魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

230. オークの前にゴブリン退治

 確かに手前の小ぶりな山に近づくと、オークの気配がした。ついでに周囲にゴブリンも住んでいるらしい。不思議なことに、ゴブリンとオークは巣が近くても互いに干渉しない。何らかの理由があるのだろうが、その辺は面倒なので誰も解明しようとしてこなかった。メリットがまったくないからだ。


 見つけ次第に駆除の対象となるゴブリンとオークだが、あれだけ狩られているのに数が減らないのは魔の森の七不思議だった。


「ぐぎゃぁああ」


 彼らなりにコミュニケーションは取る能力はあるが、他の魔族との意思疎通がない。そのため人型で2足歩行するにも関わらず、魔物に分類されてきた。


 空に浮いているルシファーに気付いたゴブリンが声をあげると、複数の矢が飛んでくる。かるく右手を掲げて風で遮った。結界があるので受けてもいいのだが、気分的な問題だ。


 いくら目の前で弾かれると知っていても、愛するリリス目掛けて飛んでくる錆びた矢を弾かない理由にならない。矢が通じないとわかると、彼らは巣穴から次々と飛び出してきた。ほとんどの武器が錆びている。手入れをする頭はないし、奪う際に相手を殺すので血が鉄を腐食させるのだ。


「あの耳、変な形してるね」


「……せめて『変わった形』と表現しような」


 相手がゴブリンだから問題ないが、これが他の耳が尖ったエルフや獣耳関係の種族へ吐いた言葉なら、侮辱したと勘違いされる。普段から言葉遣いは大切なので、毎回小まめに注意して直すしかなかった。


「じゃあ、変わった形のお耳だね」


 素直な幼女は、直されたまま口にする。ご褒美に撫でてやってから、ゴブリン達を炎で焼き払った。切り裂いてもいいのだが、絵的に残虐だ。火あぶりも十分酷いのだが、強烈な高温の火炎で焼くため臭いが気にならないし、一瞬で炭になるから見た目も我慢できる範囲だった。


「焼いちゃうの?」


「切ると臭いし、雷は周囲の別の魔物や獣が危険だから使わないんだ」


 ことあるごとに理由をきちんと説明して、反復学習としてリリスに理解させる。ゴブリンは駆除対象だから雷で貫いても構わないが、雷は周囲に飛び火するのだ。罪のない獣や木を落雷で痺れさせたり、焼いたりするのは間違っていた。


 ルシファーが雷を多用するのは、人族を相手に砦などの建物を壊してみせる時だ。少数の敵であったり、開けた場所で周囲への被害が心配ない場合、あとは建物を壊すときはよく使ってきた。


「リリスもやる!」


「いや、これはパパのお仕事だぞ」


 遠まわしにダメだと伝えたが、リリスは巣穴の洞窟から顔を出した大きなゴブリンを指差した。


「どーん!!」


 声と同時にゴブリンが爆発する。見事に木っ端微塵になったリーダーの姿に、残った数匹のゴブリンが逃げ出した。リリスは逃げる彼らに興味はないらしい。しかし逃がすと知恵をつけて面倒なため、ルシファーがしっかり焼き払った。


「リリス、パパのお仕事だから手を出したらダメだろう」


「違うよ、手を出したんじゃなくてお手伝いだもん」


「お手伝いなら雷使わないようにしてね」


「わかった。今度は焼く」


 頷いているが、納得されるのも違う気がした。そうじゃない、まだ手伝わなくていいのに。説得の方向が途中でおかしくなった自覚はあるが、あとでアスタロト達が修正するだろうと諦めた。


 最近のリリスは言葉数が増えて、口達者になってきた。この口答えのレベルが高いのは、側近であるベールやアスタロトの影響が大きいはずだ。可愛いリリスがアスタロト女版みたくなったら……想像だけで、軽く城を全壊出来る。


「お仕事終わり?」


「違うぞ。これはおまけで、本命はオークだ」


「豚肉さん!」


「雷禁止だからな」


 念を押して、ゴブリンの巣から山の方へ移動する。地脈がうねりながら流れる先で、不自然な魔力を拭くうす感知した。これがオークの巣で間違いなさそうだ。


「見つけた」


 さっさと終わらせて、大きな街でリリスと買い食いするぞ! 魔王にしては情けないが、パパとしては立派な目標へ向かって、ルシファーは一気に下降した。


 巣穴を襲われたと叫んだ見張りの声に、オーク達が武器を片手に飛び出してくる。頭上から狙い撃ちで倒してもいいが、オークは魔獣達の食料となるため黒焦げはもったいなかった。


 焼かずに切ろう。幼女を抱えた魔王を取り囲むオーク達は、そんな思惑も知らずに襲い掛かった。

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