【連載版】唯一無二の最強テイマー 〜最強の種族をテイム出来るのは俺だけです。俺の力を認めず【門前払い】したのはそっちでしょう。俺を認めてくれる人の所で過ごすつもりなので、戻るつもりはありません〜

赤金武蔵

プロローグ①:彼は門前払いされた

「ここもダメか……」




 たった今門前払いされた冒険者ギルドを振り返る。
 大きいが、寂れた古い建物。
 最悪のギルドだとは聞いていた。
 だけど、まさか話も聞かずに帰らされるとは思わなかったな。




『テイム出来ないテイマーなど、我がギルドには不要です。お引き取りを』




 さっき、ギルドマスターから言われた言葉を思い出す。
 漏れるのはため息と、将来を憂う言葉だけ。
 ここがこの国最後のギルドだったのになぁ。


 本当、これからどうしようか。


 唸っていると、俺の肩に乗っている小さな女の子、、、、、、がギルドに向けて唾を吐いた。




『ほんっっっっっと! なんでコハクが門前払いされるの!? 激おこよアタシ!』
「まあまあ、仕方ないよ」
『仕方なくないわよ!』




 と言われても、もう決まったことだしな。
 苦笑いを浮かべ、クレアの頭を撫でる。




『むぅ……頭撫でてくれるのは嬉しいけど、あんたはもっと自分のために怒りなさいよ!』
「クレアが俺の代わりに怒ってくれるから、俺は怒らなくて済むんだよ。いつもありがとうな」
『ぐぬぬ……! ふん!』




 腕を組んでそっぽを向く。
 ただ口角が僅かに上がってるから、喜んではいるみたいだ。




「さ、行こう。ここにいたら邪魔になる」
『全くもう……!』




 納得がいっていないクレアを連れ、俺はギルドから離れた。




   ◆




 神が与えし職業は、天職と呼ばれていた。


 その中に、テイマーという職業がある。
 魔物をテイムし、使い魔として使うことの出来る職業。
 それがテイマー。俺の天職だ。




 犬系魔物、猫系魔物などの獣種。
 蜂系魔物、ワーム系魔物などの昆虫種。
 岩石系魔物、植物系魔物などの自然種。




 他にも様々な種族の魔物がいるが、ここでは割愛。
 これらをテイムし、戦うのがテイマーなのだが……。


 問題は俺のテイマーとしての資質にある。
 俺は、これらの通常の魔物をテイムすることが出来ないでいた。
 理由は不明だ。


 ただ一つだけ、俺がテイム出来る種族の魔物がいる。
 強力だがこの世で最も数が少なく、人前には姿を現すことのない幻の種族。




 幻獣種ファンタズマ。それが俺のテイム出来る魔物で──。




『全くもう、全くもう……!』




 今なお、俺の肩でぷりぷり怒っている彼女がその魔物である。


 幻獣種ファンタズマ、火精霊クレア。


 俺が契約しているうちの一人である。
 ただでさえ見つからない上に、彼女達は普通の人間には見えない。
 そのせいで、俺はどの魔物とも契約出来ない無能扱いされていた。


 自分がどの魔物と契約出来るかは、本人にしか分からない。
 だから「幻獣種ファンタズマとしか契約出来ない」と言っても嘘つき扱いされるのだ。


 嘘じゃないんだけど、世知辛いなぁ。
 肩を落としていると、クレアが小さな羽をはばたかせて俺の顔の前まで飛んだ。




『それで、これからどうするのよコハク。もうどこも所属させてもらえるギルドなんかないわよ』
「……どうしようね」
『はぁ……どうしようねじゃないわよ、どうしようねじゃ!』




 あ、怒った。
 クレアは器用に後ろ向きで飛びながら、腰に手を当てて激昂する。




『テイマーじゃなくて、魔法師ってことにすればギルドに入れてもらえるじゃない! 何で頑にテイマーに拘るのよ!』
「無理だよ。職業を偽ると捕まっちゃうから」
『あーもー! あんたら人間は天職に固執しすぎなのよぉ!』




