年下の上司
story4 July 女心と夏の空 課対抗バトミントン大会(4)
 
 晃司はすぐに見つかった。
体育館の裏で、コンクリの階段に腰掛けて、1人で煙草を吸っている。
「………お昼、もってきたけど」
果歩が声を掛けると、晃司は物憂げに顔を上げた。
朝からあまり元気がない。それは感じていたけど、そんな話ができる雰囲気でもなかった。
煙草、まだ吸ってるんだ。
やめてって言ったのに……そして、一時は、やめていたのに。
元々喫煙の嗜好がなかった晃司は、この局に来て煙草をはじめた。多分、ストレス――週の大半は10時すぎまで残業、翌日、容赦なく8時半出勤の日々では、それも仕方ない。
「まずそう」
晃司は、弁当の箱を開くと、つまらなそうに呟いた。
果歩は、自身で作った弁当を持参している。あまり食欲がないから晃司にあげてもいいのだが、それはさすがに言い出せなかった。
「ごめん、次は……負けるかも」
果歩は、晃司の背後に立ったまま、おそるおそるそう言った。
流奈は、おそらく確実に――しかも、一片の容赦もなく、果歩を狙い撃ちしてくるだろう。
試合に負けるのは勿論のこと、局全体に「実は的場さん、かなりどんくさい人だったんだ」という真実が広まるのも、多分時間の問題だ。
「ま、そうなったら仕方ねぇよ」
晃司は振り返りもせずに言った。
「おたくの係長、そもそも本気でやる気ないみたいだし。なんかもう、どうでもよくなってきた」
「……あんなに練習したのに」
それには答えず、晃司は箸を割り、つまらなそうに弁当を口に運んでいる。
「………色々、ありがと」
果歩は、思い切って、ずっと言いたくて言えなかったことを口にした。
「なにそれ、あらためて別れの言葉?」
「そんなんじゃないけど」
少しためらってから、その隣に腰を下ろす。
「……この大会に出ることになって、本当言うと、ずっと怖かったし嫌だったんだけど」
「………」
「……その、別に晃司が怖いとか嫌いとかじゃなくて」
過去の、ちょっと情けないトラウマのせいで。
「運動、子供の頃からずっと苦手で、……中学、高校になると、体育祭とかクラス対抗の競技ってあるじゃない?」
大抵、それはバレーだったり、ソフトボールだったりするんだけど。
「クラスの女子で、チームを決めるのね。大抵残るのは私。全員参加のルールだから、私が入ると負けるからって、……いつも、私1人があまっちゃって」
晃司は無言で、弁当を口に運んでいる。
「チームのリーダー同士がじゃんけんして、負けた方が引き取る、みたいなね。……それが結構、みじめだったりして」
「……………」
「まぁ……色々、その時、上手い子から教えてもらったりしたけど、私、全然進歩なかったから」
何やってんのよ、果歩。
ああ、もう、だめ、ひっこんでて、前に出ないで。
的場さんさえいなけりゃね。
あんな怒られ方は、二度と嫌だし、多感な時期だけに、忘れたくても忘れられなかった。
「1人じゃない、俺がいるっていう言葉、すごく嬉しかった。あれでかなり楽になったんだ。本当の話」
あんな風に言われて。
で、ただ立ってるだけだったけど、3試合も勝てて。
少しだけ……昔の切ない思い出が、過去に流れていったような気がする。
「途中から分かったよ、なんとなくだけど」
晃司は、半分以上残した弁当の蓋を閉めて、顔をあげた。
「ジムで、後輩を指導する時……色んな奴がいるから、中にはいじめくらって仕返ししたくて入ってくる奴もいるし」
「……………」
「他人から嫌な目にあって、自信なくしてる奴ってすぐに分かる。妙にびくびくして、イライラするほど従順でさ」
そこで、晃司は言葉を途切れさせた。
「……お前が、そんなだとは思ってもみなかったけど」
「……………」
さっと吹き抜けた乾いた風が、2人の額をひと時だけ冷ました。
「晃司には、私のこと、どう見えてたの」
隣にいるのが、別れた恋人だという実感が、ようやく果歩にも湧いてきていた。
3年もの間、互いの何もかもを知り尽くすほど、濃密な時間を過ごしてきた恋人だということが。
「何もかも完璧で……弱みなんてなさそうな感じかな。俺、お前に比べて、自分が子供だって知ってたから」
「……………」
「色んな言葉や態度で、傷つけたり汚したりしたのかもしんない」
「……………」
こめんな。
そう言って晃司は立ち上がった。
「もっと早く、そういうとこも、見せて欲しかったよ」
最後に、背中からそんな言葉が聞こえた。
果歩はしばらく黙ったまま、コンクリに刻まれた自分の影を見つめていた。
