魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

781. 事件は繋がっていたようで

 ルシファーが差し出すお菓子を食べ、飴を舐めながらリリスが2度目の説明を終える頃、ようやくアスタロトが理解を示し始めた。庭から入る陽がかげる頃、ルキフェルが合流する。中庭はサタナキア公爵が引き継いでくれたらしい。


 研究職だが感覚派のルキフェルは、途中から聞いたリリスの話で大まかな仮説をくみ上げた。


「僕が理解した内容を話すから、間違ってたら指摘して」


 前置きしたルキフェルに、リリスが大きく頷く。少女達は話の内容が壮大過ぎて、混乱を来たしていた。


「アベル達の世界から何度も召喚を行って道が出来てるところに、今回は3人も一度に召喚した。そのため強く繋がった状態が維持され、最悪のタイミングで向こうの世界が壊れた。汚染物質が衝撃に押されてこの世界に流れ込む。汚染物質が落ちた先が海なので、魔族にすぐ影響がでていない。ここまでは合ってる?」


「ええ! さすがロキちゃんね」


 ようやく話が通じたと手を叩いて喜ぶリリスを後ろから抱きしめながら「ちょっと妬ける」とルシファーがぼやく。リリスに関することは察して動けるが、魔の森と海の関係に悩んで思考停止したルシファーは、ルキフェルがあっさり理解したのが悔しい。ここで八つ当たりはしないが、リリスの黒髪にキスを落としながら「オレのだ」と遠回しに主張した。


「ルシファー、取らないから落ち着いて」


 苦笑いするルキフェルの横で、アスタロトが肩を竦めた。勘違いから発生した嫉妬で殺されかけたアムドゥスキアスは、ぶるりと身を震わせる。抱っこしてくれるレライエにしがみつく翡翠竜の尻尾がくるんと丸まった。


「ルシファー、ロキちゃんはお兄ちゃんなのよ」


「わかってる」


 理解と感情は別である。むっとしながらも堪えるルシファーの純白の髪を撫でて、リリスはルキフェルに向き直った。


「汚染物質を分解するために必要な魔力が足りず、海が魔の森に借りた……あれ? どうやって連絡とったの」


「大きな亀さんよ」


 ベールの城の下にいた霊亀は、汽水湖経由で海と繋がったらしい。珊瑚であるカルンが来てから動き出した事件だと考えていたアスタロトは、首をかしげた。


「だとしたら、カルンはなぜ魔王城へ来たのですか?」


 海に生息する珊瑚が危険を冒して魔王城に来たのは、使者ではないのか。その問いに、リリスは困ったように笑った。背中を預け、腹の上で手を組んでいるルシファーを振り向く。密着した状態で顔を向けると、頬や唇にキスが降らされた。


「あれはルシファーが原因なの」


「オレ?」


 カルンが魔王城に来た原因だと言われても、心当たりがない。きょとんとしたルシファーへ、リリスが告げた内容は……確かに身に覚えのある状況だった。


「ルシファーの収納にカルンは入っていたのよ。紫の珊瑚を海で拾ったのを覚えてる?」


「ああ」


 人族の都を滅ぼした後、海に飛ばされた。あの時は足が岩に埋まったり、魚を持ち帰ったが……確かに珊瑚を拾って収納へ放り込んだ記憶がある。頷いたルシファーに、リリスはさらに続けた。


「あの珊瑚がカルンで、収納で仮死状態だったの」


「……っ、それは……悪いことをした」


 生きた者を入れられない収納の亜空間へ、紫の珊瑚を放り込んだのは自分だ。危うく殺すところだったと気づき、息をのんだルシファーが申し訳なさそうに呟いた。美しい珊瑚の欠片を、リリスの装飾品にしようと考えたのだ。まさか生きているとは思わなかった。


 軽い気持ちでやらかした魔王へ、アスタロトが額を押さえた。知らないところで、また騒動の種を拾っていたルシファーの管理を厳しくしようと決め、側近は淡い金髪をかき上げる。


「即位記念祭の前に、お部屋が爆発して呪われた品を並べたでしょう? あの時に一緒に取り出されて、部屋の中に落ちたんですって」


 装飾品を取りだして選んだ際に、紫の珊瑚は見ていない。しかし転がり落ちたなら、記憶にないのも当然だった。テーブルやソファの陰に落ちたなら、そのまま気づかずに放置しただろう。


「だから城内にいたのか」


 ルキフェルは魔法陣を破られたわけでないとわかり、ほっとした表情を見せる。自信があった防御魔法陣の内側に、対象外となる子供が現れた事件は、トラウマに成りかねない出来事だった。自分の魔法陣に落ち度がなかったことが証明され、安堵の息をつく。


「魔の森が海へ魔力を流したから、カルンも人化したのだと思うわ」


 その辺は海の生物なので、事情がよくわからないと告げたリリスは、一息ついてカップのお茶に口をつけた。

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