魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

359. 誤解も解けて、無事帰城

 後ろから羽交い絞めにしてベルゼビュートを引きはがしたのは、シトリーとレライエだった。


「やめてください。本当にリリス様なんです」


「魔王陛下は無実ですから!!」


 無実かどうかは疑問だとルキフェルは首をかしげながらも、ベルゼビュートの服の端を引っ張った。


「リリスが落ちちゃうよ」


「……本当に、本当にこの子がリリス様、なの?」


「「「「うん」」」」


 目の前で見ていた面々が一斉に頷いたことで、冷静になったベルゼビュートが掴んで揺すっていたルシファーの服を離した。驚愕で目を見開いたまま、赤子を凝視する。それからぎこちなく、ルシファーに声をかけた。


「ごめんなさい……襲ったの子供だと思って」


「まあ誤解しそうな状況ではあったが、お前がよくわかった」


 あまりの剣幕に圧されていたルシファーが、ようやく復活する。にやりと笑って意味深に呟けば、焦ったベルゼビュートがぺたんと座り込んで土下座した。


「ごめんなさい」


「気にするな。それより城を守ってくれてありがとう」


 全員がボロボロの姿だが、とりあえず欠けはない。膨大な魔力に圧し潰された白衣の魔族とキマイラは、少女達によって死亡が確認された。逆に人族の魔術師は生き残りがいる。どうやら魔力量が少ない人族の特性故、魔法陣の餌食にならず、また魔力の威圧に耐えたらしい。


「とりあえず……連れて帰るか」


 呟いたルシファーが背の翼を確認する。5枚に減ったが、リリスを喪わずに済んだなら満足だ。全部くれてやるつもりだったから、惜しむ気もない。数千年もすれば12枚揃うだろう。翼という形状の器に満ちた魔力を使いすぎただけだ。徐々に魔力が回復すれば、翼も元に戻る。


「ベルゼ、さっきの失礼の詫びに城門まで生存者を転移してくれ」


「え、ええ」


 あまりに軽い罰に驚きながらも、言われた通り生存者に限定した魔法陣を作って城門まで転移させた。取りこぼしがないか確認して、ベルゼビュートは一番最後に城門へ現れる。








「ううっ、陛下……」


 取り繕う気もないので、血塗れ薄汚れの姿で現れた一行に城門前は大騒ぎだった。あの魔法陣による魔力の高まりは魔族であれば、ほとんどの者が感知しただろう。そのため転移を使える種族は大急ぎで飛び、城下町のダークプレイスからも多くの住民が駆け付けていた。


 ドラゴンの羽ばたきやアラエル以外の鳳凰など幻獣の類も集まっている。大量の魔族が集まった情景は、即位記念祭以来だろう。


「ベール大公閣下!」


「アスタロト様」


 それぞれの部下も涙ながらに無事を喜ぶ。首の傷を治癒したばかりで貧血気味のアスタロトは、文官の突進にふらりと倒れかけた。軍人に囲まれるベールの血塗れの姿や、手首から血を流した痕があるルキフェルも痛々しい。


「無事でよかった」


 抱き着くアデーレの腕の中で、ルーサルカが「ただいま」と挨拶する。ルーシアも駆け付けた母親に抱き締められ、シトリーは双子の兄と喜び合った。親族のドラゴンに囲まれたレライエは、姿が見えなくなっていた。


「ああ……とりあえず。大きな種族は人型や小型に変化してくれ」


 風の魔法で拡散させたルシファーの声に、慌ててドラゴンや神龍が人型を取る。フェンリルや魔狼も大型犬サイズまで縮んで、雑然とした雰囲気が少し和らいだ。


「随分集まりましたね」


 慕われているようで何よりです、とアスタロトが苦笑する。見回した顔に浮かんだ心配の色を、笑顔に塗り替えるためにルシファーが提案した。


「なあ、せっかく集まったんだし……宴会でもするか?」

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