*************************
午後2時。
果歩にとっては、因縁の試合が始まった。
試合に敗れたものは、大抵表彰式を待たずに帰るのが常なのに、その日はなぜか、参加者のほとんどが残り、体育館に設けられた特設コート脇に詰め掛けている。
その数の異様な多さに、果歩はいつも以上に足がすくむ思いだった。
――す、すごいギャラリーなんだけど。
「よっ、がんばれ、的場君」
陽気な掛け声は、午後からやってきた――果歩をこの窮地に陥れた張本人、那賀局長のものである。
各課の課長補佐は無論、総務の連中も全員集まっている。夜の打ち上げに参加予定の各課の女子職員や臨時職員たちも、なんだか興味津々と言った目で見守ってくれている。
「果歩ちゃーん、がんばれよ」
「須藤さん、ファイト!」
自分で言うのもおかしな話だが、この局で、果歩と流奈は、中年男性の人気を二部する存在である、しかも、藤堂と流奈は、いまや局で噂のカップル。妙な憶測もあいまっての、このギャラリーの数なのかもしれない。
隣のコートでは、同じく準決勝の試合が行なわれている。都市デザイン室窪塚主査と富永美鈴のペア、が、そちらは、悲しいほど誰も注目していない。
試合開始の笛が鳴った。
前衛が晃司で、後衛が果歩。
片や相手は、前衛が流奈で、後衛が藤堂。
「……………」
果歩の位置から、藤堂の姿が真正面に見える。
ラケットを正眼に構えてはいるものの、眼鏡にあたる照明のせいで、その視線がどこに向けられているか果歩には分からない。
試合前、藤堂と果歩は、ごく普通に「がんばってください」「的場さんも」と声をかけあった。
自分でも拍子抜けするくらいあっさりとそう言えたし、藤堂の表情も穏やかだった。まだ嫉妬めいた冷たさを感じていた方がマシだったくらいで――。
――藤堂さんとは。
果歩は、寂しさを押し殺して視線を下げた。
――今回のバトミントン大会で、本当に距離が離れちゃったな。……
悲しいけど、そう思わずにはいられない。
こうなった責任は、どっちにあるんだろう。優柔不断なのは藤堂が悪いが、いつまでも過ぎたことを気にしていた果歩も悪い。
たった一言。
ごめんなさい、とか、今度食事にいきましょうとか。
自分から糸口を見せれば、それでよかったはずなのに。
「的場さん!」
晃司の声ではっとして我に返る。
目の前にはシャトル。斜め前から晃司がものすごい勢いで駆け寄ってる。
咄嗟に身体をかわす。そのスペースに滑り込んだ晃司がラケットを振りかぶって打ち返す。
相手コートに絶好の球がかえった。それを「きゃーっ」とか言いつつ、ラケットを正確に振り上げ、計算されたコースに流奈が打ち返してくる。
それは、おそらく流奈の狙いどおり果歩の目の前。が、足がすくんだ果歩に代わり、体勢を立て直した晃司が、猛ダッシュで滑り込み、シャトルを再びすくいあげた。
「おいおい、前園君、そこは果歩ちゃんに打たせてやれよ」
「でしゃばりすぎだぞ」
そんな冷やかしのような声がギャラリーから聞こえてくる。
しかし、今度は本当に、晃司は前のめりに倒れこんだ。即座に起きられる体勢ではない。
再びシャトルが――
「きゃー、また来ちゃった」
流奈が、ラケットを思いっきりふりかぶる。
が、ほとんどスマッシュの体勢に入っていた流奈の前に、すっと大きな影が滑り込んできた。
意外にも、それは、今まで頑なに後衛から動こうとしなかった藤堂だった。
「僕が」
そんな声が確かに聞こえた。
流奈がけげんそうな目で後衛に下がるのと、藤堂がラケットを振り下ろすのが同時だった。
「あ……!」
藤堂の打ち返したシャトルは、果歩の立つ位置ではなく、半身を起こした晃司に向かって落下していく。
が、晃司は、奇跡的な反射神経で体勢を立て直すと、それを再び敵陣に叩き込んだ。
即座にコースに反応し、身をひるがえした藤堂が、見事なフォームで今度はそれをすくい上げる。
感嘆の声が周囲から上がったし、それは果歩も同様だった。
「おいおい、藤堂君はどうしたんだ」
「たまたまですよ、偶然に決まってますって」
意外な展開に、ギャラリーが微妙に動揺している。
藤堂の打った球は、しかし、打撃時の体勢の難しさも相まって、晃司にしてみれば絶好の浮き球となった。ふりかぶった晃司が鋭いスマッシュを決める。が、間違いなく決まる、と思われたそれも、藤堂が――長いリーチを生かして拾い上げた。
「…………つか、マジ?」
「と、藤堂君、なんか人が変わったみたいな」
