ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。
番外編「わたしを妹カフェに連れていったおにーちゃんが、妹カフェの偽の妹にデレデレになるわけがない。とは限らない」④
その後、もうひとつあったゲームも、みかな氏の圧倒的すぎるまでの完全勝利に終わりました。
ぼくたちはそろそろ店を出ようとお会計をすまそうとすると、
「会員になってくれたおねえちゃんはね、一回目のおかえりなさいのときだけ特別に妹と写真がとれるんだよ」
つかさちゃんがそう教えてくれました。
お兄ちゃんはだめみたいでした。
「おねえちゃん、どの妹と写真がとりたい?」
それはもうもちろん、
「つかさちゃんで」
と、ぼくではなく、なぜか、みかな氏がそう言いました。
「え? ほんと? わーい、つかさうれしいな。えへへ」
「だって今日はつかさちゃんのおかげですっごく楽しかったんだもん。ありがとね」
りあちゃんがチェキをもってきてくれました。
つかさちゃんとみかな氏が並んで写真を撮ってもらうのを、少し離れた場所からうらましそうにぼくは眺めました。
ポイントだ……
ポイントをためなくちゃ……
撮影が終わったあと、つかさちゃんはみかな氏あてのメッセージを写真に書き、シールを貼ってくれたりしました。
ふたりが楽しそうに写真にシールを貼るのを、少し離れた場所からうらましそうにぼくは眺めました。
ポイントだ……
ポイントをためなくちゃ……
呪詛の言葉のようにぼくは繰り返していたのです。
その後ぼくたちはアンケートに答えて、店を出ました。
「行ってらっしゃい、お兄ちゃんお姉ちゃん」
妹たちから口々にそう言われ、つかさちゃんは店の外まで見送ってくれました。
「また帰ってきてねお兄ちゃん」
「うん、また帰ってくるよ。つかさちゃんがいる日にまた来るから」
「……約束だよ?」
「うん、来月になっちゃうかもしれかいけどまた絶対来るからね。約束するよ」
ぼくたちはつかさちゃんに別れを告げて、妹カフェ う○ぎ組をあとにしたのでした。
お店のテーブルの上にはぼくたちが書いたアンケートが残されていたはずです。
「Q4 ポイント交換で妹にしてもらいたいことは何ですか?」
そこにはそんな問いがありました。
ぼくはそこにこんな回答を書き記したのです。
「つかさちゃんに、ご飯を食べさせてもらいたいです」
************************************
ここまでが、何年か前に、おにーちゃんがブログやSNSに書いた体験レポート。
読み返してたら、なーんか、かなり腹が立ってきたんだけど……ま、いっか。
結論から言うと、おにーちゃんはつかさちゃんとのその約束を守りませんでした。
お店もいつの間にか閉店してたみたい。
妹カフェをあとにしたわたしたちはその後、著名人も足しげく通うという40年の老舗うなぎ料理店でうなぎを食べたり、夜の浜松駅前のイルミネーションを楽しんだりしました。
さわやかのハンバーグは、食べに行けなかったけど。
ふたりで、手を繋いで。
まるで、恋人のように。
でも、その頃わたしはまだ中学生で、おにーちゃんは大学生。
その頃のわたしは少しだけ背伸びをして、おにーちゃんと一緒に見た、嵐の桜井翔くんが主演の、ドラマじゃなくて映画の方の「ハチミツとクローバー」に出てきた蒼井優ちゃんが演じていたはぐちゃんみたいな感じになろうとしていました。
翔くんが演じる竹本くんみたいに、おにーちゃんも蒼井優ちゃんのはぐちゃんに一目惚れしてたのがわかったから。
今でも普段のわたしのファッションや髪型はあんまり変わってないんだけど。
きっと恋人には見えなかったろうな。
今ならちゃんと、恋人に見えるかな。
「つかさちゃん、おにーちゃんと話すたびに他の子に顔が赤いよって、やたら言われてたね」
「うん……少しだけ、もしかして、とか思っちゃったよ」
おにーちゃんは笑ってそう言いました。そんなことあるわけないのにね、って。
「あるわけないわけじゃないと思うよ。
