外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第18話 趣、味、よっ!
「で、お前何してんだよ……」
「…………」
噴水広場ベンチに戻って来た俺とエリオラ。プラスしてミケ。
ベンチに座るミケは、紙袋を大事そうに抱えながらモジモジとしている。
出て来た店とタイミングを考えると……その中のブツは、想像に難くない。
「まあ、ミケももう大人だし、王都に住んでるから彼氏の一人や二人や三人や四人はいて当たり前だと思うが……」
「そんなにいないわよ! て言うか一人もいないわよ!」
「え、じゃあ自分の趣味でそれを……?」
「ちっがーう! だからこれは……っ!」
ぼしゅっ! うぉっ!? 頭から煙が!?
「こ、ここここここれっ、は……!」
プルプルプルプル……全身を震わせるミケは、チラチラと俺を見上げる。……何だよ?
「うぅ〜……! もう、察してよ……!」
「悪いな。察して、という言葉は、俺がこの世で一番嫌いな言葉の一つだ。言葉にしろ。声に出せ」
「ぐっ……あ、あんた、女の子に何恥ずかしいこと言わせようとしてんのよ……!」
……別に辱めてるつもりはないんだが……参ったな。
ボリボリと頭を搔いてると、エリオラが手を叩いて首を傾げた。
「ミケ、タナトと子作りしたい?」
「…………ふぇ……?」
「……子作り?」
え……え?
俺とミケが置いてけぼりを食らってると、ルーシーもうんうんと頷いた。
『タナトが王都に来ると知って、タナトを悩殺するために買ったのじゃろう。タナトのような唐変木で鈍感には分からぬとは思うが、ウチらには伝わっておるぞ』
「ちっ……!? 待っ……!?」
口があわあわとなって上手く言葉が出てこない様子。
「ミケ、私が正妻。タナトは渡さない」
「だからっ、違うんだってば!」
「……違うの?」
エリオラの容赦ない問い詰めに、ミケはタジタジだ。エリオラ、こう見えて言いたいことズバッと言うからなぁ……。
「え、エリオラちゃん、こっち来なさい……! タナトは待機!」
「え、お、はい」
ミケがエリオラの腕を引いて俺から離れる。俺、置いてけぼりです。
何やら、ミケ、エリオラ、ルーシーがボソボソと小声で話している。ここからじゃ聞こえないな……。
……あ、戻って来た。
戻って来ると、まずエリオラが口を開いた。
「タナト、ごめん。勘違いだった」
「勘違い?」
「子作り、早とちり。てへっ」
……ま、そりゃそうだよな。あのミケが俺とそんな関係になりたいなんて、あるはずないか。
「……じゃあ何でランジェリーなんて買ったんだ?」
「趣味よ」
「……え?」
「趣味よ」
「…………」
「趣、味、よっ!」
「お、おう……そうか……」
さっき趣味じゃないって否定してなかったか……? ……まあいいや。本人がそこまで言い切るってことは、そうなんだろう。
「それで、二人はこの後どうするの? 予定とか決まってる?」
「ああ。俺の服を買いに行くところだ」
「タナトの? ……タナトの、オシャレ服……」
俺の全身を眺めて、腕を組んで首を捻る。
「想像出来ないわ」
「安心しろ。俺もだ」
「あなた、昔から同じような服ばかり着てるものね」
「効率的と言ってくれ」
釣りをしてるだけの俺に、オシャレとかファッションは無縁いいところだ。そんなところに労力なんて使いたくないし。
「タナトが服に興味を持つなんて、今日は雷でも降るのかしら?」
「俺だって興味はない。だが……」
可愛いエリオラに同じ服しか持ってないと言われると、服に興味のない俺でもちょっと心に来るものがあってだな……。
「……だが、何よ?」
「……ミケに会えて丁度良かったって思って。この辺の店で、男物でいい所はあるか?」
「男物で? そうねぇ……」
ミケは顎に手を当てて思案する。
「……あっ。丁度いい店があるわ。騎士団の男連中が、最近いい店を見付けたって騒いでたのよ。確かメンズファッション専門の店よ」
「そこでいい。あと、俺に服のセンスは無いからな。見繕ってくれ」
「任せなさいっ」
ミケは、鼻息荒く息巻く。王都に住んで、ファッションに目が肥えてるミケなら、いい服を選んでくれるだろう。
「待って」
っと……エリオラ?
