魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

571. 偏った知識の暴露会

 魔王陛下が側近と一緒に竜族の長の爆発に巻き込まれる少し前、少女達はお茶会と称した勉強会に臨んでいた。扉の隙間から銀と黒の目が2つ覗いているのは無視する。分かりやすい覗き方なので、構って欲しい意志がじわじわと滲んでいた。


「リリス様、あの……よろしいのですか?」


 心配したルーシアが声をかけるが、リリスはちらりとドアを見てから頷いた。お茶会の前にお着替えをしたので、淡い緑のドレスにオレンジ色のリボンで黒髪を結い上げている。ドレスのアクセントにオレンジが使われたため、色を揃えたのだろう。


「今日のドレス、素敵ですわね」


「ありがとう、ルカ。皆も素敵よ」


 ルーサルカはワインレッドのドレスを着ている。尻尾が白茶なので、濃い色のドレスを選ぶことが多かった。逆にいつもパステルカラーを纏うルーシアは、本日オフホワイトの柔らかい色である。シトリーは明るい色を好むため、オレンジや黄色、赤が多い。今日は派手な黄色だった。


 少し離れた場所でお茶の用意を終えたレライエは、普段と違う紺色のドレスだ。オレンジ色の髪と対比する色なので、より髪が派手に見えた。白いワンピース姿のアンナが、先日覚えた収納魔法で持ち込んだお菓子を取り出す。


「これ、イフリートさんから預かったの」


 お茶会をする予定で持ち込んだ焼き菓子は、鮮やかだ。森のハーブや茶葉を練り込んだものから、砂糖を加工した甘いものまで。種類も色も多種多様な菓子が並び、少女達は目を輝かせた。ちょうどこの頃、魔王様とイザヤが風呂へ向かうが……彼女らは気づかない。


 一通りお菓子を選び終えたところで、レモングラスのお茶を飲みながらアンナが切り出した。


「性教育だったわね。どのくらいの知識があるのかしら」


「子供の作り方、ということか?」


 レライエが首をかしげる。竜人族の彼女は、多少の知識があるらしい。


「竜族や神龍族ならば卵、竜人族は人型で生まれる」


 うん? アンナが首をかしげる。この子達と常識がかなり違うのに、私の性教育でいいのかしら。もしかしたら子作りの方法自体が違う可能性もある。


「生まれる前は?」


「……そんなこと、口にしたら顔が腫れる」


 戦前の少女か! 突っ込みたくなるアンナは、溜め息を吐いた。魔族に迷信めいた言い伝えが多いのは理解していたが、裏を返せばレライエはある程度の知識があるようだ。


 ゆっくりお茶の香りを楽しんだルーシアが、お茶を一口飲む。それから赤く染まった頬を手で隠しつつ、そっと知識を披露した。


「あの……男の方の……を、お口に受け入れるんですよね」


 何この偏った知識。誰が教えたのよ。どう見てもまだ経験がない、後輩年齢の少女が言葉にする内容としては、ディープ過ぎた。刺激が強いのか、ルーサルカは尻尾を抱き締めて赤面中だ。ルーシアの言う「男の人の……」が舌を示すとは気づかず、アンナは焼き菓子を口に放り込んだ。


 口を空にしていたら、とんでもない言葉を吐き出しそうだった。口に受け入れるって、どこの口の話!? 混乱しながら、焼き菓子をお茶で流し込む。鼻に抜けるハーブの香りに少し落ち着きを取り戻した。


「子供は卵だし、たぶん後ろから産むんだと思う」


 シトリーの知識もなんだかおかしい。いや、鳥人族だから間違ってないのかもしれないが、子供を産む話より作る話がすっぽり抜けているのは、魔族特有の何かがあるのかと首をかしげた。


「リリスは知ってるわ」


 得意げにいうお姫様に、側近少女達は尊敬の眼差しを向けた。ふふんと喉をそらしたお姫様は、ご機嫌で爆弾発言をする。


「ルシファーがお風呂で身体を腫らしてから教育の話が出たのだから、あの腫れた部位が……」


 ごくりとアンナが息を飲む。もしかしたら無知だと思ったリリスが一番正解に近いかも知れない。


「爆発すると子供が出来るのよ」


「……違います」


 期待した分だけ、がっくりきた。しかしアンナが否定した直後、風呂場が爆発し……リリスはお腹をそっと擦りながら「子供出来たのかしら」と呟いて、さらに混乱させた。

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