獄卒鬼の暇つぶし
第27話
私はホカホカの状態になりながら、脱衣所に向かい二代目を探した。鬼神の中でも背丈が高い二代目は一度周りを見渡せばすぐに分かると思っていたが、なかなか姿を見つけられない。それどころか他の客人の姿も見受けられない。もしかしてすでに外に出ているのではと思ったその時「こっちだ貫徹」二代目の声が不意に聞こえてきて私は声の聞こえた方へ歩み寄った。
「遅かったな」
そう言って振り返った男はにやりと私を見据えている。二代目の声色そっくりの男の姿に驚いた私は声が出ずに腰にタオルを巻いただけの姿でその場に立ち尽くした。
――どういうことだ、なぜ私がいる!
「おいおい、そんなに驚くことないだろう」
今度は私の声色であった。もう一人の私はにやにやしながらなんの抵抗もなく私の衣服を身に纏い、突然ズボンをおろすとこれ見よがしに『鬼のパンツ』を指さす。
「こいつがないとお前ら鬼は地獄の霊力を借りれないのだろう」
「貴様は何者だ!? 鬼でないものがそのパンツを履くと地獄の力に我を奪われ廃人と化すぞ」
私はギラギラと目を光らせて私の偽物を睨んだ。
「そんなことは知っているよ」
偽物は意味深につぶやき、額の左右から禍々しい角を生やした。
「鬼?」
「知らない輩に名前を簡単に教えるものではないと宗徹に教わらなかったか」
「貴様っ! 名を名乗れ卑怯者」
「話を聞いてなかったのか、まぁいい私の名は天邪鬼だ。あとで閻魔の息子にでも聞けばいい、まぁサウナで干からびてなければいいけどな」
――二代目っ
私は再び洗い場に走ると、サウナ室に人だかりができていた。
「どうしたんです?」
「おぉ弟くん、大変だ国枝くんがサウナ室に閉じ込められた!」
体つきのいい男がドアを押し壊そうと力を入れて押すが鍵がかかっているのか鉄製の古いドアはびくりともしない。
「おい、番頭はまだか!?」
「カギをとりにいくと言ったきり帰ってこない」
「じゃあ他の奴を呼んでこい!」
「どいてください」
私は中年たちをかき分けドアノブに手をかけると渾身の力を込めてタックルした。すると鉄で出来たドアのかすがいが外れ、鉄の塊が床に叩きつけられた。ガンと鈍い音が狭いサウナ室に響き、ぐったりと横たわっている二代目の姿を見つけた。
「おい、はやく担ぎ出せ」
男たちは息の合った連携で二代目を外に担ぎ出すと、冷水を勢いよくぶっかけた。
「あんちゃん、死ぬな!」
完全に茹で上がってしまった二代目の見るに無残な姿は、私の胸を痛めたが、よくよく考えれば地獄の鬼は死と言う概念がない。たとえ頭を銃弾で撃ちぬかれても、ナイフでめった刺しにされても何事もなかったかのように復活するのだ。
「やられた!」
私はすぐに脱衣所に戻ったが、偽物の姿はなく、完全に取り逃がしてしまった。
「遅かったな」
そう言って振り返った男はにやりと私を見据えている。二代目の声色そっくりの男の姿に驚いた私は声が出ずに腰にタオルを巻いただけの姿でその場に立ち尽くした。
――どういうことだ、なぜ私がいる!
「おいおい、そんなに驚くことないだろう」
今度は私の声色であった。もう一人の私はにやにやしながらなんの抵抗もなく私の衣服を身に纏い、突然ズボンをおろすとこれ見よがしに『鬼のパンツ』を指さす。
「こいつがないとお前ら鬼は地獄の霊力を借りれないのだろう」
「貴様は何者だ!? 鬼でないものがそのパンツを履くと地獄の力に我を奪われ廃人と化すぞ」
私はギラギラと目を光らせて私の偽物を睨んだ。
「そんなことは知っているよ」
偽物は意味深につぶやき、額の左右から禍々しい角を生やした。
「鬼?」
「知らない輩に名前を簡単に教えるものではないと宗徹に教わらなかったか」
「貴様っ! 名を名乗れ卑怯者」
「話を聞いてなかったのか、まぁいい私の名は天邪鬼だ。あとで閻魔の息子にでも聞けばいい、まぁサウナで干からびてなければいいけどな」
――二代目っ
私は再び洗い場に走ると、サウナ室に人だかりができていた。
「どうしたんです?」
「おぉ弟くん、大変だ国枝くんがサウナ室に閉じ込められた!」
体つきのいい男がドアを押し壊そうと力を入れて押すが鍵がかかっているのか鉄製の古いドアはびくりともしない。
「おい、番頭はまだか!?」
「カギをとりにいくと言ったきり帰ってこない」
「じゃあ他の奴を呼んでこい!」
「どいてください」
私は中年たちをかき分けドアノブに手をかけると渾身の力を込めてタックルした。すると鉄で出来たドアのかすがいが外れ、鉄の塊が床に叩きつけられた。ガンと鈍い音が狭いサウナ室に響き、ぐったりと横たわっている二代目の姿を見つけた。
「おい、はやく担ぎ出せ」
男たちは息の合った連携で二代目を外に担ぎ出すと、冷水を勢いよくぶっかけた。
「あんちゃん、死ぬな!」
完全に茹で上がってしまった二代目の見るに無残な姿は、私の胸を痛めたが、よくよく考えれば地獄の鬼は死と言う概念がない。たとえ頭を銃弾で撃ちぬかれても、ナイフでめった刺しにされても何事もなかったかのように復活するのだ。
「やられた!」
私はすぐに脱衣所に戻ったが、偽物の姿はなく、完全に取り逃がしてしまった。
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