ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

「おにーちゃんと結婚したい!! ①」

2001(平成13)年10月9日、お昼の12時24分、わたしはこの世界に生まれました。

巳(へび)年の、天秤座で、血液型はA型(AO)。

2人目だったからか、おかーさんはおにーちゃんのときほど、つわりなどもひどくはなく、出産も比較的安産だったそうで、産後は母子共に健康だったそうです。

出産をきっかけに今まで食べられなかったものが食べられるようになったり、逆に大好きだったものが食べられなくなったりすることがあるみたいなんだけど……

おかーさんはわたしを産んでくれたあと、大好きだった牡蠣を食べると、味はすごく好きなのに、気分が悪くなって吐いてしまうようになったそうでした。
牡蠣だけじゃなく、貝類全般が無理になってしまったそうです。

わたしは牡蠣大好きだけどね!


わたしが生まれたときの体重は2.88kg。

女の子の新生児の体重より、ほんの少しだけ軽かったそうです。


おとーさんとおかーさんが、わたしにつけてくれようとしていた名前は、「麻衣(まい)」。

だけど、わたしには五つ年上のおにーちゃんがいて、まだ8歳だったおにーちゃんも、わたしの名前を考えてくれていました。

それが、「みかな」でした。

おにーちゃんは、その頃からちょっと変わった子だったらしく……

よその家の子が、記憶力がすごくいいそれくらいの年頃に、世界中の国の名前や国旗だったり、車や電車の名前を覚えたりしているときに、おにーちゃんは日本神話に出てくる神様の名前をたくさん覚えていたそうです。

長いし、似たような名前ばかりだし、舌を噛みそうになるような名前ばかりなのに。
そもそもなんで日本神話? 古事記とか日本書紀とか、うちにあったの? いまだに謎なんだけど。おにーちゃんもよく覚えてないっていうし。


わたしたち家族の苗字は、雨野(あめの)。あまの、じゃなくて、あめの。

おにーちゃんは、「あめの」から始まる神様の名前を並べかえて「みかな」という名前を考えてくれていました。

わたしの名前、「アメノミカナ」の元になったのは、「アメノミナカ」という神様の名前でした。

アメノミナカは、日本神話の最初にだけ名前が出てくる「造化三神」という三柱の神様のうちの一柱。

神の国「高天原」の最高神であるアマテラスでさえ、大切なことを決める際には、必ずアメノミナカに助言を乞い、その通りにしたとされています。

なぜ、おにーちゃんがわたしの名前に、神様の名前のアナグラムをつけてくれたかというと、それはおとーさんとおーさんの名前が、造化三神の他の二柱の名前によく似ていたからだそうです。

他の二柱の神様の名前は「タカミムスヒ」と「カミムスヒ」というそうです。

おとーさんの名前が孝道(たかみち)。

おかーさんの名前が結(ゆい)。

タカミムスヒやカミムスヒは、結びの神様で、おとーさんとおかーさんの名前は、偶然、その二柱の神様に似ていたのです。

おにーちゃんにそれを教えられた、おとーさんとおかーさんは、何か運命的なものを感じると同時に、おにーちゃんはもしかしてものすごく頭がいい、いわゆる「神童」というやつなのでは? と思ったそうです。

だから、わたしの名前はふたりが考えてくれていた麻衣ではなく、おにーちゃんが考えた、ひらがなで「みかな」にすることに決めたそうでした。
ひらがななのは、漢字が思いつかなかったからだそうです。
一個だけ思いついたのが「美哉」だったそうですが、自分たちでも読めないから、やめたということでした。

そして、四人家族のうちの3人が神様っぽい名前の中、おとーさんが好きだった作家の五木寛之先生から名前を借りた、おにーちゃんの名前だけが「寛之(ひろゆき)」という、神様とは何の関係もない名前になってしまい、さすがの神童(仮)も、まさか自分だけ仲間はずれになるとは思いもよらなかったそうでした。


どうしてわたしが、いまさらというか、いきなりというか、こんな話をしているかというと、わたしとおにーちゃんはさっき、婚姻届を書き終えたばかりだったからでした。


ちなみに、おにーちゃんは、アメノトリフネとかアメノミハシラを並べかえたような、かっこいい名前がよかったそうなのですが……
中二病の臭いしかしないから、ひろゆき、でよかったんじゃないかなって、わたしは思いました(笑)

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