闇を統べる者

吉岡我龍

ジョーロン -交渉大成立-

 「ジェリア?それはフォンディーナ人の名前だな?」
「うん。オレ達の為に砂漠を案内してくれたんだ。
それが今クスィーヴに捕まっちゃっててさ。ビャクトルを説得したら放してくれるって言うんだ。」
言わなくていい事を全部話してしまったヴァッツ。
これでこちらの手札は全て失う事になった。
「・・・・・あの男め。」
怒りの籠った声で呟く王はすぐに席を立ち、
「君達との話は終わりだ。すぐにクスィーヴの館へ向かう。騎士団にも準備をさせろ。」
聞く耳を投げ捨てた王はすぐに行動へと移し始める。
周りの衛兵が慌ただしく動く中、クレイスは必死に頭を働かせていた。
(ヴァッツに隠し事なんて無理なのはわかってたはずだ!)
敢えて何も伝えなかった。
ヴァッツの純粋な心とショウの知識、
そこにクレイスが補足を加えれば何とかなると高をくくっていたのだ。
だがこのままではジェリアの処刑は当然として領主の身も危ないだろう。
そして『フォンディーナ』への侵攻と立て続けに血が流れる結果が待っている。
(どうしよう?どうすれば止められる?)
もっと自分に力があれば・・・いや、争いを止めに来たのだ。
力で何とかしようという考えは間違っている。

(『ユリアン教』と『フォンディーナ』が無関係だという何かを伝えれば・・・
いや、ショウですら『フォンディーナ』には何かを匂わせる出来事があるといっていた。
何も感じなかった僕にそんな事は無理だ・・・)

しかし思考がそこから動かない。
ビャクトル王はどういう訳か『ユリアン教』に並々ならぬ恨みを抱いている。
まずはその意識を変えさせなければならない。しかしどうやって・・・
刹那、ふとあの敬意に満ちた声が頭の中で思い出された。


『貴方自身の力をつける事はもちろんですが、周囲の力も頼りなさい。』


それと同時にあの時の出来事が鮮明に映し出される。
いや・・・しかしあの時に言われた意味と今では状況が違う。
でも・・・いいのかな?
未だ1度しか名前を呼んだことのない誇り高き将軍の功績を頼っても・・・

気が付けば王も腰を上げて退室しようとしている。
悩むべき時間は過ぎたのだ。ならばこれにすがるしかない。
「ビャクトル様!!1つだけお伝えしたい事がございます!!」
周囲が立ち止まってしまうほどの大きな声に皆がクレイスに視線をやった。
「・・・何かね?」
その覚悟の程が伝わったのか、若干冷静さを取り戻した王が静かに問いかけると、
「・・・『ユリアン教』の御神体、ユリアンはとある方によって殺されました。
それでもまだ『フォンディーナ』に攻め入られますか?」
慌ただしく駆け回っていた衛兵達はきょとんとしていたが、
ビャクトルに至っては驚愕を隠すことなく、
「・・・・・遠征は取り止めだ。」
先程とは打って変わって静かに命令を取り消すと再び席に座り直して、

