イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百六十話 いつもより饒舌

ソニックはその体からくろ無数むすう球体きゅうたいはなった。


さっき聖騎士せいきしの少女が使ったひかりたま闇属性版やみぞくせいばんだ。


少女もソニックに負けじと無数の光の玉を放つ。


聖なる魔力まりょくと闇の魔力がぶつかり合い、周囲しゅういにまで衝撃しょうげきが走る。


「この程度ていどかよ。こっちはまだ本気ほんき出してねえぞッ!」


そう叫んだソニックはさらに魔力を高め、少女の上下左右じょうげさゆう――全方位ぜんほういから闇の球体をぶつけていく。


これはさすがにけられず、少女は身をかためて防御ぼうぎょ姿勢しせいをとっていた。


ソニックは、彼女の白くかがや甲冑かっちゅうくだくように、さらにはげしく魔法を放っていく。


それでも聖騎士の少女もやられてばかりじゃはない。


ソニックの闇魔法をその体に受けながらも、聖なる光を放ち返していた。


「こんな小さな光じゃ俺にはとどかねぇ」


それでもソニックは彼女の放つ魔法をすべて相殺そうさつしていく。


顔を上げて海から二人を見るに、ソニックのほうが優勢ゆうせいだけど。


聖騎士の少女は攻撃を受けながらも、顔色かおいろ一つ変えずにソニックの攻撃こうげき応戦おうせんしていた。


「お前も聖騎士ならよぉ。俺みてぇなしき者を消し去るくれぃ強くなきゃなぁ。じゃなきゃよぉ、てめぇが消されちまうだろッ!」


というか、いくらビクニを海に落とされて気が立っているからって……。


今のソニックはどう考えても悪役あくやくみたいだよぉ。


せっかくの王子さまフェイスがゆがみに歪みまくっている。


ソニックって、普段ふだんはビクニにいじられていて微笑ほほえましいんだけど。


実はサディストなのかな?


それにしてもやっぱりビクニの血をったソニックは強かった。


光と闇という相性あいしょうも悪さも関係かんけいなく、光のはやさで動ける聖騎士の少女を相手に、圧倒的あっとうてきな強さで押している。


「これでしめぇだ。あの世で俺の親父おやじによろしくなぁぁぁッ!」


ソニックは、今まで無数の球体として放っていた闇の魔力を一ヶ所いっかしょあつめ、まるで大砲たいほうたまつように放出ほうしゅつした。


禍々まがまがしい黒い波動オーラが聖騎士の少女の体をおおくしていく。


「ハハハッ! 死ねぇ、死んじまえッ! 消えろ、消え去っちまえよぉッ!」


歓喜かんきふるえるソニックはうれしそうに叫んでいた。


ぼくもそれで終わりかと思ったけど。


「なんだよ、まだ生きてんのか。さっさと眠っちまえよ。ちょうど海の上だしよ。てめぇの死体したいさかな綺麗きれいに食べてくれるぜ」


ソニックがいつもの無口むくちぶりとは打って変わって饒舌じょうぜつになっているのは置いといて。


聖騎士の少女は持っていた大きな剣で、その魔力を受け切っていた。


だけど、さすがにダメージはあるようで、身に付けている甲冑もボロボロになっていた。


「もうつかれただろ? 早く眠っちまえよ。きっと海のそこつめたくて気持ちいいぜ」


さらに口が動くソニック。


実は皮肉ひにく悪態あくたいを言うのが得意とくいなのかな……。


そんな彼を見ながら聖騎士の少女はボソッとつぶやく。


任務にんむ……完了かんりょう


ぼくもソニックもなぜ彼女がそんなことを言ったのかわからなかったけど。


その呟きに気を取られた一瞬いっしゅんあいだに――。


「死ねぇぇぇッ! 吸血鬼きゅうけつきッ!」


女の人の叫び声と一緒に、ソニックの体が剣につらぬかれてしまった。

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