どよめきと共に、そんな声が聞こえてきた。
後衛に突っ立ったままの流奈も、今はさすがにぽかん、としている。
果歩もそれは、同様だった。
晃司が打つ。
藤堂が拾う。
それを晃司が拾い、負けじと藤堂も拾う。
ペアの存在などまったく無視した男同士の熾烈なラリー。
すでにダブルスではない、男子シングルスの戦いが、局の職員体育祭という呑気なフレームに似合わない真剣さで繰り広げられている。
「くそっ」
長い接戦に苛立ったのか、くらえ、とばかりに晃司が放った強烈なスマッシュが、藤堂の左脇をすり抜けた。
決まった――
と、全員が拳を握った瞬間。
後衛に下がった流奈が飛び出してくる。
「え…?」
そんなのあり? と、一瞬全員が思ったが、そもそもそれが当たり前の行動で、流奈は綺麗なフォームでそれを拾い上げた。
飛んできた球は、今度こそ過たず、果歩めがけて降ってくる。
「えっ、う、嘘っ」
晃司もさすがに間に合わなくて――必死で追いかけた果歩は、そのままつんのめってばったりと前に倒れた。
「………………」
しん、と、場内が静まり返る。
――ど、どんくさいし、私。
「きゃー、藤堂さん、1点入りましたぁ」
ホイッスルと共に、流奈の歓声が聞こえる。
「ご、ごめんなさい」
「いいよ、気にすんな」
そのままの姿勢で固まっていた果歩は、晃司に腕を引かれて、立ち上がった。
「果歩ちゃん、どんまい」
「猿も木から落ちるだよ」
「そうそう、それにシングルの試合みたいだったしね、不意打ち不意打ち」
そんな掛け声がギャラリーから聞こえてくる。
――ああ、私、実は全然運動できないのに。
その真実がばれるのも時間の問題である、このままだと。
「須藤さん、多分私を狙ってくるから」
果歩がそう言うと、晃司は心得たように頷いた。
すでにその額は、汗で濡れつくしている。
その汗を前髪ごと拭い、晃司は荒い息を吐いて、わずかに笑った。
「でも、そう簡単にはいかないようだぜ」
「え?」
「須藤はそうでも」
晃司は苦い目で顎をしゃくる。その先には、微妙に呼吸を乱している藤堂の横顔。
「あいつは、俺一人を、徹底的に狙ってくるみたいだから」
*************************
「………つか」
ギャラリーが、半ばあきれ返っている。
「局のスポーツ大会で、ここまで真剣にやる意味、ある……?」
「いや、ないだろ」
熾烈を通り越した過酷なラリーの攻防。
観客は棒立ち。半ば唖然と、が、それなりに息を呑んで勝負の行方を見守っている。
果歩の視界では、ぜえっ、ぜえっと、晃司の背中が大きな上下を繰り返している。
藤堂が、前髪を腕で払う。表情はさほど変わらないが、すでに額も、首筋も、汗で濡れている。
「すみません」
審判に一言を声をかけ、ラケットを下げた藤堂は、自らの眼鏡を外した。
「あ、私が」
置場所を求めて視線をめぐらした藤堂の傍に、住宅計画課の女性職員が歩み寄る。
「ありがとう」
眼鏡を女に預け、再び藤堂が向き直った。
軽いざわめきが館内に広がった。
「藤堂さん、別の人みたい」
「本当にあの人が、あの藤堂係長?」
それまで、半分口を開けたまま、殺気立つ男2人の勝負を見つめるしかなかった果歩と流奈だが、その囁き声には、2人とも敏感に反応してしまっていた。
「ねぇ、藤堂係長って、結構かっこいいね」
「私、ファンになっちゃいそう」
そんな声さえ、他課の女の子たちから聞こえてくる。
――ああ、そんな再評価いらないのに。
果歩は焦れ焦れと唇を噛んだ。
眼鏡を取ったら――なんだか昔観た洋画のスーパーマンみたいだけど、本当に彼は、別人になってしまうから。
それでなくても、今日は普通以上にかっこよく見えるのに。
執務室での、どこか茫洋とした、やぼったい姿はどこにもない。
俊敏な身のこなし、鋭い眼差し、見惚れるほど綺麗なフットワーク、敵の果歩でさえ、意外な姿に胸がときめいてしまうほどだ。
「藤堂係長、がんばって」
試合が再開されると、にわかに女性の声援が増えてきた。
その声に、むしろ果歩より苛立っているのは、同じペアの流奈のようで、今や、あからさまに敵意のこもった目を、ギャラリーの女性たちに向けている。
果歩は――よく分からなくなっていた。
自分の気持ち、というより、今、異常なくらい必死になっている藤堂の気持ちが。
(―――代表になれば、秋までずーっと藤堂さんと一緒ですから)
(―――私も、藤堂さんも、超はりきってるんです)
試合前の流奈の挑発。
あれは、本当の話だったんだろうか。
本当に――藤堂さんは、本気なんだろうか。
