ディスカウントショップで兄がわたしを18禁コーナーに連れていこうとしています。

雨野美哉(あめの みかな)

2020/08/16 前編

おにーちゃんの誕生日の翌日、おにーちゃんにドライブに誘われたわたしは、ディスカウントショップで今まさに、おにーちゃんに18禁コーナーに連れていかれようとしていました。

2020年8月16日、日曜日の真っ昼間の出来事でした。

これ、何のセクハラですか?

おにーちゃんは、ツタヤとかゲオとかにもある18禁コーナー特有ののれんを、
「やってる?」みたいな感じで片手を上げてくぐると、目をキラキラさせながら、わたしに言いました。

「みかな、ほしいものがあったら、何でも買ってやるからな!」

いやいやいやいや、おにーちゃん?
ここに、わたしがほしいものなんてあるわけが……

……あった。

いや、厳密に言うとほしいわけじゃないんだけど……
だって、男性用のものだし……
でも、すごく気になるっていうか……
怖いもの見たさというか、なんというか……

わたしはそれを手にとり、パッケージに書かれていた文章を、声に出して読んでみることにしました。

「すべてのメンズの永遠の夢!
おっぱい4貫の谷間に挟まれる幸せ!!」

そこは、わたしたちの他には、兄よりもかなり年上の、いわゆるおじさんと呼ばれるご年齢の、小太りで禿げ散らかされた方が数人いました。

興奮のあまり、大きな声で読み上げてしまったわたしを、小太りで禿げ散らかされたおじさんたちが、ぎょっとした目で見つめていたらしいです……(小一時間後、お兄-ちゃん曰く)

「な、な、なにこれ……
いわゆるオ◯ホール的なものの外側に、山ほどおっぱいがついてるとかもう意味がわかんない……
この形……、もはや縄文時代の土器!!」

さっきよりも大きな声で、そのえちえちなジョークグッズ(笑)の箱を手に取り、
感想を述べるわたしを、さらにぎょっとした目で見るおじさんたち。

「ていうか、おっぱいの単位って、一貫、二貫なんだ……
お寿司といっしょなんだね……」

わたしは手にもっていた箱を棚に戻して、おにーちゃんを見ました。

おにーちゃんは、わたしのすぐ隣で、別のオ○ホール的なものを手にとっていました。

わたしの視線に気づくと、おにーちゃんは言いました。

「なぁ、みかな、洗って繰り返し使えて、770円って安いと思う?」

ちょ、ちょっとこの人、妹に何聞いてんの!? 馬鹿なの!?

「あ、あの、わたしに、聞かないで、も、もも、もらえますか?」

しどろもどろになりながら、わたしは答えました……

わたしは、えっちなことにものすごく興味はあるし、中学生の頃から、おにーちゃんに内緒で、おにーちゃんの行きつけ(笑)の動画サイトを見たり、お兄ちゃんがどんなキーワードで検索してたかとかも把握してたりするんだけど……

実は、その……
なんていうか……
わたし、もう女子大生(1年)なんだけど、まだ未経験というか……
これ以上は、言わなくてもわかるよね? ね?

っていうか、これには深い訳があって!
高校が女子校だったから! 大学も女子校だし!!

だから、身近な年の比較的近い異性が、おにーちゃんしかいなくて……

おにーちゃんは、ちょっとというか、かなーり手のかかる人なんだけど、身内のひいき目かもしれないけど、割とかっこいい方だと思うし……

中学生の頃には、おにーちゃんのことちょっと好きっていうか、初恋がおにーちゃんでした! どうもすみません!

それなのに、おにーちゃんは、つい先月まで丸三年間、お仕事で実家を離れてて、年に2,3回しか帰ってきてくれなかったりして……

その間に、会えない時間がわたしの初恋をじっくりことこと煮詰めて、おにーちゃんがいろいろあって実家に帰ってきたときには、いっしょにいるだけでどきどきしちゃうっていうか、顔は真っ赤になっちゃうし、手汗もすごいかいちゃうし、目が合っただけで、どうしたらいいのかわからなくなったり……

とにかく、おにーちゃんが帰ってきてばかりの頃のわたしはおにーちゃんのことが好きすぎて生きるのがつらい、というくらいの状態でございまして……

丸一か月がたって、最近ようやく普通に接することができるようになったばかりなのです。

以上、恥ずかしい説明終わり!!


おにーちゃんは、買い物カゴにその洗って何度でも使える、オ○ホール的なものを入れるか入れまいか、

「買おうかな。でもレジに持っていくのが恥ずかしいんだよなあ……」

数分ほど悩んだ挙句、カゴに入れて、そして、わたしの顔をじっと見ました。


それが何を意味するか、わたしにはすぐにわかってしまいました。


          

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