イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百七十三話 地下の神殿

ワルキューレをリムにまかせたソニックは、奇跡きせきいずみがあった大穴へと飛びみ、そのまま落下らっかしていた。


穴は思っていた以上にふかい。


このままでは、下に着いたときに地面へ激突げきとつしてしまうと思ったソニックは、背中せなかからコウモリのつばさが出す。


翼を広げて落下速度そくどをコントロールし、下にいると聞いたビクニ、ググの元へと急いだ。


「もうすぐだ……もうすぐあいつに……」


ビクニに近づいていると感じるソニック。


完全に吸血鬼化きゅうけつきかしたビクニの身体は、その流れる血の影響えいきょうで彼とつながっているいるようで、彼には彼女の居場所を感じることができる。


そんなことが可能かのうなのは、ビクニがソニックによって眷属けんぞくになった吸血鬼きゅうけつきであるからだ。


たとえはなれていれても、たがいの血の契約けいやくによるきずなは立ち切れない。


それからソニックは大穴のそこへと辿たどり着いた。


そこはまるでみずうみのように水があふれていて、足のみ場もない。


奇跡の泉の水が、この地下をくそうとしているか?


ソニックはそう思いながら、その溢れる水をながめた。


水の底が光りかがやいている。


そのため、こんな地下のおく底でも周囲しゅういあかるい。


それはやさしくおだやかで、まるで赤子あかごく母親のような光だった。


だが、ソニックはそんなまばやい光を見て恐怖きょうふしていた。


それは彼が吸血鬼族だからだけでない。


この優しくも穏やかな光は、聖属性というだけでは収まりきらない、何か別の輝きを持っている。


ソニックは本能的ほんのうてきにそう感じ取っていた。


どうやらその水は、横に開けられた大きな空洞くうどうから流れてきているようだった。


ソニックはコウモリの翼をばたかせ、そちらへと向かう。


そこからほそい道を抜けると、目に入ったのはみ上げられた大理石だいりせきだった。


いや、何かの建物たてもの――まるで神殿しんでんだ。


細い道を抜けたここだけが、天井てんじょう異様いようなまでに高く、強固きょうこはしらった装飾そうしょくほどこされた噴水ふんすいも見える。


このような地下で、一体どうやってこんなものを作ったのかと思わせるほどの立派りっぱ建築物けんちくぶつだ。


その神殿の中央ちゅうおうには、噴水によって水が噴き出し続けている。


一見いっけんすると、まるで高名こうめい画家がかによる絵画かいがのようなバランスの良い光景こうけいだが、そのには不釣ふつり合いな人物の姿すがたがあった。


「来たぞ聖騎士せいきし! ビクニとググは返してもらう!」


純白じゅんぱく甲冑かっちゅうに身をつつんだ少女――聖騎士リンリが立っている。


その側には、しばられたビクニとググがたおれてた。


ビクニもググもグッタリとしていて、意識はまったくなさそうだ。


「吸血鬼族……。リンリの役目やくめはもう終わります」


リンリはソニックを見ると、覇気はきのない顔でこたえた。


ソニックはそんな彼女の態度たいど苛立いらだちながらも、その言葉の意味を考える。


そう――。


きっとこの聖騎士が言っているのは、女神を復活ふっかつさせることだ。


この神殿は、復活に必要な何か儀式的ぎしきてきなことをするためのものだろう。


まさか、その儀式がもう終わったということか?


いや、もう終わると言っているのだからまだ終了しゅうりょうしてはいないはずだ。


――と、ソニックは思考しこうめぐらせていた。


だが、いつまでも考えてはいられない。


そう思ったソニックは、ビクニとググのもとへと飛び込む。


「これで完了かんりょう……。そして降臨こうりん


ソニックが飛び込んだ瞬間しゅんかんにリンリがつぶやく。


すると、神殿の中央にあった噴水がさらに輝き始め、その光が彼をき飛ばした。

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