彼の美徳は、自身の実力を、それがどんなに過小評価されようと、決して自ら誇示しない点にあると果歩は思っている。
が、今の藤堂は、そんな謙遜や用心深さはおくびにも出さず、このコートで、(果歩にすればこの程度のイベントで)自身の全力を出し切るつもりのようだった。
「………………」
よく、分からなくなってきた。
「………………」
もしかして藤堂さん、今は、本気で流奈のことを。
こんなに距離が離れてしまっても、果歩はどこかで信じていた。
流奈よりも、自分の方が藤堂の近くにいる。色々誤解が重なってしまったけれど、彼にとって、自分はまだ特別なのだと。
「…………」
それは、勝手な、都合のいい思いこみだったのかもしれない。
人の気持ちは変わる。
――変わる……んだ。
不意に、過去のある場面が果歩の中に蘇ってきた。
周囲の歓声と共に高揚も消え、寂寞にも似た冷たいものが胸の中に広がっていく。
(指輪は、パリに買いに行こう。その時にウェディングドレスも注文しよう。式は、ギリシャの教会で挙げて、クルーザーで2人きりで旅行をするんだ)
(日本でも式を挙げなきゃね。君のご両親に失礼だ。やっぱり、その時は神前だろうか)
どんなに情熱的に恋しあっていても、人は簡単に、その感情を捨てられる。
かつて、果歩が、結婚すると信じていた男性もそうだった。
あれだけ大切にしてくれたのに――まるで嘘のようなあっけなさで、彼は果歩を捨てた。本当に小説かドラマのような変わり身の早さで。
果歩にしてもそうだ。
今年の春まで、ずっと晃司1人を大切に想ってきたのに、今は――心が離れてしまっている。
藤堂にだけ、その真実があてはまらないとどうして言えるだろう。この短い間に、彼が流奈に気持ちを寄せていったとしても、なんら不思議はないことなのに。
歓声が、はっと果歩を現実に引き戻す。
気がつくと、勝負はあと1ポイントで決着がつく所だった。
デュースの末、今は晃司がリードしている。ラリーが続いているこの1点を決めれば、勝利もそのまま晃司のものになる。
「藤堂さーん!」
「がんばってください、藤堂係長!」
そんな黄色い掛け声が、ひっきりなしに飛んでいる。
無論、晃司への応援もけたたましい。
「前園ーっっっ」
「何をやっておるんだ、そこだ、そこ、前園君!!」
その殆どは、南原とか中津川とか――普段から藤堂に反感を持っている連中なのだが。
藤堂の背後では、所在なく立つ流奈が、いつになく苛々している。周囲の黄色い声に対して、相当むかついているのが、その表情からうかがい知れる。
「あっ」
前に立つ晃司に視線を戻した果歩は、思わず声をあげていた。
足に相当きているせいか、汗で手が滑ったのか――打ち返す晃司の球に、勢いがない。勢いがないというか、明らかに打ち損ねだ。
それはふわりと藤堂の頭上に、まさに、決めてくれと言わんばかりのコースで飛んでいった。
実際、藤堂は、即座にスマッシュポジションにラケットを構えた。
その場の全員が息を呑む。
十中八九、決まる場面。
が、
「瑛士さぁん、がんばって!」
場違いに甘い声が、静まり返った館内に響き渡った。
「……………」
「……………」
「……………」
果歩は凍り付いてた。
いや、果歩だけでなく、その声を耳にした全員が。
瑛士さん。
今、流奈は確かにそう呼んだ。両手を口に当て、藤堂の背中に向けて。
瑛士さん……。
瑛士さん。
果歩にとっては、どんなスマッシュより、致命的な決定打。
打ち抜かれて、視野がひととき暗く翳る。
が、その声に動揺したのは、果歩だけではないようだった。
ぎょっと目を剥いた藤堂が、明らかにその刹那動きを止めた。
そして、がくっと膝が砕けたように、ラケットが力なく振り下ろされ―――絶好の決め球は、一転、甘い浮き球となってふわふわと舞い上がる。
コースをそれた球は、晃司の頭上を超え、突っ立っている果歩めがけて落ちてきた。
ふんわりと。
子供でも打ち返せるほどゆるい速度で。
が、
果歩は動けなかった。
瑛士さん。
その言葉が、まだ耳の奥でぐるぐる渦を巻いている。
晃司が駆けてくるのが見える。
「馬鹿っ、果歩!」
が、さしもの晃司も、疲労もあってか、追いつきようがない。
固まったままの果歩の足元に、てんてんとシャトルが落ちてきた。
館内は静まり返っている。
その静けさの理由が――実は、今、晃司が咄嗟に口にした言葉にあることを、さすがに果歩も晃司も気づくことはできなかった。
 晃司はすぐに見つかった。
