イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第七十四話 畢竟

……なんで?


どうしてソニックとググがここに……?


私もノーミードと同じくらいおどろいていた。


だって、ソニックは助けには来ないっておこっていたのに……。


「あん? 誰だよお前。昼間ひるま吸血鬼きゅうけつきが出しゃばってんじゃねえッ! お前らが調子ちょうしれるのは夜だろぁがッ!」


ノーミードはリムにトドメをすのを邪魔じゃまされたせいで、ソニックに向かって怒鳴どならした。


だけど、ソニックはまったく相手にせずに、背中せなかに見えるコウモリのつばさを広げ、たおれている私のところまで飛んでくる。


そして、ググは彼の頭から私の前へとり、その顔をこすりつけていた。


幻獣げんじゅうの言葉はわからないけれど。


私にはググが心配しんぱいをしてくれているように思えて、体中がいたいのにうれしくてつい笑ってしまう。


「泣いていたかと思えば笑ったり……ホントいそがしい女だな、お前は」


そんな私を見たソニックが、あきれた顔をしながら大きなためいきをついた。


「ソニック……どうしてここに……?」


私がたずねると、彼はすぐに背を向けてノーミードのほうを見始めた。


「いいからだまっててろよ。全く……昨日きのうの今日出会ったやつのためにそんなボロボロになりやがって……頭のおかしい奴だよ、お前は」


いつもどおりのソニックの乱暴らんぼうな言葉――。


態度たいどももちろん全然やさしくはないんだけれど、その言葉の中には私への心配がたしかに感じられた。


何よりも、文句もんくを言いながらも私を助けに来てくれた。


「……ソニック……来てくれて、ありがとうね」


私はソニックの背中につぶやくようにおれいを言うと、彼は舌打したうちを返してきた。


ハハハ、平常運転へいじょううんてんだね……。


「おいッ! アタシのことをスルーして何イチャイチャしてんだコラッ!」


無視むしされたノーミードは、すさまじい形相ぎょうそういかくるっていた。


さっき私もソニック言われたばかりだけれど。


こいつもヘラヘラしたりおどってみたりおこったりと、忙しい精霊せいれいだなと思った。


だけど、怒り狂っていたノーミードはまた笑みをかべる(やっぱり忙しい)。


そして両手りょうてかかげ、さっき石や岩でできたはしらあやつったみたいに大袈裟おおげさり始めた。


でも、それでも柱はピクリとも動かない。


「っく!? なんでッ!? なんでだよッ!?」


何度やっても動かない柱。


ノーミードは自分の両手を見ながら、まるでひとごとのようにわめらしていた。


「まだわかんないのかよ? お前、本当に精霊か?」


それを見たソニックは、挑発的ちょうはつてきな態度でノーミードに声をかけた。


そして彼は、何故ノーミードが柱を操ることができないかを話し始めた。


ソニックは、昨日の夜に一人部屋から出ていったときに、あらかじめこのさとのいくつかの場所に、ある仕掛しかけをほどこしていたのだと言う。


「森からこの里に来るときに、一瞬いっしゅんだけだがみょう魔力まりょくを感じたからな。ねんには念を入れて魔法陣まほうじん仕込しこんでおいたんだ」


ノーミードはソニックがいった魔法陣という言葉で、何故自分が柱を操ることができなのかを理解りかいしたようだった。


その眉間みけんしわせながら、彼のことをにらんでいる。


だけどその後に、すぐにヘラヘラした顔をへともどった。


「でもさ~お前みたいなよわい魔力の吸血鬼が、高等こうとう魔法のサイレントゾーンを使えるなんておかしいじゃないか?」


高等魔法サイレントゾーン――。


私の知らない単語たんご


多分たぶんだけど魔法陣の名前だよね。


ノーミードみたいな精霊のちからおさえることができる魔法陣のことなのかな?


それか、魔法ふうじの魔法陣的ななにかっぽいよね。


ノーミードに訊ねられたソニックは、顔を少しゆがめた。


こたえる必要ひつようなねえな。まあ、こっちも事情じじょうありなんでね。それに魔法陣を引いたのは俺だが、サイレントゾーンで使った魔力は俺のものじゃない。そこにいる幻獣、ググのだ」


「それでも魔法陣をあつかえるなんておかしい……。一体いったい何もんだよお前?」


顔から笑みが消えたノーミードとは反対に、ソニックは自分の口角こうかくを上げる。


「ラブブラッド……その名を聞けばわかるか、精霊?」

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