ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

四度、時は少し遡り、2020/08/14 おにーちゃんのたんじょうび・いぶ!

人生で、「泥棒猫」って言葉を使うことって、そうそうないと思うんですけど、

うちの母 → 2011年、兄がはじめてできた彼女を
家に呼んで、その子が帰った直後の玄関にて。

わたし → 2017年、兄がはじめて結婚を考えてた相手を
家に呼んで、その子が帰った直後の玄関にて。

我が家では、この10年間に二度ありました。


これは、おにーちゃんの誕生日(8/15)の前夜、というか、日付が変わっておにーちゃんの誕生日を迎えてしまった直後のお話。


「どうしよ……
日付が変わって、おにーちゃんの誕生日になっちゃった……」


わたしは自分の部屋で、頭を抱えていました……

三日前からアマゾンや楽天を暇さえあれば見てたけど、なかなかこれってものが見つからなくて……

結局、おにーちゃんへの誕生日プレゼントを何にも用意できていなかったのです。


ていうか、煙草を買いに行くって夕方出かけて行ったおにーちゃんが日付が変わっても、まだ帰ってきてないんですけど!?

浮気だ、これ。

絶対浮気してる……

なんで? どうして?

わたしがいるのに。

わたしが世界で一番おにーちゃんのことが大好きで、
わたしが世界で一番おにーちゃんのことを大切に思っていて、
わたしが世界で一番おにーちゃんのことを理解してるのに。

どうして、おにーちゃんは、わたしじゃない女の子と、一年に一度しかない、誕生日になる瞬間をいっしょにすごすの?



いつの間にか、わたしは薄暗いキッチンにいて、包丁を食器乾燥機の中から取り出していたりして。


「ほんとうに、うわきしてたら、おにーちゃんをころして、わたしもしのうかな……」


ふふ、ふふふ、ふふふふふ、と、完全にヤンデレ化していたのです。




でもなー、最近わたしとしか遊んでないおにーちゃんに出会いがあったとは思えないし……


そう思い直し、ヤンデレ化を解いたわたしでしたが、


ハッ、まさか、例のぐるちゃの中の女の子の誰かと、個人的に繋がってたとか?

確かにひとりだけ、すっごく仲が良さそうな子はいたけど……

しかも、隣の県の子だった気がする……


「もし朝帰りとかしてきやがったら……ふふふ、ふふふふ……」


すぐに、再びヤンデレ化したのです。


あ、言葉がきたない、やりなおし・・・


もし朝帰りとかしてきやがりましたら、我が家でこの10年に二回あった、母とわたしによる、おにーちゃんの彼女に対しての泥棒猫発言の三回目が、わたしの口からまた出る……

絶対また出ちゃう!!


わたしは、包丁を一旦食器乾燥機に戻すと、一度部屋に戻り、スマホを見ました。


LINEは既読にはなっていました。
おにーちゃんのくせにわたしを既読スルーとかありえないんですけど!?

しかたない……あれを使うしかないか……

あれとは、おにーちゃんは面倒くさがりなので、スマホにロックをかけていないので、前にこっそりインストールして普段使わないアプリが入っているフォルダにこっそり入れておいたGPS機能を使った追跡アプリのこと。

そのアプリでおにーちゃんの現在位置を確認する。


移動してる。たぶんこの早さは車……

今はまだホテルとかではなさそう……

でも現在位置は案の定隣の県……

ホテルに向かってる途中……?


おにーちゃんが現在ひとりで帰路にあるなら、あと一時間もすれば帰ってくるはず……

とりあえず、今からちゃちゃっと作れる手作りアクセでも作って待ってよう……

ペアものにしよ。

誕生日にふられて帰ってくるのはかわいそうだし、慰めるの大変だけど、彼女ができてはしゃいで帰ってきたりしたら悪・即・斬鉄剣確定だから、どちらにせよ、いまのうちに、作れる時間のあるうちに、誕生日プレゼントを作っておこうと思ったのです。



おにーちゃんは、ラノベやアニメの「俺妹」や「エロマンガ先生」が大好きだけど、桐乃ちゃんのことはあんまり好きじゃなくて、黒猫さんが好き。

両面全面印刷のえっちなイラストの抱き枕持ってるくらい黒猫さんが好き。

狭霧ちゃんも大好き。

つまり、わたしがおにーちゃんが帰ってきたら一番にしなくちゃいけないのは、
闇落ちして、「おんなかんけい、せいさんして」って言うこと!!

ふふ……ふふふ……



おにーちゃんは、それから2時間くらいしてようやく帰ってきました。

わたしは車が家の駐車場に止まる音でそれに気づいて、あわてて階段を降りて玄関に向かいました。


「日付が変わる瞬間を、一緒に過ごしたかった!!」


上に書いたみたいな闇堕ちや、狭霧ちゃんみたいなセリフは出てきませんでした。


わたしはおにーちゃんに抱きついて、

「一緒に過ごしたかったのに、どうして?
どこに行ってたの!?」

おにーちゃんの胸に顔をうずめて、泣きじゃくってしまいました。


それから、散々お説教してからの、お誕生日プレゼント。


手作りのペアブレスレット。


お手紙を書こうと思ったけれど、間に合わなかったから、

「おにーちゃん、みかなのおにーちゃんに生まれてきてくれて、本当にありがとう。だいすき!!」

上目遣いでそういって、涙腺ダム決壊する兄を見て、我ながらあざとい妹だなぁ、と思いながらもニヤニヤが止まらない、みかなちゃんなのでした。


「ところで、どこに行ってたの?」


「えっと……、ちょっと気晴らしにドライブというか……なんというか……」




「嘘だッ!!!!!」


          

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