見ると、人目もはばからず、エリオラが俺の右腕に抱き着いていた。
「ミケが選ぶなら、私が選ぶ」
「──へぇ……それは私に、勝負を挑んでるのかしら?」
ミケが余裕そうな笑みを浮かべ、エリオラが真剣な眼差しでそれを受け止める。
「出来るのかしら、三〇〇〇年前の服のセンスで」
「ちょー出来る。ちょー余裕」
「なら勝負よ。タナトに似合いそうな服をお互いに選んで、タナトに選んで貰う。公平を期すために、選んだ品物はルーシー経由でタナトに渡しましょう」
「乗った」
俺、一言もやるなんて言ってないんだけど?
『大変なことになったの』
「ならあいつらを止めてくれ」
『楽しそうだからパスじゃ』
この野郎。
◆◆◆
メンズファッション店にやってきた俺は、店先のベンチで休んでいた。
店の中では、エリオラとミケがあーでもないこーでもないと悩みに悩み、既に一時間が経っている。
こんな美人と美少女が、俺のために色々と考えてくれるのは有難いが……そろそろ昼時。俺の腹の虫は、さっきから餌をくれと喚いている。
ぐうぅ〜……。
「……腹、減ったぁ……」
ガラス越しに二人を見る。……まだ決まりそうにないな。
はぁ……。
「……ん?」
何だ? 道にいる奴らが、こぞって噴水広場の方に向かって走ってるが……。
適当に、近くを通った青年を呼び止める。
「あ、なあ、あんた」
「ん? 俺かい?」
「ああ。何でみんな、噴水広場に向かってるんだ?」
「ああ、あんた観光客かい。なら運がいいな。実は今日は、月に一度の特別な日なんだ」
「特別な日?」
首を傾げると、青年は目を輝かせて大仰に手を振った。
「人間と魔族を繋いだ、奇跡の魔族様──イライザ様の生まれ変わりが、お顔をお見せする日さ!」
…………。
え……イライザ……?
「おっと、こうしちゃいられねぇ! あんちゃんも気になるなら、さっさと噴水広場に向かった方がいいぜ!」
「あ、おい!」
……行っちまった……って、惚けてる場合じゃない!
急いで店に入り、エリオラを探す。
えっと……いた!
「エリオラ!」
「あ、タナト。ごめんね、もう少し掛かりそう」
「そんな事はどうでもいい!」
エリオラの手を掴み、顔をこっちに向ける。
「エリオラ、落ち着いて聞いて欲しい」
「ぇ……だ、ダメだよタナトっ。まだ心の準備が……」
心の準備を待ってる時間はないんだよ……!
「……イライザの生まれ変わりがいるらしい」
「……ぇ……?」
『……マジ?』
「…………」
噴水広場ベンチに戻って来た俺とエリオラ。プラスしてミケ。
ベンチに座るミケは、紙袋を大事そうに抱えながらモジモジとしている。
出て来た店とタイミングを考えると……その中のブツは、想像に難くない。
「まあ、ミケももう大人だし、王都に住んでるから彼氏の一人や二人や三人や四人はいて当たり前だと思うが……」
「そんなにいないわよ! て言うか一人もいないわよ!」
「え、じゃあ自分の趣味でそれを……?」
「ちっがーう! だからこれは……っ!」
ぼしゅっ! うぉっ!? 頭から煙が!?
「こ、ここここここれっ、は……!」
プルプルプルプル……全身を震わせるミケは、チラチラと俺を見上げる。……何だよ?
「うぅ〜……! もう、察してよ……!」
「悪いな。察して、という言葉は、俺がこの世で一番嫌いな言葉の一つだ。言葉にしろ。声に出せ」
「ぐっ……あ、あんた、女の子に何恥ずかしいこと言わせようとしてんのよ……!」
……別に辱めてるつもりはないんだが……参ったな。
ボリボリと頭を搔いてると、エリオラが手を叩いて首を傾げた。
「ミケ、タナトと子作りしたい?」
「…………ふぇ……?」
「……子作り?」
え……え?