「・・・君は一体何者かね?」
今までとは違う、非常に真剣なまなざしをクレイスに向けてきていた。
ショウからも驚愕の視線が送られてきていたが、
今はこの場をしっかりと掌握し、彼を心から納得させる事が先決だ。
思ってた以上の反応を示すビャクトルを前に嬉しさと緊張から来る震えを抑えながら、
「僕は先程お伝えした通り、小国の王子です。」
静かにやり取りを再開する。ここからどう転ぶか全く見当がつかない為だ。
「・・・君はユリアンを見たのかね?」
「はい。僕だけじゃありません。ここにいる3人も一緒に見ていました。
彼が石像から人間になるところと、そんな彼が将軍の手によって殺された所を。」
「・・・・・」
信じられないという表情で無言になる王。
焦る必要がないクレイスも、ゆっくりと呼吸を整えて次の言葉を待つ。
「その将軍というのは一緒に来ているのかね?」
「いえ、今は祖国に帰られています。
そこで将軍職を辞して、ここにいるヴァッツの配下になる事を選ばれました。」
これを言う必要はなかったのかもしれない。
しかし自分達の身近な人物になるという確認をしておきたかったクレイスは、
その事もしっかりと口に出して伝える。
「その方のお名前をお聞きしてもいいかい?」
「はい。『ネ=ウィン』帝国4将筆頭クンシェオルト様です。」
流石に4将の名前は海を越えても轟いていたのか、
ビャクトル王含め、周囲の衛兵達も感嘆の声を漏らしている。
「・・・そうか。・・・そのご高名はよく聞いていた。
そんな方が・・・ヴァッツ君は確か『羅刹』のお孫様だったな?」
「うん!」
あれほど憎悪に満ちていたビャクトルが静かに4人を見渡す。
「私からも最後に1つだけ確認させてくれ。君達はユリアンに囲われていた訳ではないんだな?」
囲われる・・・
恐らくあの時いた少年少女達の立場を指しているのだろう。
「僕たちは旅の途中でたまたまあの国に立ち寄ったんです。
その・・・何も知らずに海を渡って来たものですから。」
今考えても非常に無謀な船旅だった。
これも全てヴァッツの意見を何でも聞いてしまう従者のせいなのだが、
それはそれで楽しかったので彼女を責める気持ちは微塵もない。
「正直君たちが嘘をついている可能性もある。だが、私は信じたくなった。」
ビャクトルは緊張高まる空気を一掃して笑顔を向けてそう言うと、
「部屋を用意しよう。私もまだ話したい事がある。続きは夕食時にどうだろう?」
初対面の時とは違って、こちらに敬意を持った眼差しで提案してくれる王に、
「はい!」
思わず元気に返事を返すクレイス。
気が付けば自分1人で話を進めてしまっていたが、
3人の様子を見ると3人ともが彼の行動を称えるような笑顔を向けていた。





 あてがわれた部屋に着くと、
「やったなクレイス!!」
『フォンディーナ』の事を一番気にかけていたカズキから背中にきつい平手と称賛の言葉を貰う。
「なんかビャクトルの機嫌がよくなったみたいだけど、これでジェリアも助かる?」
ヴァッツも彼の変化には気が付いていたようで、
「どうだろ?とりあえずすぐに行動させる事は止められたけど・・・」
「ユリアンが死んだ事にあれほど食いついて来たんです。もう大丈夫でしょう。」
何故かいつも慎重な赤毛の少年が随分あっけらかんと言い放つ。
クレイスとしては気を緩めるわけにはいかないので、
ショウには是非いつものように厳しい態度で臨んでもらいたいのだが。

4人が椅子に座り、各々が達成感で胸がいっぱいになる中、

こんこん

扉が叩かれると、召使いが軽食とお茶を用意してくれた。
「しかしいくつか気になる点がありましたね。」
それを頂きながらショウが不穏なことを口に出す。
「ん?なんかあったか?」
カズキがそれに反応すると、
「ええ。ビャクトル王がユリアンの御神体を知っている風な所があったので。
あれは信者以外の一般の人間にも見ることが出来るのでしょうか?」
「「・・・・・」」
言われてみればそうだ。
あの時元凶を殺したという事実を伝えたくてあの話を持ち出したのだが、
少年少女を囲っている話まで知っていた・・・・・
それを思い出すと体が軽く震える。
「ビャクトルが『ユリアン教』の信者だっていうのか?」
カズキが恐れを知らぬ発言を堂々とする。
もしこの国の人間に盗み聞きなどされていたら生きてここから出られないだろう。
「わかりません。
しかしそういう内部の事情らしき所を知っている理由が他に思い当たらないのも事実です。」
・・・・・
鋭すぎる指摘に3人が無言になる中、
ヴァッツだけはおいしい軽食とお茶を十二分に堪能していた。





