イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百七十五話 決断

リンリはそんなソニックのことなどおかまいなく、全身からはえず魔力まりょく放出ほうしゅつする。


つばさもないのというのにちゅうを浮き、その白い魔力をまとった姿はまるで女神の使い――まるで天使てんしのようだ。


そのちからは人間をすでにえ、精霊せいれい幻獣げんじゅうクラスだった。


リンリが両手を広げると彼女の身体から無数むすうひかりの玉があらわれ、ソニックをつつむように発射はっしゃされる。


ソニックはすべての光の玉をかわしたが、正直しょうじき彼には反撃はんげきする余裕よゆうはなかった。


なやみながら戦える相手ではない。


そう思ったソニックはついに決断けつだんした。


「もう……が落ち始めてるな」


ソニックは次々に放たれるリンリの攻撃をけながら、自分の魔力が上がってることを感じていた。


地下にいてはわからないが、地上ではすでに夜になりかけている。


夜なれば吸血鬼族きゅうけつきぞくの力を最大まで高められ、たとえ相手が神であろうがおくれをとることはない。


それにソニックは、愚者ぐしゃの大地を支配しはいしていた魔王――ラヴブラッド王の息子むすこである。


もはやのろいの解けた本来ほんらいの彼ならば、たとえ女神の加護かごを受けた聖騎士せいきしが相手でも負けるはずがない。


「ファストドライブ!」


ソニックはお得意とくいの魔法――速度そくどをあげるファストドライブをとなえ、一気いっきにリンリとの距離きょりちぢめた。


たいするリンリは、向かってくるソニックへ右手に集約しゅうやくさせた魔力を放ち、迎撃げいげきする。


「見え見えだぜ、聖騎士ッ!」


そう来ることをわかっていたソニックは、もう一度速度を上げる魔法を唱え、リンリのうしろへと回りみ、彼女を羽交はがめにした。


だが、リンリは一切いっさい動揺どうようもすることなく、自分ごとソニックのことを光の玉で攻撃し始める。


これはたまらんといったソニックは、彼女を羽交い締めにしたまま光の玉を避け続ける。


それでも自分の体がきずつくことをおそれないリンリの攻撃は、段々だんだんとソニックに当たり始めていた。


それは当然リンリにも当たり――。


彼女が身に付けている純白じゅんぱく甲冑かっちゅうもボロボロに破壊はかいされていく。


このままでは共倒ともだおれだ。


「てめえッ!? 俺と一緒に死ぬつもりかよ!?」


「何も問題もんだいはない……。私は騎士……目標もくひょう仕留しとめるためならばいのちもいらない」


リンリのその言葉を聞いたソニックは、いかりでその表情ひょうじょうゆがめていた。


そして、そのまま攻撃を避けながらさけぶ。


「てめえが死ぬとかなしむやつがいるんだよ! いい加減かげんに目をましやがれ!」


「悲しむ……? 一体誰が……」


「ビクニだ、バカ野郎やろうがッ!」


その名を聞いたリンリの攻撃の手が止まった。


彼女の全身をおおっていた魔力が次第しだいに消えていく。


「ビクニ……。アメノ……ビクニ……」


「安心しろよ。今思い出させてやる。リカバリーライトッ!」


うつろな表情でビクニの名をつぶやき続けるリンリへ――。


ソニックは彼女を羽交い締めにしたまま、状態異常じょうたいいじょう回復かいふくさせる魔法を唱えた。


そのかがやく光の中で、リンリの虚ろな表情が次第に変化していった。

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