 確かに言えてる。
 この国。いや、この世界は天職至上主義だ。
 いい職なら高待遇。悪い職なら冷遇。
 分かりやすく格付けされている。


 ただ、こんな世界に生を受けたんだ。
 ルールに従う他ないんだよ。


 クレアを連れ、俺はこの街で拠点にしている安宿へ戻ってきた。
 木造で古く、歩くとミシミシ音が鳴る。
 お金もないし、こんなところでないと泊まれないのが悲しい。




 2階の一番奥の角部屋が俺の部屋。それ以外は空室だ。
 わざわざこんな所に泊まる物好き、俺以外にいるはずないか。


 ため息をつきつつ、鍵穴を回す。
 すると、俺に気付いた皆が出迎えてくれた。




『コゥ、おかえりー!』
『お帰りなさいませ、ご主人様』
「ただいま2人とも。いい子にしてたか?」




 クレアと同じく人型の幻獣種ファンタズマが1体。こっちは体の大きさも人間サイズだ。
 そして、俺より巨大な狼型の幻獣種ファンタズマが1体。


 これにクレアを加えた3体が、俺がテイムしている仲間だ。




『コゥ、どうだった? どうだった?』




 俺の体に擦り寄ってくる、大型の狼。
 滑らかで触り心地のいい毛並みが、淡い金色に輝いている。


 幻獣種ファンタズマ、天狼フェンリル。


 テイマーになる前から俺の傍にいる、幼馴染みみたいな子だ。
 何故かフェンリルは、小さい頃から見えたんだよね。
 はは。当時は、俺が空想の友達と遊んでるって虐められたっけ。


 そんなことを思い出しながら、フェンリルの頭を撫でる。




「ごめんねフェン。今日もダメだったよ」
『大丈夫。ボクはずっとコゥと一緒なら、どこでも嬉しいから』
「……ありがとう」




 そう言ってくれるだけで、本当に救われる。




『ご主人様。お召し物をお預かりします』
「ありがとう、スフィア」




 俺が脱いだローブを受け取り、大事そうに抱える女の子。
 闇夜を孕んでいるかのような漆黒の髪に、陶器のような白い肌。
 神が造形したとしか思えないプロポーション。
 もし人間なら、国中の男が求婚するであろう絶世の美女。
 だが表情は変わらず、まるで無機質な人形のようだ。


 幻獣種ファンタズマ機械人形マジンドールスフィア。




『ちょっとスフィア。匂い嗅ぎすぎじゃない?』
『何のことでしょう』
『でも顔填めてたじゃない』
『そんなことはありません。それは普段クレアが妄想しているから、そう見えてるだけでは?』
『はぁ!? そ、そんな妄想してないわよ!』
『ではそれ以外の妄想はしていると? くすくすくす。いやらしい火精霊ですこと』
『あんたねぇ!』




 ぎゃーすかぎゃーすか。
 元気だなぁ、2人とも。
 ま、こんだけ騒いでも他の人には聞こえないから、近所迷惑にはならないんだけど。




『コゥ、これからどうする?』
「そうだねぇ……」




 ターコライズ王国全土のギルドを回ったけど、どこも受け付けてくれなかった。
 これはもう、この国は無理かなぁ……。




「……皆聞いて。もし皆がよければ、俺は他国へ行こうと考えてる」
『他国、ですか?』
「うん。他国のギルドなら、まだ望みはあると思うし」




 ターコライズ王国に隣接している国は、多分噂が流れてるからダメだ。
 だとしたら、少し遠いけど俺のことが知られていない国に行こう。




「ブルムンド王国に行こうと思うんだ」
『ブルムンド王国? 確か、テイマー専門のギルドもある場所よね』
「そうそう」




 俺の意図を汲んでくれたクレアの頭を撫でる。
 子供扱いするなー!と怒るが、満更でもなさそうなところが可愛い。




『ボクはコゥが行くなら、どこでもいいよ!』
『私もお供致します』
『仕方ないわね、私もついて行ってあげるわ!』
「……皆、ありがとうね」




 俺には勿体ないくらい、いい子達だよ。




「じゃあ、早速準備しよう。明日の朝出発だ」

コメント

  • DIY熊本

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