イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第二百二話 勝利の方程式

「そろそろ終わったかしら?」


女神がリョウタたちへ声をかけた。


リョウタは、空中くうちゅうから見下みおろされているのと、その女神の表情ひょうじょうもあって見下みくだされていると感じていた。


先ほどは間髪かんぱつ入れずにころそうとしたくせに、こちらが何かしようとした途端とたん様子ようすを見るようになった。


その態度たいどは、こちらを余興よきょうを見せる芸人げいにんか何かだとでも言いたげで、リョウタを苛立いらだたせる。


「でもな。めプしたてきキャラがいたい目をみるのはテンプレなんだよ。それじゃみんなッ! 作戦通さくせんどおりにやってくれッ!」


リョウタの声が合図あいずとなり、ソニックがコウモリのつばさひろげた。


そしてリンリは魔力を――リムは体内たいないながれるオーラとワルキューレから受け取った魔力を使ってそれぞれちゅうへと上昇じょうしょう


女神を三方向さんほうこうからかこむように空中へと立つ。


リョウタとレヴィは、その様子を地上ちじょうから見上げていた。


「さて、どんな作戦を考えたのかはわからないけど。せいぜい楽しませてちょうだい」


女神は囲まれても笑みをかべている。


それを見たリムが思わずを食いしばる。


「三人を相手にするのに、ずいぶんと余裕よゆうそうなのです」


「そりゃそうさ。俺たち三人を合わせても、まだこいつのほうが魔力が上なんだから。まったくいやになるぜ」


状況的じょうきょうてきには有利ゆうりに見えても、リムとソニックの顔からはその優位ゆういは見られない。


むしろ、められているようにすら見える。


だが、リンリだけはちがった。


「リムリムも吸血鬼きゅうけつきちゃんもこまかいこと気にしちゃダメだよ! あとは当たってくだけろ! こいせよ乙女おとめだッ!」


彼女だけは笑顔でいた。


それどころから体から余計よけいちからけていて、非常ひじょうにリラックスしているようだ。


「リムリム……? って、リムのことですよね? 変わった呼び名なのです」


「ったく、あの聖騎士せいきしは……。これから殺されるかもしれねえのに緊張感きんちょうかん欠片かけらもねえな」


そんなリンリのおかげか――。


リムもソニックからも、みょう責任感せきにんかんみたいなものがうすれていき、いつもの表情へともどる。


女神はそんな三人の様子を見て、少し不機嫌ふきげんそうになっていた。


「リンリ……やはりあなたは聖騎士……えらばれし者ね。二人の身体からかたさがなくなったわ。だけど、私の前でそんな態度を取るのは気に喰わない」


そして、リム、リンリ、ソニック対女神の空中戦が始まった。


――そのとき、地上いたリョウタとレヴィは――。


「なあリョウタ。私はいつまでここで待っていればいいんだ!? 騎士である私が前衛ぜんえいで戦わずに待機たいきなど、正直心苦こころぐるしいッ!」


「いいから信じろよ。お前には一撃必殺いちげきひっさつがあるんだ。そいつをぶちめるチャンスはあいつらが絶対ぜったいに作ってくれる」


リョウタの作戦は――。


リム、リンリ、ソニック三人に女神の動きをふうじてもらい、動けなくなったところをりゅう騎士であるレヴィの必殺技――飛翔ひしょうたおすというものだった。


これはリョウタとレヴィの勝ちパターンであり、これまでもいくつもの強敵きょうてきを倒してきた方程式ほうていしきでもある。


さらに、レヴィの飛翔――相手を頭上ずじょうからやりす技にくわえ、リョウタの持つ本人では使用できない強力きょうりょくな魔力を彼女へそそぐことで、あの伝説でんせつ幻獣げんじゅうバハムートを仕留しとめるほどの力が発揮はっきできる。


だが、この勝ちパターンにも問題もんだいはある。


まず、今までリョウタとレヴィが戦ってきた相手はねらまとが大きかったこと――。


それから女神のような動きの速い相手ではなかったこと――。


その二つがクリアしなければならないことだった。


そこでリョウタは、リム、リンリ、ソニックに女神の動きを完全に封じてもらい、そこをレヴィと彼女へ魔力を注ぐ自分が仕留める作戦を考えたが。


「とはいっても、相手はラスボス……。口で言うほど簡単かんたんじゃないよな……」


そうつぶやきながら――。


リョウタはくちびるんで、三人のことを見守みまもるのであった。

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