ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

「びっちな幼なじみが、わたしとおにーちゃんの新婚生活を邪魔してきます。」


いやなタイトルだな……



「一応、パパとママからの許可はもらってるし。大学もみかなみたいにやめたりはしないけど、まだしばらくオンライン講義が続きそうだし。ノーパソ持ってきてるし」

「ひろゆきお兄ちゃんとえっちしたいとか、そういうの以外なら、わたしのお願い聞いてくれるんだよね?」


絶対に弱みを握られてはいけない相手に、もしも弱みを握られてしまったら、一体どういうことになってしまうか……

皆さんは知っていますか?

わたしはこのときまで知りませんでした。


「わたし、今日からしばらく、ここに住んでもいい?」


まさか、びっちな幼なじみが、わたしとおにーちゃんの家に居座り、ふたりだけのいちゃいちゃでらぶらぶな新婚生活を邪魔してくるだなんて……


と、大親友の佳代ちゃんのことを、一瞬でもそんな風に思ってしまった自分が、わたしはすごく恥ずかしかった。


「わたしにも、ハロウィンの準備手伝わせてよ」

佳代ちゃんは、わたしもいつのまにかすっかり忘れていたハロウィンの準備の手伝いをしたいと言ってくれたのです。

うん。だからって、しばらくうちに住むとか、意味わかんないよね!
だって佳代ちゃんち、うちから徒歩5分だし!!

やっぱ、わたしとおにーちゃんの新婚生活を邪魔したいだけじゃねーか!!!!

メドローア!!!!!


「みかな、ひろゆきお兄ちゃんとはじめてハロウィンするんだって張り切ってたけど、この1ヶ月、そんな余裕はなかったんじゃないかなって思ってさ」


でも、確かに佳代ちゃんの言う通りでした。

わたしはおにーちゃんとはじめてふたりで過ごすハロウィンをとても楽しみにしていました。

だけど、1ヶ月前におにーちゃんとその下準備のためにダイソーにハロウィングッズを買いに行ったとき、なぜかおにーちゃんが男の娘に目覚めてしまって……

それから、この1ヶ月は、本当にいろんなことがあったから……

おにーちゃんと付き合うことになって……
毎日いっぱいえっちなことをして……

その4日後にはプロポーズをされて……
毎日いっぱいえっちなことをして……

お役所に提出はしなかったけど、ちゃんと婚姻届を書いて、佳代ちゃんのパパとママに証人になってもらって……
毎日いっぱいえっちなことをして……

わたしの誕生日には結婚式をあげて……
毎日いっぱいえっちなことをして……

わたしはおにーちゃんの連れ子のりさちゃんたちとも家族になれて、りさちゃんたちはわたしを「まま」と呼んでくれるようになって……
それから、毎日いっぱいえっちなことをして……

そして、わたしは気づいたのです。


わたし、おにーちゃんとえっちしすぎ!!


日常生活に支障が出るレベルに……


「そりゃ、まぁ、大好きなお兄ちゃんにあんなに気持ちよさそうなエッチをしてもらえてたら、さすがのみかなもオナニー覚えたての猿みたいになるよね。
あいつら死ぬまでオナニーする勢いでオナニーするらしいけど」


あのね? 佳代ちゃん。それ、わたしが自分で、

「わたし、おにーちゃんとえっちしすぎかも~(はーと)」

って思うのは全然いいし、むしろ、

「おにーちゃんとするえっちが大好きな、そんなわたしかわいい!」

って思えるんだけど、佳代ちゃんから言われると、なんかむかつくから。
しかもお猿さん呼ばわりされたし。ちょーむかつく。


「朝からオナニーオナニー言ってんじゃねーよ! くそびっち!!」

「オナニーだけにイッてんじゃねーよって?
うまい! 座布団一枚!! よっ、楽太郎!」

「楽太郎じゃねーし!
大体、楽太郎っていつの時代の話だー!! 今は令和2年だぞ!!」

「いやいや、楽太郎は円楽になっても楽太郎でしょ。
こぶ平だって、いつまでたってもこぶ平だし、ヒロミのパシりのイメージと、タッチのキャッチャーの声やってたイメージしかないし」

確かに、こぶ平はいまだにこぶ平……
じゃなくて!