わたし、つかさちゃんがおにーちゃんに一目惚れしちゃったんだと思って、おにーちゃんをとられちゃうんじゃないかって、正直怖かった」
「だから、あんなに完膚なきまでにやっちゃったの?」
「それ! もー、なのに、おにーちゃん、あの子の応援ばっかりするし……
わたし、ずっと泣きそうだったのに気づいてくれないし……」
「ごめんね……あのお店にはもう行かないよ」
「うん、行かないでほしい……
あの子はきっと悪い子じゃないと思う。
かわいいし、おにーちゃんとお似合いだと思う。
でも、おにーちゃんをおにーちゃんって呼んでいいのは、わたしだけじゃなきゃいや」
「そうだね、みかなは、ぼくのたったひとりの大切な妹だもんね」
そのときのおにーちゃんは、まるで自分に言い聞かせるように言いました。
――みかなは、ぼくのたったひとりの、大切な妹。
もしかしたら、わたしはそのときに、おにーちゃんにそんな暗示のようなものをかけてしまったのかもしれません。
妹だから、っていう。
おにーちゃんは、それから、よし、と言って、
「コンセプトカフェめぐりも、もうこれで最後にするよ」
そう言いました。
「それは別にやめなくたっていいよ?」
わたしはそう言ったけど、
「どのお店のメイドさんや、巫女さんや、それから妹より、みかなの方がかわいいってきづいちゃったから。
かわいく見えるのは、衣装とかのおかげ。
おしゃれといっしょで、全体的な雰囲気なんだよね。
遅いかもしれないし、今さらって思うかもしれないけど、ぼくにとっては、みかなが世界で一番かわいい女の子だから」
そんな風におにーちゃんに言われたのは、このときがうまれてはじめてのことでした。
「わざわざこんなに遠くまできたり、名古屋まで出たりしなくても、一番かわいい女の子が、いつも一番ぼくのそばにいてくれるんだから、それに気づけたから、だからもういいんだ」
おにーちゃんはそう言ってくれて、わたしはすごく嬉しかった。
でも、この後にすぐ、おにーちゃんは新しい彼女を作ることになる。
わたしが、呪いのような暗示をおにーちゃんにかけてしまったから。
          
ぼくたちはそろそろ店を出ようとお会計をすまそうとすると、
「会員になってくれたおねえちゃんはね、一回目のおかえりなさいのときだけ特別に妹と写真がとれるんだよ」
つかさちゃんがそう教えてくれました。
お兄ちゃんはだめみたいでした。
「おねえちゃん、どの妹と写真がとりたい?」
それはもうもちろん、
「つかさちゃんで」
と、ぼくではなく、なぜか、みかな氏がそう言いました。
「え? ほんと? わーい、つかさうれしいな。えへへ」
「だって今日はつかさちゃんのおかげですっごく楽しかったんだもん。ありがとね」
りあちゃんがチェキをもってきてくれました。
つかさちゃんとみかな氏が並んで写真を撮ってもらうのを、少し離れた場所からうらましそうにぼくは眺めました。
ポイントだ……
ポイントをためなくちゃ……
撮影が終わったあと、つかさちゃんはみかな氏あてのメッセージを写真に書き、シールを貼ってくれたりしました。
ふたりが楽しそうに写真にシールを貼るのを、少し離れた場所からうらましそうにぼくは眺めました。
ポイントだ……
ポイントをためなくちゃ……
呪詛の言葉のようにぼくは繰り返していたのです。
その後ぼくたちはアンケートに答えて、店を出ました。
「行ってらっしゃい、お兄ちゃんお姉ちゃん」
妹たちから口々にそう言われ、つかさちゃんは店の外まで見送ってくれました。
「また帰ってきてねお兄ちゃん」
「うん、また帰ってくるよ。つかさちゃんがいる日にまた来るから」
「……約束だよ?」
「うん、来月になっちゃうかもしれかいけどまた絶対来るからね。約束するよ」
ぼくたちはつかさちゃんに別れを告げて、妹カフェ う○ぎ組をあとにしたのでした。
お店のテーブルの上にはぼくたちが書いたアンケートが残されていたはずです。
「Q4 ポイント交換で妹にしてもらいたいことは何ですか?」
そこにはそんな問いがありました。
