魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

612. 城の魔法陣が改変されてました

 爆発した部屋の内部を調査した結果、大量の火薬を運び込んだ痕跡が見つかった。魔法ではなく物理で仕掛けられたらしい。魔王城の防御魔法陣にとって、城主であるルシファーへの害意の有無が起動条件だ。なんらかの理由で、害意ありと判定されなかった。そこを解明するのはルキフェルの担当だ。


 持ち出した資料には過去の魔法陣も含め、様々な実験結果が記されている。ルキフェルが生まれる前まで遡った資料を空中に固定したアスタロトに、のそのそと身を起こしたルキフェルが疑問をぶつけた。


「ねえ、その魔法陣……おかしい」


 魔法陣や魔法の研究に関して第一人者であるルキフェルの指摘に、アスタロトとベールは僅かに安堵の表情を浮かべた。何か没頭していれば、不安や心配を軽減できる。全員がダメージを受けた状況で、ルキフェルほどの戦力と知識を放置するわけに行かなかった。


 苦しい状況であるからこそ、大公に相応しい振る舞いを求めなければならない。


「そうです。これらは廃棄された魔法陣です」


 過去に城の地下に刻まれた魔法陣のひとつだが、不具合による暴発が確認された。主たる原因は「害意」の定義が曖昧だったことにある。傷つける、殺そうとする、そういった感情を漠然と指定したことで、ルシファーを羨んだり妬む感情にも反応した。


 情勢が不安定だった頃はルシファーを信望する魔族より、取って代わろうとする者の方が多かったのだ。城に顔を出した謁見の使者が弾かれる事態が続き、業務に支障をきたして見直された魔法陣だった。


「昔の記録でしょ?」


 そんなもの、今回の件に関係ない。切り捨てようとしたルキフェルが、眉をひそめた。アスタロトが不要な資料を持ち出すわけがない。ましてやこの騒動の中、魔族の結束を揺るがす事態に……なぜ古い魔法陣の話を? 感じた疑問を込めた眼差しに、アスタロトは次の資料を提示した。


「今の魔王城の魔法陣配置図です」


 そういって提示された資料は2つ。魔王城再建の設計段階でルキフェルが関わって計算し、配置した図面がひとつ。そちらは何ら問題ない。しかし……もうひとつの資料は見覚えがなかった。初見の図面を食い入るように見つめ、上から下まで複数層に重ねた魔法陣を指さし確認する。


「これは違う、これも……あと、ここも、かな」


 いくつか気になる点を見つけ、ルキフェルの指先が魔法陣を描く。空中に小型の魔法陣を構築し直した。効力は数万分の一まで落とし、周囲を結界で囲う。最後の魔法陣までそっくり複写してから、ルキフェルは一番上に小さな魔石を置いた。


「完成……ここにもう一つ乗せると」


 呟きながら、結界の内側にある上部の魔石の横に、同じ種類の魔石を並べる。2つが触れあった瞬間、結界の中で小さな破裂音がして魔石は粉々に砕けた。


「ロキちゃん」


 後ろからの声に慌てたルキフェルが躓きながら振り返れば、赤い瞳を大きく見開いたリリスが口元を手で覆っていた。城の魔法陣を再現したミニチュアが砕け散る様子に、事情を察したリリスが唇を噛んだ。


「爆発の理由はこれだ。城の魔法陣が改変されてる」

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