだな。早速使ってみよう」


 えっと使い方は……右手を前に出して、唱えればいいんだな。よし。


「《虚空の生け簀》」

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