佳代ちゃん? それ、2001年生まれの大学1年生が言う台詞じゃないからね?

「っていうか、朝から下の階まで聞こえるくらいのあえぎ声出してエッチしまくりの人に、たかがオナニーぐらい連呼したって怒られる筋合いはないと思うんだけどな~」


ぐぬぬぬ……

確かに、熱にうなされながらLINEで佳代ちゃんに助けを求めたくせに、丸2日も看病してもらっておいて、すっかりそのことを忘れて、風邪が治った途端おにーちゃんと朝からえっちしまくりとか……
何も言えない……むしろ、

何も言えねぇ~!!!


さすが幼なじみ……
わたしのトリセツをちゃんと持ってやがる……
歌手違うけど、前髪も切りすぎてやろうかな……


ちなみにおにーちゃんはどこに行ったの? と、お思いの読者の皆さまへ。


おにーちゃんはちゃんと、リビングにいます。

いましたが、完全に空気になってました。

ねぇ、おにーちゃんはヴァンなの? わたし、パンネロなの? わたし、おにーちゃんはバルフレアだと思ってたよ……
うじうじ悩む性格はクラウドとかスコール並みにめんどくさいけど。まぁ、そこがかわいくて仕方がないんだけどね!

あ、そっか。
おにーちゃん、わたしと佳代ちゃんの会話に入りたくても入れないんだよね……
苦手だもんね、そういう大縄飛び的なこと。運動音痴だから大縄飛びも苦手だし。

おにーちゃんは、思春期の頃から女の子と話すのが苦手で、どういう脳構造かまったくわかんないんだけど、わたし以外の女の子とは3日会わないだけで人見知りが発動するのです。
もう、ほんとにかわいいんだから!!


「ちゃんとハロウィンは、ふたりきりにしてあげるからさ~。
ね? ふたりのエッチをもっと見させ……わたしにもハロウィンの準備手伝わせてよ~。
ハロウィンっていうか今月末で、この第三部が最終回の予定なのに、第四部があるかどうかもまだわかんないから、もっとわたしの出番がほしいんだよ~」


すっげー本音、来たー!!

電車男とか仮面ライダーフォーゼくらいの勢いで本気の中の本音来たー!!!


こいつ絶対、ハロウィン当日もうちにいるだろ……
お菓子くれなきゃいたずらするぞ~的な勢いで、おにーちゃんにえっちなことする……
おにーちゃんのおちんちん、わたしのざびえるをぺろぺろしたり、ちゅぱちゅぱしたりする……


第四部、書くかどうかまだわかんないけど、第四部を書くとしたら佳代ちゃんが主人公で舞台は杜王町にするね?
だからハロウィンが終わったら、仙台に引っ越してね?
それで、びっちとびっちはひかれあう、みたいなよくわかんない戦いに巻き込まれたり、連続殺人事件を解決したりするといいと思う!!


「うん、わかった。じゃあ、佳代ちゃん、今日から部屋の飾り付け手伝ってね?」

だから、わたしは言いました。

確かにハロウィンの準備は、おにーちゃんはおしゃれなくせに部屋の飾り付けとかそういうセンスは皆無で、わたしひとりじゃ大変そうでした。
ハロウィンまで2週間くらいしかないから、きっともうダイソーやセリアのハロウィングッズは良いものは売り切れちゃってるだろうし、でも佳代ちゃんがいてくれたらきっと、このリビングの飾り付けは、たぶんわたしがイメージしてるようなものができると思ったから。

「やったー! じゃあ、今日からとりあえず一週間よろしくね! お兄ちゃん!!」

とりあえず……?

ていうか、さりげなくおにーちゃんの腕におっぱい押し付けてるし……

わたしじゃ小さすぎてできないようなことを、あえてわたしの目の前で……

まぁ、わたしの目の前以外でしてるのが後になって発覚したりしたら、事故にみせかけて殺っちゃうけどね!

「うん、よろしくね、佳代ちゃん。
ほら、おにーちゃんも! いつまでも空気主人公してたり、佳代ちゃんにおっぱいを押し付けられて顔真っ赤にして固まってないで、ちゃんと佳代ちゃんにお願いして」


そんな風にして、わたしたちの新しい生活? は始まったのですが、わたしは不安しかありませんでした……


          

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