 ビャクトルへの疑惑でやきもきする中、
気分転換も含めて城下町や城内を散策した4人はその夜、城内にある来賓の間に招待された。
全員の着席を確認すると、
「揃ったようだね。では。」
右手を上げると給仕が数人、代わる代わるに料理を運んでくる。
寝具3つ分もあろう大卓の上が全て埋め尽くされると衛兵も含め全てが退室した。
「これでここには私達5人だけになった。気兼ねなく楽しんでくれたまえ。」
優しくそう言うと人払いの済んだ空間に何の疑問も持たないヴァッツは、
「いただきます!!」
祈りもそこそこに料理を食べ始めた。
気になる話もあるが3人もまずは腹ごしらえだ。
出された料理を素直に堪能し始めると、
「ところでクレイス、君はどこの国の王子なんだい?」
ビャクトルが先ほどの話から少し逸れる部分の質問をしてくる。
あの時は4人がそれぞれ只者ではない、という事を誇張したくて口走ったのだが、
「僕はアデルハイドの王子でした。」
滅ぼされた事も聞かれていないので嘘をつかないよう、
ここは過去形で表現して乗り切れるかどうか試してみるも、
「ほう?あまり聞いたことがない国だ。東の大陸では有名なのかい?」
「彼の国は小さいながら巨大な2国に挟まれた堅牢な国家で有名なんです。」
「ほほう?」
ショウからそう言われると少し気恥ずかしい。
自分は王族らしい事を何もやってこなかったのだ。
彼の事だからその辺りはよくわかっているはずなので
必要以上に持ち上げるような発言はやめてほしいのだが・・・
ビャクトルは納得したのか、まじまじとこちらを見てくる。
うう・・・少し後ろめたい・・・だが、
「ここから話す内容は4領主しか知らない事だ。君達もそれを踏まえて聞いてくれるかな。」
そこからビャクトルの出自の話が始まった。

『フォンディーナ』では貧困層に近い家に生まれた事、
奉公理由で『ユリアン公国』に預けられた事、
その手引きをした人物が・・・

「ザクラミス?!」
ショウがあまり聞いたことのない声で驚いている。静かに頷くビャクトルは、
「彼を知っているという事は君は私の話に最も理解を示してくれるかもしれないな。」
ショウに笑顔を向けた後、更に話を続けた。
「『ユリアン教』はユリアンという男が全てだ。
自身の欲望を満たすために幼い少年少女は性欲のはけ口にされている。
そして普段は石像になって大聖堂に奉られているのだが、この事は信者しか知らない。」
その言葉を聞いて3人が一瞬固まった。
信者しか知らない内容を何故ビャクトルが知っているのか。
疑問の答えはすぐに出たのだが、それは悲しい話だった。

「私はその男に囲われていた。意味はわかるかね?」

流れで何となくそんな気はしたが、そうか。ビャクトルはユリアンの・・・・・
ヴァッツ以外は重く沈んだ空気に包まれた。

「あの男は少年と少女にしか興味がなくてね。
成長した私はある日妾・・・そう、妾だな。その役目から降ろされた。」
話はさらに続く。
「次の役目として『フォンディーナ』に戻って工作員として働く、という命が下った。
完全に意識が支配されていた私に疑問や抗うという考えはなかった。
だが祖国に戻る途中の暑さで熱病にやられてね。運がよかったのか、そこで自我を取り戻したのだ。」
全ての記憶は残っていた。
『フォンディーナ』の重臣であるザクラミスが『ユリアン教』とつながっているという事実も。
なので彼はそのまま北上し、この地にたどり着いたという訳だ。

「息も絶え絶えだった私はこの地の前領主に運良く拾ってもらい養子として迎え入れられた。
そこから研鑽に励み、義父とこの国の為に身を粉にして働いた。
結果、今の王という地位にまで上り詰めたというわけだ。」
壮絶な話に周囲が黙って聞き入っている。
そしてこれらが全て事実なら
『フォンディーナ』の根幹部分に間違いなく『ユリアン教』が絡んでいることになる。