体育館の裏で、コンクリの階段に腰掛けて、1人で煙草を吸っている。
「………お昼、もってきたけど」
果歩が声を掛けると、晃司は物憂げに顔を上げた。
朝からあまり元気がない。それは感じていたけど、そんな話ができる雰囲気でもなかった。
煙草、まだ吸ってるんだ。
やめてって言ったのに……そして、一時は、やめていたのに。
元々喫煙の嗜好がなかった晃司は、この局に来て煙草をはじめた。多分、ストレス――週の大半は10時すぎまで残業、翌日、容赦なく8時半出勤の日々では、それも仕方ない。
「まずそう」
晃司は、弁当の箱を開くと、つまらなそうに呟いた。
果歩は、自身で作った弁当を持参している。あまり食欲がないから晃司にあげてもいいのだが、それはさすがに言い出せなかった。
「ごめん、次は……負けるかも」
果歩は、晃司の背後に立ったまま、おそるおそるそう言った。
流奈は、おそらく確実に――しかも、一片の容赦もなく、果歩を狙い撃ちしてくるだろう。
試合に負けるのは勿論のこと、局全体に「実は的場さん、かなりどんくさい人だったんだ」という真実が広まるのも、多分時間の問題だ。
「ま、そうなったら仕方ねぇよ」
晃司は振り返りもせずに言った。
「おたくの係長、そもそも本気でやる気ないみたいだし。なんかもう、どうでもよくなってきた」
「……あんなに練習したのに」
それには答えず、晃司は箸を割り、つまらなそうに弁当を口に運んでいる。
「………色々、ありがと」
果歩は、思い切って、ずっと言いたくて言えなかったことを口にした。
「なにそれ、あらためて別れの言葉?」
「そんなんじゃないけど」
少しためらってから、その隣に腰を下ろす。
「……この大会に出ることになって、本当言うと、ずっと怖かったし嫌だったんだけど」
「………」
「……その、別に晃司が怖いとか嫌いとかじゃなくて」
過去の、ちょっと情けないトラウマのせいで。
「運動、子供の頃からずっと苦手で、……中学、高校になると、体育祭とかクラス対抗の競技ってあるじゃない?」
大抵、それはバレーだったり、ソフトボールだったりするんだけど。
「クラスの女子で、チームを決めるのね。大抵残るのは私。全員参加のルールだから、私が入ると負けるからって、……いつも、私1人があまっちゃって」
晃司は無言で、弁当を口に運んでいる。
「チームのリーダー同士がじゃんけんして、負けた方が引き取る、みたいなね。……それが結構、みじめだったりして」
「……………」
「まぁ……色々、その時、上手い子から教えてもらったりしたけど、私、全然進歩なかったから」
何やってんのよ、果歩。
ああ、もう、だめ、ひっこんでて、前に出ないで。
的場さんさえいなけりゃね。
あんな怒られ方は、二度と嫌だし、多感な時期だけに、忘れたくても忘れられなかった。
「1人じゃない、俺がいるっていう言葉、すごく嬉しかった。あれでかなり楽になったんだ。本当の話」
あんな風に言われて。
で、ただ立ってるだけだったけど、3試合も勝てて。
少しだけ……昔の切ない思い出が、過去に流れていったような気がする。
「途中から分かったよ、なんとなくだけど」
晃司は、半分以上残した弁当の蓋を閉めて、顔をあげた。
「ジムで、後輩を指導する時……色んな奴がいるから、中にはいじめくらって仕返ししたくて入ってくる奴もいるし」
「……………」
「他人から嫌な目にあって、自信なくしてる奴ってすぐに分かる。妙にびくびくして、イライラするほど従順でさ」
そこで、晃司は言葉を途切れさせた。
「……お前が、そんなだとは思ってもみなかったけど」
「……………」
さっと吹き抜けた乾いた風が、2人の額をひと時だけ冷ました。
「晃司には、私のこと、どう見えてたの」
隣にいるのが、別れた恋人だという実感が、ようやく果歩にも湧いてきていた。
3年もの間、互いの何もかもを知り尽くすほど、濃密な時間を過ごしてきた恋人だということが。
「何もかも完璧で……弱みなんてなさそうな感じかな。俺、お前に比べて、自分が子供だって知ってたから」
「……………」
「色んな言葉や態度で、傷つけたり汚したりしたのかもしんない」
「……………」
こめんな。
そう言って晃司は立ち上がった。
「もっと早く、そういうとこも、見せて欲しかったよ」
最後に、背中からそんな言葉が聞こえた。
果歩はしばらく黙ったまま、コンクリに刻まれた自分の影を見つめていた。
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午後2時。
