魔王様、溺愛しすぎです!

necoaya

176. うちの子が一番可愛い

 四大公が全員集まった上に魔王が顔を出すとあって、卒園式は一級正装の貴族達が並んでいた。


 子供の卒園なので、本来は盛装程度でよかった気もするが、それでは失礼だと彼らがあれこれ忖度そんたくしちゃった結果だ。魔王専用席とか作られている。


 卒園する子供達の成長具合を親に披露するための劇は、立派なひな壇の観劇ホールが出来ていた。保育園の裏手に作られた会場は、どうやらリリスが誘ったドワーフの力作らしい。幼いリリスによく手を振っていたのは知っているが、そこまで仲がいいとは知らなかった。


 仮設かりしつらえなので、木材で作られたステージと観客席。蔓で結んであるがしっかりしている。ちなみに建設材料の木材と蔓を提供したのは、これまたリリスに誘われたエルフだった。よほど嬉しかったのだろう、魔の森が禿げるんじゃないかという短期間で大量の伐採が行われた。


 魔の森は名の通り、伐採されてもなぎ倒されても数日で元通りになるので、最終的に問題にはならなかった。しかし、大量に伐採する際は計画書を作るようエルフに義務付けた、と呆れ顔のアスタロトに報告されている。


 通常の卒園式と同じように賞状を渡され、一人ずつ前で礼をしてステージ上の段を降りる。繰り返される子供達の微笑ましい姿を、親も参加者も柔らかい表情で見守った。


 ルシファーもリリスの可愛い姿を目に焼き付けるため、最前列に陣取る。他者の迷惑など考えない親バカが動いたことで、大公が後ろに続き、大型犬サイズになったヤンがピヨ付きで追いかけた。他の諸侯らが取り巻き、まるでパーティ会場のような騒ぎだ。


 卒園証書の授与が終わると、劇に出る子供達が着替えに向かったため、親は優雅に雑談に興じる。


「リリス姫はさすがですな」


「本当にお可愛らしくて、素敵なお嬢様ですわ」


 褒められるたびに微笑んでご機嫌のルシファーに、貴族達がこぞってお祝いを口にした。


「姫のご卒園おめでとうございます」


「ありがとう」


 鷹揚に受け止める姿は執務時と同じ。どこか近寄りがたいオーラを放ちながら、ルシファーは内心でそわそわしていた。


 もう少ししたら、最愛のリリスが劇を見せてくれるのだ。一生懸命練習した成果を、オレに見せてくれる! 気持ちは天に昇りそうだが、うっかり昇天している場合ではない。


 見た目は立派だが、中身はでれでれの魔王への挨拶が一段落した頃、ようやく子供達の準備が整った。開演を知らせるベルが鳴り、それぞれが割り当てられた席に着く。


 半分ドーム状態で影を作り出す劇場のステージに数人の子供が飛び出してきた。


 明るい日差しの中、ストーリーが進んでいく。なんとも予想外というか、逆に想定内と考えるか。劇の内容は初代勇者を退けた魔王の話だった。


 幼子にとって親が読み聞かせてくれる童話の中に必ず混じっている、親しみ深いストーリーだ。子供が理解しやすく、皆が知っている話を選んだ結果だと分かっているが……当事の関係者としては気恥ずかしい。


 大公達が顔を見合わせて苦笑する中、魔王ルシファーは話の内容そっちのけでリリスを探していた。


 ブレない安定のリリス至上主義で、ルシファーは中盤から登場したリリスの姿に頬を緩める。腰まで届く黒髪を後ろでポニーテールにまとめ、白い肌を興奮で少し赤く染めていた。人族の騎士のような格好に着替えている。


 剣を構えて、魔王役の少年と向かい合う姿は姫騎士のようで凛々しい。親バカ承知で「うちの子が一番可愛い」と呟くと、周囲に集まっていたドワーフやエルフが「「本当に!」」と賛同してくれた。

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