「クレイス君が話してくれたユリアン死去の朗報。
まさしく諸悪の根源が断たれた事実に私は大きな喜びを感じずにはいられない。」
右手の杯を軽く掲げるとそれを一気に飲み干すビャクトル。
彼にとってはこの上ない吉報だったのだろう。
「・・・しかしユリアンが死んだからといって全てが終わった訳ではありません。」
突如そんな事を言い出したのでクレイスとカズキが驚いてショウを見ると、
「うむ、その通りだ。出来得る限りその関係者を洗い出し、根絶に追い込む必要がある。」
大きく頷いたビャクトルは一行にそれぞれ力強い視線を送り、
「君達が守ろうとしているジェリアという人間の開放は約束する。
そして『フォンディーナ』への侵攻も取りやめる。
だがザクラミス、あの男だけは私がこの手で必ず始末する。理解してもらえるかな?」
クスィーヴからのジェリア開放条件をほぼ完全な形で満たす内容に全員が笑顔で頷く。
「わかりました。恐らくそれでクスィーヴ様も納得されるかと。」
ショウが代表してそれに答えると更に、
「それと、もしビャクトル様より先に私がザクラミスへ接触する機会があれば、
その時は始末してしまっても構いませんか?」
まるでカズキみたいなことを言い出した。先程この名前が出た時に反応していたのもショウだけだ。
恐らく『フォンディーナ』で何かあったのだろうが、
「ふふふ。いいだろう。ただし、必ずその首を私の前に持ってきてくれ。」
お互いがその男に対して強い思いがあるらしい。快諾するビャクトルと笑みを交わすショウ。
そんな2人を見て、これで全てが万事解決だと満面の笑みで食事を再開しようとした時、
「おいおい。それなら俺もまぜてくれよ。首さえ持って来ればいいんだな?」
黙って話を聞いていたカズキが戦闘狂らしい発言を挟んでくる。しかし、
「駄目です。あれには煮え湯を飲まされてますから譲れません。」
珍しく彼に釘をさすショウ。
話題が綺麗にまとまった一同はその後大いに晩餐を楽しんだ。





 国と国との衝突を回避することに成功したクレイス達は次の日、
ビャクトルの用意した馬車に乗ってクスィーヴの館に出発していた。
「あの男は私の義理の弟なんだ。人を使うのが上手くてね。
まぁ今回君達に課したような脅迫じみた事も平気でするから私の方が王に選ばれた訳だが。」
謁見時の面影は何もなく、全てから解放された王は明るく身内話をしてくれる。
車内でその事実を聞かされて驚くも、昨日の話では前領主から養子にしてもらった話は出ていた。
「『フォンディーナ』出身のビャクトル様が
この国の王になられる時にいざこざは起きなかったのですか?」
傍から聞いていてショウが相当際どい質問を投げかけている。
気にはなっていたが誰も口にすることが出来なかった類の疑問に、
「西の領主が多少口を挟んだ程度だったな。元々『羅刹』様の力が残っているこの地で
種族程度の小さな問題を口にする人間はそうはいないんだ。」

「「「「?!」」」」
またもすっかり忘れていた一同はそれぞれが思い出したかのようにその名前に食いついた。
「ビャクトルが知っているオレのじいちゃんの話を聞きたい!!」
今までジェリアを助ける為極力黙っていたヴァッツが瞳を輝かせて迫っていく。
他の3人も同じように熱い視線を送るので、理由を聞く事もなく王が静かに話を始めた。

