ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

「もっと、おにーちゃんとえっちした(い)。②」

おにーちゃんは、なんだかとても、さびしそうで、つらそうで、今にも泣き出してしまいそうな顔をしていました。

「わたし、いけないことした? だめだった?」

「みかながいい……もう、みかなじゃなきゃいやだ……」

「ごめんね? わたし、みかなだよ? ちゃんと、みかなだよ?」

「他の女の子は、もういやなんだ……」

わたしは、ちょっとおふざけが過ぎたかもしれません。
かもしれない、じゃなくて、おふざけが過ぎました。

おにーちゃんに、こんな悲しそうな顔、つらそうな顔、二度とさせたくなかったのに。

わたしは、胸についた名札をはずして、おにーちゃんの手からハンディカムをはずしてあげて、それから、園児服のボタンをはずしていって、

「おにーちゃん、ごめんね。ごめんなさい」

ちいさな胸に、おにーちゃんの顔をうずめるように、抱きしめました。

いつもなら、おにーちゃんは、おっぱいをほしがってくれるのに、してくれませんでした。

「きらいになっちゃった?」

わたしは、こわくて、しかたがありませんでした。

おにーちゃんは、何もお返事してくれなかった。

おにーちゃんに嫌われてしまったら。

このしあわせが、全部壊れてしまったら。

わたしは、たぶん、もう生きてはいけない。

わたしがいなくなってしまったら、おにーちゃんは?

りさちゃんたちがいたら、生きていける?

でも、りさちゃんたちは、おにーちゃんがほんとにだめになってしまったときに、何もできないことがつらいって言ってた……

こんなことになってしまうくらいなら、りさちゃんたちにわたしの体を全部あげてしまえばよかった。


「それは、だめだよ」

おにーちゃんは、ようやくお返事してくれました。

「りさたちに、全部あげちゃだめ。みかながいてくれなきゃだめ」

どうして、おにーちゃんは、わたしの考えてることがわかるんだろう?

わたしはわかってる気になってただけで、喜んでもらいたくてしたことで、おにーちゃんを悲しませてしまうのに。

「みかなのことを、ぼくは嫌いになったりはしないよ。でも、今のはだめ」

「ごめんなさい」

「嫌いになったりしないし、ぼくはみかなのことがこれから先もずっと好きだよ」

「わたしも、おにーちゃんのことがこれから先もずっと好き……ずっとわたしだけを見てほしい……」

「その服、すごく似合ってる。小さい頃のみかなを思い出すよ」

「わたしね、5歳のときにはもう、おにーちゃんと結婚するって言ってたでしょ?」

「うん」

「おにーちゃんに、今のわたしだけじゃなくて、中学生や高校生の頃のわたしや、小学生の頃のわたし、5歳の頃のわたし、全部を抱いてほしかったの」

「わかってたよ。みかなは、ぼくの初恋が誰だったか、いつだったか、知ってる?」

「……わたしじゃないよね?」

「みかなだよ。ぼくのお嫁さんになりたいって言ってくれた、5歳のみかな。あのとき。ぼくも、みかなをお嫁さんにしたいって思った」

「……ほんと? 嘘じゃない?」

「ほんとだよ。……だからね」


ぼくの初恋の、5歳のみかなを抱かせて。


おにーちゃんは、優しく優しく、わたしを抱いてくれました。

本当に5歳のときのわたしを抱くみたいに。

5歳の女の子に、こんなことはしちゃだめなんだけど……だから、比喩だよ? それくらい、優しかったっていう。

そして、いっぱいいっぱい、わたしのなかに、おにーちゃんのかけらをだしてくれました。


「また、5歳のわたしを抱いてくれる?」

「うん。抱きたい。抱かせて」

「おにーちゃん、わたし、もっとしたい。
もっともっとしたい。
だからね、」

そして、わたしは言いました。


「今度は、10歳のわたしを抱いて?」




          

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