魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

794. 母の不安を察したのかも?

 魔王ルシファーがリリスと腕を絡めて降り立つと、周囲をぐるりと囲まれた。貴族達は「ご無事だった」となぜか安心して涙する。城下町の住人達も同様で、確かにおかしかった。


「何がそんなに不安なのか?」


 問うたルシファーへ、明確な返答を持つ者はおらず、皆が漠然とした不安に怯えた事実が浮き彫りになる。


「逆に平気な者はいるか?」


 不安を覚えた者が理由を説明できないなら、何も感じなかった者との差異を調べる方がはやい。決断したルシファーの問いかけに、挙手したのは簡単に数えられる少人数だった。


 アンナ、レライエ、アムドゥスキアス、アスタロト、ベルゼビュート、ベール、ルシファー。


 魔力量は直接関係なさそうだが、レライエとアンナを除けば魔力量は人並外れて多い。気味の悪い現象に、ルシファーがルキフェルとベールに調査を命じた。少し離れた場所では、サタナキア将軍が、無事な娘の姿に涙している。彼も不安に駆られた側らしい。イポスも父の姿にほっとする。


 この現象が長く続けば、街の機能や人々の生活に陰を落とすだろう。愛する人をずっと隣に置いて生活できる者は限られていた。仕事で離れたり、勉強や移動で一時的に距離を置くこともあるのだ。


「リリスもさっき、不安そうだったな」


 魔力量でいえば、大公と大差ない彼女が影響されたのだから、やはり魔力は無関係だ。ルキフェルも突然飛び込んできたのは、親代わりのベールが近くにいなかったせいだろう。


 困惑した状況で、ひとまず祭りの行事を可能な範囲で消化する決定を下した。祭りの期間中は仕事をしている者は限られ、家族や恋人が一緒にいることもできる。即位記念祭をあまり先延ばしできない事情もあった。


 貴族は領地や領民を置いて参加しており、観光に来た魔族もそれぞれの家に戻らなくてはならない。可能な範囲の行事を終わらせておくことで、即位記念祭を打ち切る可能性も考慮したルシファーの宣言が出され、人々はひとまず散った。


「あのね、ルシファー。たぶんだけど……魔の森がまだ揺らいでるのよ」


 リリス自身も確証がない話らしく、曖昧な言い方をする。少し迷いながら言葉を探す姿は、どこか幼く見えた。


「魔族は魔の森の子だから、母親が不安定だと伝わるんじゃないかしら」


 なるほどと納得しかけたところで、アスタロトが口を挟んだ。


「アルシア子爵が、黒い何かが魔の森の魔力に混じっていると話しましたが、関係ありますか?」


 ぱちりと金瞳を瞬き、リリスは口元を手で覆って考え込んだ。そんな彼女をふわりと抱き上げ、ルシファーは木陰へ歩き出す。後ろをついてくるヤンが巨大化し、大木の根元でくるんと丸くなった。


 久しぶりの毛皮ソファに、ルシファーが声をかけて沈み込む。座り心地も温もりも申し分ないヤンの上に、ピヨも飛び乗った。まだ番のアラエルより母親代わりのヤンの地位が高いようだ。


「確証はないけど、魔の森が回収した魔力にまだ異世界の毒が入っていて、浄化し切れていないみたい。それが揺らぎになって、植物系の種族が影響を受けたのね」


 納得したのか、アスタロトはそれ以上質問を重ねなかった。魔の森の安定を優先すべきだが、何をすればいいか分からない。ルシファーは迷いながら、提案した。


「魔の森を浄化する方法を探るか」

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