俺とミケが置いてけぼりを食らってると、ルーシーもうんうんと頷いた。
『タナトが王都に来ると知って、タナトを悩殺するために買ったのじゃろう。タナトのような唐変木で鈍感には分からぬとは思うが、ウチらには伝わっておるぞ』
「ちっ……!? 待っ……!?」
口があわあわとなって上手く言葉が出てこない様子。
「ミケ、私が正妻。タナトは渡さない」
「だからっ、違うんだってば!」
「……違うの?」
エリオラの容赦ない問い詰めに、ミケはタジタジだ。エリオラ、こう見えて言いたいことズバッと言うからなぁ……。
「え、エリオラちゃん、こっち来なさい……! タナトは待機!」
「え、お、はい」
ミケがエリオラの腕を引いて俺から離れる。俺、置いてけぼりです。
何やら、ミケ、エリオラ、ルーシーがボソボソと小声で話している。ここからじゃ聞こえないな……。
……あ、戻って来た。
戻って来ると、まずエリオラが口を開いた。
「タナト、ごめん。勘違いだった」
「勘違い?」
「子作り、早とちり。てへっ」
……ま、そりゃそうだよな。あのミケが俺とそんな関係になりたいなんて、あるはずないか。
「……じゃあ何でランジェリーなんて買ったんだ?」
「趣味よ」
「……え?」
「趣味よ」
「…………」
「趣、味、よっ!」
「お、おう……そうか……」
さっき趣味じゃないって否定してなかったか……? ……まあいいや。本人がそこまで言い切るってことは、そうなんだろう。
「それで、二人はこの後どうするの? 予定とか決まってる?」
「ああ。俺の服を買いに行くところだ」
「タナトの? ……タナトの、オシャレ服……」
俺の全身を眺めて、腕を組んで首を捻る。
「想像出来ないわ」
「安心しろ。俺もだ」
「あなた、昔から同じような服ばかり着てるものね」
「効率的と言ってくれ」
釣りをしてるだけの俺に、オシャレとかファッションは無縁いいところだ。そんなところに労力なんて使いたくないし。
「タナトが服に興味を持つなんて、今日は雷でも降るのかしら?」
「俺だって興味はない。だが……」
可愛いエリオラに同じ服しか持ってないと言われると、服に興味のない俺でもちょっと心に来るものがあってだな……。
「……だが、何よ?」
「……ミケに会えて丁度良かったって思って。この辺の店で、男物でいい所はあるか?」
「男物で? そうねぇ……」
ミケは顎に手を当てて思案する。
「……あっ。丁度いい店があるわ。騎士団の男連中が、最近いい店を見付けたって騒いでたのよ。確かメンズファッション専門の店よ」
「そこでいい。あと、俺に服のセンスは無いからな。見繕ってくれ」
「任せなさいっ」
ミケは、鼻息荒く息巻く。王都に住んで、ファッションに目が肥えてるミケなら、いい服を選んでくれるだろう。
「待って」
っと……エリオラ?
見ると、人目もはばからず、エリオラが俺の右腕に抱き着いていた。
「ミケが選ぶなら、私が選ぶ」
「──へぇ……それは私に、勝負を挑んでるのかしら?」
ミケが余裕そうな笑みを浮かべ、エリオラが真剣な眼差しでそれを受け止める。
「出来るのかしら、三〇〇〇年前の服のセンスで」
「ちょー出来る。ちょー余裕」
「なら勝負よ。タナトに似合いそうな服をお互いに選んで、タナトに選んで貰う。公平を期すために、選んだ品物はルーシー経由でタナトに渡しましょう」
「乗った」
俺、一言もやるなんて言ってないんだけど?
『大変なことになったの』
「ならあいつらを止めてくれ」
『楽しそうだからパスじゃ』
この野郎。
◆◆◆
メンズファッション店にやってきた俺は、店先のベンチで休んでいた。
店の中では、エリオラとミケがあーでもないこーでもないと悩みに悩み、既に一時間が経っている。
こんな美人と美少女が、俺のために色々と考えてくれるのは有難いが……そろそろ昼時。俺の腹の虫は、さっきから餌をくれと喚いている。
ぐうぅ〜……。
「……腹、減ったぁ……」
ガラス越しに二人を見る。……まだ決まりそうにないな。
はぁ……。
「……ん?」
何だ? 道にいる奴らが、こぞって噴水広場の方に向かって走ってるが……。
適当に、近くを通った青年を呼び止める。
「あ、なあ、あんた」
「ん? 俺かい?」
「ああ。何でみんな、噴水広場に向かってるんだ?」
「ああ、あんた観光客かい。なら運がいいな。実は今日は、月に一度の特別な日なんだ」
「特別な日?」
首を傾げると、青年は目を輝かせて大仰に手を振った。
「人間と魔族を繋いだ、奇跡の魔族様──イライザ様の生まれ変わりが、お顔をお見せする日さ!」
…………。
え……イライザ……?
「おっと、こうしちゃいられねぇ! あんちゃんも気になるなら、さっさと噴水広場に向かった方がいいぜ!」
「あ、おい!」
……行っちまった……って、惚けてる場合じゃない!
急いで店に入り、エリオラを探す。
えっと……いた!
「エリオラ!」
「あ、タナト。ごめんね、もう少し掛かりそう」
「そんな事はどうでもいい!」
エリオラの手を掴み、顔をこっちに向ける。
「エリオラ、落ち着いて聞いて欲しい」
「ぇ……だ、ダメだよタナトっ。まだ心の準備が……」
心の準備を待ってる時間はないんだよ……!
「……イライザの生まれ変わりがいるらしい」
「……ぇ……?」
『……マジ?』
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