ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

2020/08/17 前編

昨日、わたしにお会計させたえちえちグッズを、帰宅早々早速お楽しみになるかと思いきや、おにーちゃんは全くその気配を見せませんでした。

せっかく気を遣ってひとりにさせようとしてあげても、リビングでいつも通りパソコンしてるし……
晩御飯の後とか、寝る前とかのお楽しみにしてるのかな……?

あまりに気になったので聞いてみると、おにーちゃんはこの1か月、全く性欲がないそうでした。


「え、じゃあ、なんで買ったの!? わたしに買わせたの!?
なっ、なんだと……わたしをはずかしめたかっただけだと……」


そんなわけで、わたしはゆうべ、晩御飯を食べてお風呂に入った後、27歳にして性欲がなくなってしまったおにーちゃんの部屋に、えちえちランジェリーを着て登場してみました!!

ほんとは、最初はものすごく恥ずかしかったんだけど……
慣れって怖い……

小一時間もする頃には、えちえちランジェリー姿のまま、おにーちゃんのベッドに寝転んでYouTubeを観たりアプリをしたり、そこにはいつも通りのわたしがいたのです。


えちえちランジェリー姿のわたしを見て性欲を取り戻して野獣になられても困っちゃうけど、おにーちゃんは全くと言っていいほど、えちえちランジェリー姿のわたしに興味がないご様子……

あの……少しはドキドキしてくれたりとか、そういうのは……?
……うん、ないんだね。


めっちゃ普通だし! 何この人!!


野獣になられても困っちゃうけど、ドキドキはしてほしい……

わたしがそんな複雑な乙女心でいると、

「なぁ、みかな、前から思ってたことがあるんだけど」

おにーちゃんが不意にわたしを呼びました。

お、お、ついに、ついに!
おにーちゃんが、わたしのこのえちえちランジェリー姿に何かしら反応を……?

期待に小さな胸を膨らませて、おにーちゃんの次の言葉を待つわたし……


「『孫』っていう演歌、あるじゃん? 結構古い歌なんだけど。
あの歌詞の、『孫』のところを『みかな』に変えると、ぼくの気持ちを代弁した歌になるなぁって、ずっと思ってるんだけど、どう思う?」


おにーちゃんのわたしへの愛が、まさかのおじいちゃん目線だということが判明した!!


わたしはとぼとぼと、隣の自分の部屋に戻り、

「もう夜這いしかない……」

と、ひとり、悶々と眠れぬ夜を過ごすことになったのでした。


まったく眠れる気がしなかったわたしは、おかーさんもおにーちゃんも無事寝てくれたようなので、
(あ、ちなみに、うちのおとーさんは、2年前に他界しました)

「わたしのターン! ドロー!!」

と言わんばかりに、そのままの格好でリビングに行ってみたり……ちょっとだけお庭に出てみたり……
でも、なんだかすごく悪いことをしている気がして、すぐに自分の部屋に戻ったり……
めちゃくちゃ蚊にさされたし……


そんなことをしているうちに、8月17日の朝になってしまったのでした。


わたしはおにーちゃんが全然興奮してくれなかったえちえちランジェリーを脱ぎ捨てて、いつものお気に入りのおしゃれ部屋着に着替えて、

「あ~た~らしい~、あ~さがきた~。き~ぼ~うのあ~さ~だ~」

と歌いながら、毎朝好例のおにーちゃんの部屋乱入からの、叩き起こしに来てあげていました。


寝ているおにーちゃんの耳元で、

「妹を孫目線で見るおにーちゃん星人をたおしにいってくだちい」

と、何度も何度も囁きました。

そんなGANTZ風のモーニングコールが、おにーちゃんが実家に帰ってきてから、毎朝の恒例行事になっていたのです。


そして、わたしは、ベッドのそばに転がる、あるものを見つけてしまったのでした。

それは、まだ大人の階段をのぼっている途中のわたしが、見てはいけないもの……

昨晩わたしのえちえちランジェリー姿に無反応だったおにーちゃんによる、おにーちゃんのためにわたしがお会計した例のアレ……

性欲が最近ないと言っていたおにーちゃんが、わたしを辱めるためだけに買っただけのはずのものが、使用済みの状態で転がっていました。
ちゃんとフタがしてあったからまだよかったけど……
やっぱり、わたしのと似た形をしてるのかな……


わたしは、そのおぞましいものを、ティッシュ越しにつかむのもなんだか汚そうだったので、プリンタ用紙ごしにつかみ、そのおぼましいものによる文字通りの物理攻撃によっておにーちゃんを叩き起こしたのでした。


目を覚ましたおにーちゃんは、

「いつもと、起こし方がちがう……
あと、それ、昨日の……あれ、だよ?」

わたしが手に持っているものを見ると、そう言いました。

「うん、わかってる。
だから、プリンタ用紙5枚ごしにつかんでるの。
今日は、いつものGANTZ風はやめて、めちゃイケでおにーちゃんが好きだった、起きてから何秒で大好物なものを食べれるか企画にしてみたよ?」


それ、食べるものじゃないから!

っていうリアクションを期待していたわたしに、おにーちゃんは言いました。


「……みかなのこと、食べていいの?」


その瞬間、わたしの頭は真っ白になりました。


「おにーちゃん、寝ぼけてるの……?」

わたしはおにーちゃんのベッドに腰かけて尋ねました。


「そりゃ、まあ、寝起きだから……
あ、昨日のえっちなの、よく似合ってたね。かわいかった」

「……ありがと。でも、それ、昨日言って欲しかったな」

「恥ずかしくてさ……
何度かチラ見はしたけど、ガン見は出来なかったし……
でも、本当にかわいかった」


きっとそのとき、わたしの顔は真っ赤になっていたと思います。


「……うれしい。今日は違うのきてあげるね」

わたしがそういうと、おにーちゃんは嬉しそうに笑って、

「うん、あのさ、ひとつお願いがあるんだけど……」

そう言ったので、

「いいよ? おにーちゃんのお願いならなんでも聞いてあげる!」

すっかり気分をよくしたわたしは、軽はずみにそんな返答をしてしまいました。



「みかなが今持ってるそれ、洗って何度も使い回せるやつだから、洗っといてくれない?」



「……絶対に嫌です。死んでも嫌」



          

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