魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

362. 人前で女の子の体重を量るのは

 消毒して交換が必要と言われ、大量に購入したのは覚えているが……確か月齢によって使い分けるんだったよな? 腕の中のリリスをじっと見て、今度は当時の育児手帳を引っ張り出した。日記代わりにつけた成長記録を読んで、次に体重計を用意する。


 広場の空きスペースでごそごそ物を取り出しては首をかしげるルシファーは、魔族の民にとって最高の目の保養だった。絶世の美貌、最強を示す純白の姿、驕り高ぶらず公平で人懐こい魔王が、手の届きそうな距離で愛らしい赤子を抱いている。その赤子が魔王妃になるリリス嬢だというのだから、誰もが注目していた。


 よく側近と城下町へ買い物に出かけるリリスは、親しみやすく慕われる王妃候補だったのだ。本人が知らないところで、絵姿が売り切れるほどの人気だった。その一端が彼女の振る舞いや愛らしい笑顔にあったのは、言うまでもない。


 ちなみに、販売対象のすべての絵姿は必ず見本が献上され、魔王ルシファーによって大切に保管されたのは当然である。


「今度は何を?」


 近づいたアスタロトに、ちょうどいいとリリスを一時的に預けた。いきなり赤子を渡されるが、ルキフェルとリリスで慣れたアスタロトは、意外にも慣れた仕草で横抱きにする。抱いた感覚から首が座っている年齢らしいと判断した。


「体重を量る」


「誰の?」


「リリスの」


「これだけの衆目の中で?」


「……何か問題か??」


 デリカシーのなさは天下一品、折り紙付きのルシファーはわからない。たとえ赤子であろうと、人前で体重測定を披露するのは間違っていると。しかもリリスは女の子なのだ。さすがに止めた方がいいだろう。将来「パパ最低」と言われて泣きたくなければ、だが。


「ルシファー様、リリス嬢は女の子ですよ?」


「そんなことは知ってる」


 堂々と胸を張って言い返したルシファーの鈍感さに、世話焼きのエルフ達が口をはさんだ。


「女の子の体重を人前で量るなんて、虐待ですよ」


「そうですわ。酷い」


 口々に女性に咎められ、理由がわからないままだが「問題がある」ことだけ理解したルシファーは、しょんぼりと手を差し出す。アスタロトから返してもらったリリスの頬を突きながら、ぼやいた。


「リリスが今何歳なのか、確かめようと思ったんだけど」


 言われて、周囲もルシファーの奇妙な行動の意味を理解した。おしゃぶりを与えようとして月齢不明に気づき、体重を量って成長記録と照らし合わせようとしたのだろう。もしリリスが単純にときを巻き戻しただけなら、過去の記録から年齢がわかる。


 行動の理由は理解したが、感情的に納得できない周囲の視線に負けて、ルシファーは体重測定を諦めた。肩を落としながら体重計を片づける。


「身長なども記録していたでしょう。そちらで比較したらいかがですか」


 代案を出したアスタロトに「そうか!」と嬉しそうに声を上げると、またリリスをアスタロトに抱かせようとした。大きなものを取り出すつもりだったようだが、今回はスムーズにいかなかった。


「いてっ」


 ぐいぐいと純白の髪が引っ張られる。何度も受け渡しされたリリスは、ぱっちりと大きな目を見開いて「だぁあ」と声を上げた。小さな紅葉の手が髪を掴んで口元に運ぶ。


「リリスはパパが大好きだもんな」


 自分に都合よく解釈したルシファーが抱き上げると、「きゃぁあ! だぁ」と声を上げて喜んだ。頬を緩めるルシファーの笑顔に、酔っぱらった女性の一部が悲鳴を上げて倒れ込む。旦那や婚約者、彼氏に回収される魔族女性に気づかぬルシファーは「可愛いなぁ」と目じりを下げて、色気を垂れ流した。

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