果歩にとっては、因縁の試合が始まった。
試合に敗れたものは、大抵表彰式を待たずに帰るのが常なのに、その日はなぜか、参加者のほとんどが残り、体育館に設けられた特設コート脇に詰め掛けている。
その数の異様な多さに、果歩はいつも以上に足がすくむ思いだった。
――す、すごいギャラリーなんだけど。
「よっ、がんばれ、的場君」
陽気な掛け声は、午後からやってきた――果歩をこの窮地に陥れた張本人、那賀局長のものである。
各課の課長補佐は無論、総務の連中も全員集まっている。夜の打ち上げに参加予定の各課の女子職員や臨時職員たちも、なんだか興味津々と言った目で見守ってくれている。
「果歩ちゃーん、がんばれよ」
「須藤さん、ファイト!」
自分で言うのもおかしな話だが、この局で、果歩と流奈は、中年男性の人気を二部する存在である、しかも、藤堂と流奈は、いまや局で噂のカップル。妙な憶測もあいまっての、このギャラリーの数なのかもしれない。
隣のコートでは、同じく準決勝の試合が行なわれている。都市デザイン室窪塚主査と富永美鈴のペア、が、そちらは、悲しいほど誰も注目していない。
試合開始の笛が鳴った。
前衛が晃司で、後衛が果歩。
片や相手は、前衛が流奈で、後衛が藤堂。
「……………」
果歩の位置から、藤堂の姿が真正面に見える。
ラケットを正眼に構えてはいるものの、眼鏡にあたる照明のせいで、その視線がどこに向けられているか果歩には分からない。
試合前、藤堂と果歩は、ごく普通に「がんばってください」「的場さんも」と声をかけあった。
自分でも拍子抜けするくらいあっさりとそう言えたし、藤堂の表情も穏やかだった。まだ嫉妬めいた冷たさを感じていた方がマシだったくらいで――。
――藤堂さんとは。
果歩は、寂しさを押し殺して視線を下げた。
――今回のバトミントン大会で、本当に距離が離れちゃったな。……
悲しいけど、そう思わずにはいられない。
こうなった責任は、どっちにあるんだろう。優柔不断なのは藤堂が悪いが、いつまでも過ぎたことを気にしていた果歩も悪い。
たった一言。
ごめんなさい、とか、今度食事にいきましょうとか。
自分から糸口を見せれば、それでよかったはずなのに。
「的場さん!」
晃司の声ではっとして我に返る。
目の前にはシャトル。斜め前から晃司がものすごい勢いで駆け寄ってる。
咄嗟に身体をかわす。そのスペースに滑り込んだ晃司がラケットを振りかぶって打ち返す。
相手コートに絶好の球がかえった。それを「きゃーっ」とか言いつつ、ラケットを正確に振り上げ、計算されたコースに流奈が打ち返してくる。
それは、おそらく流奈の狙いどおり果歩の目の前。が、足がすくんだ果歩に代わり、体勢を立て直した晃司が、猛ダッシュで滑り込み、シャトルを再びすくいあげた。
「おいおい、前園君、そこは果歩ちゃんに打たせてやれよ」
「でしゃばりすぎだぞ」
そんな冷やかしのような声がギャラリーから聞こえてくる。
しかし、今度は本当に、晃司は前のめりに倒れこんだ。即座に起きられる体勢ではない。
再びシャトルが――
「きゃー、また来ちゃった」
流奈が、ラケットを思いっきりふりかぶる。
が、ほとんどスマッシュの体勢に入っていた流奈の前に、すっと大きな影が滑り込んできた。
意外にも、それは、今まで頑なに後衛から動こうとしなかった藤堂だった。
「僕が」
そんな声が確かに聞こえた。
流奈がけげんそうな目で後衛に下がるのと、藤堂がラケットを振り下ろすのが同時だった。
「あ……!」
藤堂の打ち返したシャトルは、果歩の立つ位置ではなく、半身を起こした晃司に向かって落下していく。
が、晃司は、奇跡的な反射神経で体勢を立て直すと、それを再び敵陣に叩き込んだ。
即座にコースに反応し、身をひるがえした藤堂が、見事なフォームで今度はそれをすくい上げる。
感嘆の声が周囲から上がったし、それは果歩も同様だった。
「おいおい、藤堂君はどうしたんだ」
「たまたまですよ、偶然に決まってますって」
意外な展開に、ギャラリーが微妙に動揺している。
藤堂の打った球は、しかし、打撃時の体勢の難しさも相まって、晃司にしてみれば絶好の浮き球となった。ふりかぶった晃司が鋭いスマッシュを決める。が、間違いなく決まる、と思われたそれも、藤堂が――長いリーチを生かして拾い上げた。
「…………つか、マジ?」
「と、藤堂君、なんか人が変わったみたいな」
どよめきと共に、そんな声が聞こえてきた。
後衛に突っ立ったままの流奈も、今はさすがにぽかん、としている。