ぼくはそこにこんな回答を書き記したのです。
「つかさちゃんに、ご飯を食べさせてもらいたいです」
************************************
ここまでが、何年か前に、おにーちゃんがブログやSNSに書いた体験レポート。
読み返してたら、なーんか、かなり腹が立ってきたんだけど……ま、いっか。
結論から言うと、おにーちゃんはつかさちゃんとのその約束を守りませんでした。
お店もいつの間にか閉店してたみたい。
妹カフェをあとにしたわたしたちはその後、著名人も足しげく通うという40年の老舗うなぎ料理店でうなぎを食べたり、夜の浜松駅前のイルミネーションを楽しんだりしました。
さわやかのハンバーグは、食べに行けなかったけど。
ふたりで、手を繋いで。
まるで、恋人のように。
でも、その頃わたしはまだ中学生で、おにーちゃんは大学生。
その頃のわたしは少しだけ背伸びをして、おにーちゃんと一緒に見た、嵐の桜井翔くんが主演の、ドラマじゃなくて映画の方の「ハチミツとクローバー」に出てきた蒼井優ちゃんが演じていたはぐちゃんみたいな感じになろうとしていました。
翔くんが演じる竹本くんみたいに、おにーちゃんも蒼井優ちゃんのはぐちゃんに一目惚れしてたのがわかったから。
今でも普段のわたしのファッションや髪型はあんまり変わってないんだけど。
きっと恋人には見えなかったろうな。
今ならちゃんと、恋人に見えるかな。
「つかさちゃん、おにーちゃんと話すたびに他の子に顔が赤いよって、やたら言われてたね」
「うん……少しだけ、もしかして、とか思っちゃったよ」
おにーちゃんは笑ってそう言いました。そんなことあるわけないのにね、って。
「あるわけないわけじゃないと思うよ。
わたし、つかさちゃんがおにーちゃんに一目惚れしちゃったんだと思って、おにーちゃんをとられちゃうんじゃないかって、正直怖かった」
「だから、あんなに完膚なきまでにやっちゃったの?」
「それ! もー、なのに、おにーちゃん、あの子の応援ばっかりするし……
わたし、ずっと泣きそうだったのに気づいてくれないし……」
「ごめんね……あのお店にはもう行かないよ」
「うん、行かないでほしい……
あの子はきっと悪い子じゃないと思う。
かわいいし、おにーちゃんとお似合いだと思う。
でも、おにーちゃんをおにーちゃんって呼んでいいのは、わたしだけじゃなきゃいや」
「そうだね、みかなは、ぼくのたったひとりの大切な妹だもんね」
そのときのおにーちゃんは、まるで自分に言い聞かせるように言いました。
――みかなは、ぼくのたったひとりの、大切な妹。
もしかしたら、わたしはそのときに、おにーちゃんにそんな暗示のようなものをかけてしまったのかもしれません。
妹だから、っていう。
おにーちゃんは、それから、よし、と言って、
「コンセプトカフェめぐりも、もうこれで最後にするよ」
そう言いました。
「それは別にやめなくたっていいよ?」
わたしはそう言ったけど、
「どのお店のメイドさんや、巫女さんや、それから妹より、みかなの方がかわいいってきづいちゃったから。
かわいく見えるのは、衣装とかのおかげ。
おしゃれといっしょで、全体的な雰囲気なんだよね。
遅いかもしれないし、今さらって思うかもしれないけど、ぼくにとっては、みかなが世界で一番かわいい女の子だから」
そんな風におにーちゃんに言われたのは、このときがうまれてはじめてのことでした。
「わざわざこんなに遠くまできたり、名古屋まで出たりしなくても、一番かわいい女の子が、いつも一番ぼくのそばにいてくれるんだから、それに気づけたから、だからもういいんだ」
おにーちゃんはそう言ってくれて、わたしはすごく嬉しかった。
でも、この後にすぐ、おにーちゃんは新しい彼女を作ることになる。
わたしが、呪いのような暗示をおにーちゃんにかけてしまったから。
          
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