ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

「おにーちゃん、男の娘になる。②」

9月20日、ダイソーから帰宅した後のこと。

ちょうどおかーさんがお出かけしていて、家にはわたしとおにーちゃんしかいませんでした。

わたしは、「チャ~ンス!」とばかりに、リビングで一息入れようとしていたおにーちゃんを押し倒して、痴女と化したのです。

そして、そのあといっぱいセック……
したかったけど! 我慢した!! 褒めて!!!

おにーちゃんの服を全部剥いだのです。

「やだ、やだやだ、みかなさん、やめて! いやです! やめてください!」

「くくく、わたしが思ってた通り、顔と同じでかわいい身体してるのね、坊や」

「は、はじめてだから、優しく、してください……」

これが、雨野家で日常的に行われている即興コントです。

大事なことなので二回言いますが、日常的に行われています。


わたしは、まずはおにーちゃんの裸の上半身に、「超巨乳になれる、女性版『にくじゅばん』のようなもの」をつけさせました。

「よーよー、にーちゃんよ~、意外といいパイオツしてんじゃんかよ~。おい、お前らも見てみろよ、このにーちゃん、でかいパイオツのわりに、ビーチクも乳輪もデカくないし、きれいなサーモンピンクだぜ! ヒャハハハ!!」

……あれ? 世界が核の炎に包まれた後って設定だっけ? この即興コント。

ま、いっか。

「超巨乳になれる、女性版『にくじゅばん』のようなもの」について、少しだけ説明をば。

それには、ゴムが3つついていて、

① 頭を通し、首にさげる。

② 左右の脇腹あたりから伸びているゴムを背中で結ぶ。

たったそれだけで、Fカップくらいの、これでもかと言わんばかりの、胸の谷間ができる優れものでした。
たぶん叶姉妹くらい。みかさんくらい。

※ちなみに、谷間以外のところは、ボディコン風(?)の服のようになっていて、黒く塗りつぶされているので、乳首はありません。
塗り直して作ろうかな……服を着せたときにシャラポワみたいにしたいし。


そして、先ほどわたしが剥いだばかりの、おにーちゃんが着ていた黒のロンTのプリントが、顔がわからないくらい包帯を巻いた「くまのぬいぐるみ」のイラストで、その体中には、ドクロや十字架がところせましといっぱい描かれているという、実に中2病っぽ……ハロウィンっぽいものだったので、「超巨乳になれる、女性版にくじゅばんのようなもの」の上から、おにーちゃんにそのロンTを再び着せたのです。

そして、わたしは、自分の小さなおっぱいでは経験したこともなかった、

『おっぱいが大きすぎてTシャツのプリントが横に伸びる』

という、自分には無縁すぎて、もはや都市伝説か何かだと思っていた事象を目の当たりにしたのでした。

「くやしい! まさか、おにーちゃんに、先をこされるなんて!!
つらい! にくい!! 自分の貧乳が、つらくて、にくい!!」

なぜ、ダイソーでおにーちゃんに自分の分もと勧められたときに、素直に買ってもらわなかったんだろう……
わたしは、そんな後悔と悔しさで目に涙を貯めました。

だけど、わたしは、たかがそんな程度のことで(次にダイソー行ったときに買う。絶対買う)、泣いてる場合じゃありませんでした。

だって、わたしは、おにーちゃんを一人前の男の娘に、いや、もういっそ邪魔なものは切り落としちゃって、型をとったあとでホルマリン漬けにでもして、

かわいい女の子にしなければいけない!!

という、天からの使命と、魂に刻まれた宿命を持って生まれてきた女の子だから!


そんなわたしの次のターゲットは……

おにーちゃんの勝負パンツらしい、アベンジャーズのスーパーヒーローたちがかわいくデフォルメされた顔がたくさんプリントされたボクサーパンツだけかろうじて履かせていた……

そう、下半身。

ちょっとアベンジャーズの皆さんがモッコリしていたのが気になりましたが……

妹のわたしに、こんな風に愛情たっぷりにもてあそばれて興奮してしまったのか、それとも、おっぱいが大きすぎてTシャツのプリントが横に伸びるくらいに巨乳になってしまった自分に興奮してしまったのか……