「そうだな。私も聞いた話でしかないんだが『ジョーロン』が1つの国になる前、
30年近く昔の話だ。各領主が小さな紛争を続けていた頃、
北の領主ナルバリがその不毛な戦いに終止符を打つべく『羅刹』様に力を借りたらしいんだ。」
ナルバリというのはここに来る前にも聞いた名だ。
4人が頷きながら静かに耳を傾けるのでビャクトルもそのまま続ける。
「そこで『羅刹』様は今ある王都の場所、その時は小高い丘だったんだが。
そこに城を建設し始めると同時に四方の領主達へ
『4領主の地は我が国とする!文句がある奴はワシを倒してみろ!!』といった書状を送り付けたのだ。」
(あのお祖父さんが・・・)
クレイスは初めて会った時の印象が強かったのでそんな破天荒な行動を取る姿を想像出来ず、
目を丸くして驚いて聞いている。

「その挑発に乗ったのが西と南の領主だ。彼らは軍を使ってその建設途中の丘へ侵攻を仕掛けるも、
全て返り討ちにあい、その間にもどんどん城は出来上がっていったらしい。
あまりにも強い『羅刹』様に太刀打ち出来ない西と南は
その存在を無視して今まで通りの紛争状態に戻そうとしたんだ。
しかしそれは『羅刹』様が許さなかった。
領主同士の争いは自国の内紛と見なし、事ある毎に介入して暴れたそうだ。
結果二進も三進もいかなくなった西と南も降伏し、本当に4領主を纏め上げて国を作った。
それがこの『ジョーロン』という訳だ。」

どれだけの力を持っていればそのような事が出来るのだろう・・・
聞き終わった4人はそれぞれが沈黙し、その内容の凄まじさを想像していると、
「東の領主様はどうされていたのですか?話の中には全く出てきませんでしたが。」
ショウが気になる点について尋ねてみる。
「ああ。東の領主は商人気質でね。極力争いを避けていたんだよ。
元々血の気が多い西と南の争いに北と東が巻き込まれている感じだったみたいだし。」
「なるほどなぁ。やっぱり会ったらすぐに立ち合いを申し込まなきゃなんねぇな。」
無謀であり物好きでもあるカズキはその恐るべき強さを知っても戦いを挑もうとしている。
らしいといえばらしいのだが。

「・・・その時いっぱい人を傷つけちゃったのかな・・・」
沈んだ声でやっと口を開いたヴァッツ。
その表情は暗く落ち込んで別人のようになっていた。
流石に全員が察したのか、お互いが顔を見合わせて悩む中、

「ヴァッツ。ここにいる君の友人達を見てごらん。」
ビャクトルが優しく語り掛ける。言われるがままヴァッツが3人を見回すと、
「私も入れてここには5人いる。たった5人でも髪の色や肌の色が全然違うだろう?
世の中にはその程度の事が気に食わなくて相手に危害を加えようとする者が大勢いるんだ。」
「・・・・・そうなの?」
優しく語り掛けるビャクトルにヴァッツは不思議そうな表情を見せている。
「ああ。話せばそれがいかにちっぽけな事かわかってくれる人間もいる。
だがそうでない人間を相手にする場合、人は力ずくで相手を納得させる必要が出てくるんだ。」
「何で?」
「そうしないとこちらの大切な人達に危害が及んでしまうからさ。
人を傷つけてはいけない。その考え自体は尊重されるべきだろう。
しかし例え人を傷つけても戦わねばならぬ時があるのも事実。
『羅刹』様にとって北の領主ナルバリとその領民はとても大切だった。
だからあの方はそれらを守る為に自身の命と誇りと信念を賭けて戦い抜いたんだ。」
「・・・・・」
これは決してヴァッツだけに言える事ではなかった。
クレイス本人もいずれは母国を取り戻す為、命を賭けて戦わねばならぬ時が来るのだ。
その時、相手を傷つける事に抵抗を覚えていては戦にならない。

「・・・それでもオレは人を傷つけたくない。」
王の言葉が届かなかったのか、頬を膨らませてジト目になっているヴァッツ。
しかしビャクトルもそれを咎めるような素振りを一切せずに、
「君はあの『羅刹』のお孫様だ。もしかするとそういう方法が見出せるかもしれないな。」
微笑みを浮かべながら蒼髪の少年に羨望の眼差しを送っていた。

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