イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百五十八話 聖騎士の少女

突然感じたせいなる魔力まりょくの持ちぬしは、方向ほうこうを変えて飛び始めたぼくらを追いかけて来ていた。


ぼくは、ただ聖属性せいぞくせいというだけで、近づいて来る人がてきだと判断はんだんするのはどうかと思ったけど。


ソニックは、その魔力の持ち主におぼえがあるようだった。


彼の頭に乗っているぼくが顔をのぞき込むと、あせをかいているのがわかる。


その顔は、なんだか恐怖きょうふを感じているようにも見えた。


ソニックは、余程よほどのことがないかぎこわがったりしないのに……。


近づいて来る人物は、そこまでおそろしいのかな。


というか、ここは海のどなかだよ。


なのに、ぼくらに追いついて来るなんて、それだけでもとんでもない相手なのはわかるんだけど。


ビクニの血をった今のソニックに追いつけるはずないじゃん。


しかも、お得意とくい速度そくどを上げる魔法まほうとなえているんだし。


そこまで警戒けいかいする必要ひつようはないでしょ?


ぼくがそんなことを考えていると、突然後ろからひかりたまがぼくらを追いこして目の前へと立ちふさがった。


まばやかがやいているその玉は、人のの高さくらいの大きなもの。


ソニックはまたも急停止きゅうていししたけど、さっきみたいに方向を変えて飛んで行こうとはしなかった。


ただ目の前にあらわれた光の玉をにらみつけながら顔をしかめている。


「てめえ……あのときの聖騎士せいきしだなッ!?」


そしてソニックは光の玉の向かって声をあらげてたずねた。


だけど、聖なる魔力をはなつ玉は返事をせず、その姿すがたを現す。


光の玉から現れたのは、あかるい髪色かみいろをしたショートカットヘアの少女――。


白い甲冑かっちゅう姿やその体からあふれる聖なる魔力を感じるに、彼女が聖騎士であることは間違まちがいない。


だけど体から溢れる魔力とはぎゃくに、その表情ひょうじょうはまるで死人しにんみたいに生気せいきがなかった。


愚者ぐしゃ大地だいちからの逃亡者とうぼうしゃ確認かくにん……これより排除はいじょする」


少女が無愛想むあいそにそう言うと、突然頭に付いていた髪飾かみかざりが輝き始めていた。


そして、その光が彼女の手に集まり、次第しだいに剣のかたちへと変化へんかしていく。


その剣は2メートルはあろう長さで、はばも人間や亜人あじんの体と同じくらいの広いものだった。


身長150センチくらいの少女が持つと、見た目以上に大きく見える。


問答無用もんどうむようかよッ! クソッたれがッ!?」


その大きな剣で斬りかかってくる聖騎士の少女。


とても大きな剣なのに、その剣速はまるで小振こぶりのレイピアを使っているみたいだった。


無数むすうの大きなてつかたまりが、ぼくらを斬りこうとまるで横殴よこなぐりの風のように飛んでくる。


なんとかけながら、そのすさまじい攻撃こうげきをさばいていくソニックに、聖騎士の少女はいったんうしろに下がった。


「こちらの知る吸血鬼族きゅうけつきぞくの動きを上回うわまっている……。だが、予測範囲内よそくはんいない。相手の回避かいひパターンを解析かいせきつぎの攻撃に反映はんえいさせる」


「くッ!? その人形にんぎょうみたいな戦いかたは変わらねえなッ!」


聖騎士の少女は、さけびかけるソニックを無視むしして、ふたたび剣をかまえた。

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