魔王様、溺愛しすぎです!
219. 仲良くなれる子を見つけてくれたら
「気になるのか?」
「うん……可愛いんだもん」
アスタロトとルシファーが顔を見合わせた。意味がよくわからない。人見知りではなく、ただ照れて隠れただけなのか? 言い終わったリリスはまた後ろに隠れてしまった。
「リリス、仲良くなりたいなら隠れてもダメだ。きちんとお話しないと彼女達は帰ってしまうぞ」
「やだっ!」
大きな声で否定して飛び出してくる。途端に、段下の少女達から「可愛い」「お人形さんみたい」と声が聞こえた。再び照れたリリスが顔を黒衣に押し付ける。
「陛下、これはもう……」
「ああ。子供だけで部屋に放り込もう」
勝手に交流を深めてくれそうだ。親が心配するより、子供同士のルールで進めてもらった方が結果につながるだろう。
まだ顔を埋めているリリスを連れて、段を下りる。同じ目線になると、明らかにリリスが一番小さかった。どうやら最初の1組目は年上ばかりらしい。
「挨拶は省いて、子供だけ一緒に遊ばせよう」
「「「仰せのままに」」」
親が仰々しいので、子供達も慌てて頭を下げる。苦笑いしたルシファーが手招きすると、リリス専属侍女のアデーレが近づいた。一礼してリリスと右手を繋ぐ。
「では、皆様はこちらへ」
照れて赤い頬を左手で隠しながら歩いていくリリスに、他の子がついていった。その後姿を見送ると、ほっとして肩から力が抜ける。
「よかったぁ……人見知りじゃなくて」
思わず漏れた本音に、集まった親達の顔も綻んだ。微笑ましいのはもちろんだが、挨拶をする前に我が子達が候補から外されるのかと冷や冷やした。
魔王妃候補は現在1人で、他の候補を持たないと宣言した魔王により、ほぼ地位が確定している。リリスに嫌われることは、種族の未来にとって悪影響しかないのだ。
「陛下、発言をお許しください」
「ん? 気にせず話せ」
礼儀正しく作法通りに尋ねた侯爵家の獣人に頷く。彼の尻尾と耳は狐系の種族だと示していた。一礼して許可の礼を告げると、優しそうな笑みを浮かべて話しだす。
「リリス姫様は、種族を気にされないお方なのですな」
「そうだな。鱗も外見も気にしないタイプらしい」
ルシファーが答えると、鱗がある女性が嬉しそうに微笑んだ。彼女の子も魚のエラに似た耳がついているので、海か湖に棲む一族出身だと推測された。
「鱗を嫌う方は魔族でも多いので、ほっとしましたわ」
「獣人もその点では心配だったが、平気そうだ」
侯爵とは別の兎耳の青年が安堵の息をつく。親というより兄に近い年齢の付き添いだった。親族であれば誰でも付き添いが可能なので、兄弟の可能性が高い。
「魔力量も外見も問わない募集でしたので、種族内での選抜も激しくて大変でした」
赤いピアスの女性はくすくす笑いながら、内輪話として選抜の苦労を口にした。短い期間での募集だったこともあり、各種族とも子供を集めて大騒ぎだったようだ。
吸血系種族は人族に近い。コウモリの翼を持つのは一部のみで、同族の中でも限られた上位者の証だった。外見で区別をつけるため、彼らは自主的に赤いピアスをしていることが多い。彼女もそうなのだろう。
「あの子の周辺は種族の坩堝だ。どんな外見でも『当たり前だ』と受け入れる土壌は作ってあるからな。偏見はない」
言い切ったルシファーは嬉しそうに美貌を緩ませる。愛するリリスを褒められたことはもちろん、どの親も好意的に彼女を受け止めている事実が嬉しくて仕方ないのだ。
「あとは仲良くなれる子を見つけてくれたら、それでいい」
異口同音に返る同意に頷いたルシファーだったが、アスタロトは渋い顔だった。数手先を見通す有能な側近は、今までの経験を踏まえて本音を零す。
「リリス姫の性格ですと、選ばずに全員と仲良くするのではありませんか?」
ありそうな嫌な予言に、この場の全員が顔を引きつらせた。
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