イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第六十三話 先天性の不条理

ソニックの話では――。


リムがすごいことはたしかなようだった。


あらゆる属性ぞくせい魔法まほうを使いこなし、攻撃系こうげきけい回復かいふく補助ほじょ系までもおぼえることは、けして凡人ぼんじんには簡単かんたんにできることではない。


しかも、それをあのわかさでやってのけるリムは、よほど魔力まりょく操作コントロール上手うまいのだろうと。


「だったらなにが問題もんだいなのッ!?」


私はまた声をあらげた。


それでもソニックは、けして感情的かんじょうてきにならずに話を続ける。


「お前はへんだと思わなかったのか?」


ソニックは、リムのあることを指摘してきした。


それは、彼女が“一日のうちに三回しか魔法をとなえられない”ことだった。


正直しょうじき、私はこの世界にやって来てから日があさい。


だから、ソニックが言っている“一日のうちに三回しか魔法を唱えられない”ことがおかしいというのが、どうもピンと来なかった。


「そんなのレベルアップすれば唱えられる魔法の回数かいすうだってえていくんでしょ? だってリムはまだわかいんだよ! これからもっと使えるようになるよ!」


私はさも当たり前のことを言ったつもりだった。


リムは、たぶん私と同じくらいの年齢ねんれい


これから本格的ほんかくてきなところ――。


たとえば魔法の学校とか、すごい魔法使いのところで訓練くんれんなり修行しゅぎょうなりを始めれば、今よりもっと魔法が唱えられるかずが増えるはず――。


そう思ってた。


だけど――。


「じゃあ、なんであれだけ魔法を使いこなせるやつが一日に三回しか唱えられないんだ? お前の理屈りくつだと努力どりょくさえしていれば魔力も上がるんだろ?」


……えっ?


その言い方だともしかして……。


「お前は知らないようだからおしえてやる。体内たいないにある魔力まりょくりょうってのは、生まれたときから変わることはないんだよ」


ソニックの話によると――。


どれだけ訓練や修行をんでも、けして魔力が上がることはないんだそうだ。


だから多くの者は、小さいころから自分の適性てきせいに合った職業しょくぎょうくために勉強べんきょうをするのだと。


実際じっさい、あの武道家ぶどうか女はすごいとは思う。あれだけの魔法を覚えて使いこなすのは、並大抵なみたいていの努力じゃ無理だったろうからな」


「じゃ、じゃあ……リムはどんなに頑張がんばったって魔法使いにはなれないって言うの……」


私の言葉にソニックは何も言ってくれなかった。


ただだまったままうつむいた私を見ている。


この世界じゃ魔力のない子は魔法使いになれなし、力のない子は戦士せんしになれないってこと……?


いや、たとえなれても成功せいこうできないってこと……?


全部ぜんぶ生まれたときに決まっているってこと……なの……?


この世界がゲームとはちがうことはわかってる……。


だけど……そんなの……全然ファンタジーじゃないよ……。


リムはずっと頑張っていたんだよ。


さとの誰にも言えず、家族かぞくにも言えずに一人で……。


ただあこれているっていうだけで……。


リムは努力してあれだけの魔法を覚えて使いこなせるのに、なりたいものなれないなんておかしいよ……。


「たぶんだが……あの女は自分でもそのことをわかっているんだろうな……」


ソニックのその言葉を聞いた私は、リムが言っていたことを思い出した――。


「リムのゆめ悪者わるものから人々ひとびとまも英雄えいゆうになることなのです!」


そうだ……。


リムは自分でも理解りかいしているから、魔法使いになりたいって言わなかったんだ……。


今までの努力や使ってきた時間がむくわれないのをわかっているんだ……。


でも、そんな……かなしすぎるよ……。


ひどいよ……そんなのおかしい……おかしいよ……」


目からなみだが止まらない。


私はその場に両膝りょうひざをついて、ただ泣きながらソニックに同じ愚痴ぐちをずっと言うことしかできなかった。

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