果歩もそれは、同様だった。
晃司が打つ。
藤堂が拾う。
それを晃司が拾い、負けじと藤堂も拾う。
ペアの存在などまったく無視した男同士の熾烈なラリー。
すでにダブルスではない、男子シングルスの戦いが、局の職員体育祭という呑気なフレームに似合わない真剣さで繰り広げられている。
「くそっ」
長い接戦に苛立ったのか、くらえ、とばかりに晃司が放った強烈なスマッシュが、藤堂の左脇をすり抜けた。
決まった――
と、全員が拳を握った瞬間。
後衛に下がった流奈が飛び出してくる。
「え…?」
そんなのあり? と、一瞬全員が思ったが、そもそもそれが当たり前の行動で、流奈は綺麗なフォームでそれを拾い上げた。
飛んできた球は、今度こそ過たず、果歩めがけて降ってくる。
「えっ、う、嘘っ」
晃司もさすがに間に合わなくて――必死で追いかけた果歩は、そのままつんのめってばったりと前に倒れた。
「………………」
しん、と、場内が静まり返る。
――ど、どんくさいし、私。
「きゃー、藤堂さん、1点入りましたぁ」
ホイッスルと共に、流奈の歓声が聞こえる。
「ご、ごめんなさい」
「いいよ、気にすんな」
そのままの姿勢で固まっていた果歩は、晃司に腕を引かれて、立ち上がった。
「果歩ちゃん、どんまい」
「猿も木から落ちるだよ」
「そうそう、それにシングルの試合みたいだったしね、不意打ち不意打ち」
そんな掛け声がギャラリーから聞こえてくる。
――ああ、私、実は全然運動できないのに。
その真実がばれるのも時間の問題である、このままだと。
「須藤さん、多分私を狙ってくるから」
果歩がそう言うと、晃司は心得たように頷いた。
すでにその額は、汗で濡れつくしている。
その汗を前髪ごと拭い、晃司は荒い息を吐いて、わずかに笑った。
「でも、そう簡単にはいかないようだぜ」
「え?」
「須藤はそうでも」
晃司は苦い目で顎をしゃくる。その先には、微妙に呼吸を乱している藤堂の横顔。
「あいつは、俺一人を、徹底的に狙ってくるみたいだから」
*************************
「………つか」
ギャラリーが、半ばあきれ返っている。
「局のスポーツ大会で、ここまで真剣にやる意味、ある……?」
「いや、ないだろ」
熾烈を通り越した過酷なラリーの攻防。
観客は棒立ち。半ば唖然と、が、それなりに息を呑んで勝負の行方を見守っている。
果歩の視界では、ぜえっ、ぜえっと、晃司の背中が大きな上下を繰り返している。
藤堂が、前髪を腕で払う。表情はさほど変わらないが、すでに額も、首筋も、汗で濡れている。
「すみません」
審判に一言を声をかけ、ラケットを下げた藤堂は、自らの眼鏡を外した。
「あ、私が」
置場所を求めて視線をめぐらした藤堂の傍に、住宅計画課の女性職員が歩み寄る。
「ありがとう」
眼鏡を女に預け、再び藤堂が向き直った。
軽いざわめきが館内に広がった。
「藤堂さん、別の人みたい」
「本当にあの人が、あの藤堂係長?」
それまで、半分口を開けたまま、殺気立つ男2人の勝負を見つめるしかなかった果歩と流奈だが、その囁き声には、2人とも敏感に反応してしまっていた。
「ねぇ、藤堂係長って、結構かっこいいね」
「私、ファンになっちゃいそう」
そんな声さえ、他課の女の子たちから聞こえてくる。
――ああ、そんな再評価いらないのに。
果歩は焦れ焦れと唇を噛んだ。
眼鏡を取ったら――なんだか昔観た洋画のスーパーマンみたいだけど、本当に彼は、別人になってしまうから。
それでなくても、今日は普通以上にかっこよく見えるのに。
執務室での、どこか茫洋とした、やぼったい姿はどこにもない。
俊敏な身のこなし、鋭い眼差し、見惚れるほど綺麗なフットワーク、敵の果歩でさえ、意外な姿に胸がときめいてしまうほどだ。
「藤堂係長、がんばって」
試合が再開されると、にわかに女性の声援が増えてきた。
その声に、むしろ果歩より苛立っているのは、同じペアの流奈のようで、今や、あからさまに敵意のこもった目を、ギャラリーの女性たちに向けている。
果歩は――よく分からなくなっていた。
自分の気持ち、というより、今、異常なくらい必死になっている藤堂の気持ちが。
(―――代表になれば、秋までずーっと藤堂さんと一緒ですから)
(―――私も、藤堂さんも、超はりきってるんです)
試合前の流奈の挑発。
あれは、本当の話だったんだろうか。
本当に――藤堂さんは、本気なんだろうか。