わたし的には前者だと嬉しいけど、世間的にはどっちもやべーからあえて聞くのはやめました。でも、前者であれ。

わたしは、ガイコツプリントのニーハイが入っていた袋を、

「レイプ! レイパー!! レイペスト!!!」

と、まるでレイプするかのように引き裂いては、中身を取り出すと、スカートではなく、まずはニーハイをおにーちゃんにはかせることにしました。

そのニーハイは、もちろん女の子用です。
足の大きさから脚の太さまで、完全に女の子サイズのものだったので、足のサイズが26.5センチの成人男性であるおにーちゃんに、ちゃんとはけるのか少し心配でした。

ですが、さすがはダイソーさんです。わたし、セリア派ですけど。
そのニーハイは、おにーちゃんにはかせてもしっかりと膝上までちゃんとあり、まさにニーハイの名に恥じない、ニーハイの中のニーハイ、キング・オブ・ニーハイと言っても過言ではないほどに、素晴らしいものでした。

そして、その時、わたしの目の前にいたのは……

おっぱいが大きすぎてTシャツのプリントが横に伸びるくらいに巨乳の、ガイコツプリントのニーハイをはいた、アベンジャーズのボクサーパンツをモッコリさせたド変態の成人男性(血のつながった実の兄)……

とりあえず写メるよね? みんなも撮るよね? ね?


それから、わたしはおにーちゃんに、クモの巣をイメージしたスカートをはかせました。

本当ならスカートを、中学や高校の頃のわたしの制服みたいに、腰のところで何回か折り曲げてミニスカートにして絶対領域を作りたかったところだけど、おにーちゃんの太ももが毛むくじゃらだったからやめました。

絶対領域は、絶対に作らないといけない聖域(サンクチュアリ)なので、あとで必ずちゃんと剃らせるか、除毛クリームを買わせるとして……

お次は、いよいよウィッグです。

ダイソーさんの500円のそれは、こちらも安価ながらもなかなかしっかりとした作りをしているようでした。
ブラウンのロングヘアーで、その長さは背中じゃなくて、胸の前に垂らしたら、ちょうど乳首が隠れるくらいって言えば、大体わかるかな?

おにーちゃんは、長い髪に慣れてないから、ウィッグをかぶると、少し鬱陶しそうにしていました。
それを見たわたしは、んー、おにーちゃんツインテール好きだし、せっかくだからしてあげたかったけど、なんかめんどくさかったから、とりあえずヘアゴムでふたつくくりに。

ウィッグの前髪はぱっつんで、おにーちゃんは眉毛が非常に男性的で、りりしい形をしているので、ウィッグの位置を少し手前にずらして、そのぱっつん前髪で眉毛がうまく隠れるようにしてみました。

すると……

……あれ? この子、どこかで見たことがあるような……

わたしは目の前にいる、女装途中のおにーちゃんの姿に、なぜだか既視感を覚えました。
でも、どうしてだろ……

くっきり二重の大きな両目。
しっかりした鼻筋と、高すぎず低すぎず、ちょうどいい大きさの鼻。
口角がちゃんとあがってる少し厚めの唇。
日焼けができない白い肌はもちもちしていて、顔のどこにもまだシワはない。

お化粧はまだ何にもしてないというのに、すでにちょっと、いや、これもう、かなりかわいいんじゃ……

ていうか、これ、ノーメイクのときのわたしの顔じゃね?

わたしより顔が大きかったり、肩幅が広かったり、お腹が中年のおじさんみたいにぽっこりしてたり、無駄毛ボーボーだったりするけど……

この人、でかいわたしじゃね?

……うん、どこからどう見ても、でかいわたしだ、これ。

性別の違いや、年齢差、体格差、髪の長さ、服装の違い……
そんな様々な違いの重なりから、19年間気づくことのなかった衝撃の事実にわたしは気づかされ、

「ちょっ、遺伝子! 遺伝子の力、半端ないんですけどーー!!」

と、リビングの中心で、わたしが遺伝子を叫んだまさにその瞬間、


「なぁに~? みかな、そんな大きな声だして~。遺伝子がどうしたの~?」


わたしとおにーちゃんは、その声に驚き、声がした方へ同時に顔を向けました。

そこには、リビングを覗きこむ「おかーさん」の姿が……

晩御飯のためのお買い物から帰ってきたばかりのおかーさんが、おにーちゃんの格好を目撃し、しばらく固まった後でエコバッグを床に落としたのは、その十数秒後のことでした。

          

「ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く