彼の美徳は、自身の実力を、それがどんなに過小評価されようと、決して自ら誇示しない点にあると果歩は思っている。
が、今の藤堂は、そんな謙遜や用心深さはおくびにも出さず、このコートで、(果歩にすればこの程度のイベントで)自身の全力を出し切るつもりのようだった。
「………………」
よく、分からなくなってきた。
「………………」
もしかして藤堂さん、今は、本気で流奈のことを。
こんなに距離が離れてしまっても、果歩はどこかで信じていた。
流奈よりも、自分の方が藤堂の近くにいる。色々誤解が重なってしまったけれど、彼にとって、自分はまだ特別なのだと。
「…………」
それは、勝手な、都合のいい思いこみだったのかもしれない。
人の気持ちは変わる。
――変わる……んだ。
不意に、過去のある場面が果歩の中に蘇ってきた。
周囲の歓声と共に高揚も消え、寂寞にも似た冷たいものが胸の中に広がっていく。
(指輪は、パリに買いに行こう。その時にウェディングドレスも注文しよう。式は、ギリシャの教会で挙げて、クルーザーで2人きりで旅行をするんだ)
(日本でも式を挙げなきゃね。君のご両親に失礼だ。やっぱり、その時は神前だろうか)
どんなに情熱的に恋しあっていても、人は簡単に、その感情を捨てられる。
かつて、果歩が、結婚すると信じていた男性もそうだった。
あれだけ大切にしてくれたのに――まるで嘘のようなあっけなさで、彼は果歩を捨てた。本当に小説かドラマのような変わり身の早さで。
果歩にしてもそうだ。
今年の春まで、ずっと晃司1人を大切に想ってきたのに、今は――心が離れてしまっている。
藤堂にだけ、その真実があてはまらないとどうして言えるだろう。この短い間に、彼が流奈に気持ちを寄せていったとしても、なんら不思議はないことなのに。
歓声が、はっと果歩を現実に引き戻す。
気がつくと、勝負はあと1ポイントで決着がつく所だった。
デュースの末、今は晃司がリードしている。ラリーが続いているこの1点を決めれば、勝利もそのまま晃司のものになる。
「藤堂さーん!」
「がんばってください、藤堂係長!」
そんな黄色い掛け声が、ひっきりなしに飛んでいる。
無論、晃司への応援もけたたましい。
「前園ーっっっ」
「何をやっておるんだ、そこだ、そこ、前園君!!」
その殆どは、南原とか中津川とか――普段から藤堂に反感を持っている連中なのだが。
藤堂の背後では、所在なく立つ流奈が、いつになく苛々している。周囲の黄色い声に対して、相当むかついているのが、その表情からうかがい知れる。
「あっ」
前に立つ晃司に視線を戻した果歩は、思わず声をあげていた。
足に相当きているせいか、汗で手が滑ったのか――打ち返す晃司の球に、勢いがない。勢いがないというか、明らかに打ち損ねだ。
それはふわりと藤堂の頭上に、まさに、決めてくれと言わんばかりのコースで飛んでいった。
実際、藤堂は、即座にスマッシュポジションにラケットを構えた。
その場の全員が息を呑む。
十中八九、決まる場面。
が、
「瑛士さぁん、がんばって!」
場違いに甘い声が、静まり返った館内に響き渡った。
「……………」
「……………」
「……………」
果歩は凍り付いてた。
いや、果歩だけでなく、その声を耳にした全員が。
瑛士さん。
今、流奈は確かにそう呼んだ。両手を口に当て、藤堂の背中に向けて。
瑛士さん……。
瑛士さん。
果歩にとっては、どんなスマッシュより、致命的な決定打。
打ち抜かれて、視野がひととき暗く翳る。
が、その声に動揺したのは、果歩だけではないようだった。
ぎょっと目を剥いた藤堂が、明らかにその刹那動きを止めた。
そして、がくっと膝が砕けたように、ラケットが力なく振り下ろされ―――絶好の決め球は、一転、甘い浮き球となってふわふわと舞い上がる。
コースをそれた球は、晃司の頭上を超え、突っ立っている果歩めがけて落ちてきた。
ふんわりと。
子供でも打ち返せるほどゆるい速度で。
が、
果歩は動けなかった。
瑛士さん。
その言葉が、まだ耳の奥でぐるぐる渦を巻いている。
晃司が駆けてくるのが見える。
「馬鹿っ、果歩!」
が、さしもの晃司も、疲労もあってか、追いつきようがない。
固まったままの果歩の足元に、てんてんとシャトルが落ちてきた。
館内は静まり返っている。
その静けさの理由が――実は、今、晃司が咄嗟に口にした言葉にあることを、さすがに果歩も晃司も気づくことはできなかった。
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