あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
エピローグ ②(通算148話)
紅葉が錦 (にしき) の織物のように美しかった。
この世界にも秋がある。
五感のすべてが秋を感じていた。
第六感「シックスセンス」。
第七感「セブンセンシズ」。
人の脳は未だすべてが解明されているわけではなく五感の先にはそのようなものが存在し、それは108個存在する。
第一〇八感「ヘブンセンシズ」の先に、アカシックレコードが存在する。
わたしがいるのは、そんな場所だった。
ふたりの太陽の巫女が女王の力に目覚め、ここにたどり着く前から、わたしと「彼」はそこにいた。
脳にとって肉体はただの足枷に過ぎず、肉体があるために五感しか感じられない。
稀に特殊な才能を持って産まれてくる者がいるけれど、そのような者でもたどりつけるのはせいぜい第六感や第七感までだ。
肉体は足枷だが、肉体がなければ脳は生きることもできない。
だから、太陽の巫女のような特別な存在でない限り、人が生きたままこの世界にたどりつくためには、別人格のような存在に肉体を預け、生かし続けさせなければならない。
わたしはそんな風にしてこの場所にたどり着いた。
しかし「彼」は、別の方法でこの場所にやってきた。
肉体を生命維持装置に委ねることでわたしを追いかけてきたのだ。
「君はいつまでここにいるつもりなんだい?」
「ずっと。あなたはもう帰った方がいいわ。いつまでも恋人を待たせていたらかわいそうでしょう?」
「太陽の巫女がこの場所の存在を、シノバズに知らせてしまった。
巫女の力を目の当たりにした彼は、人を超えた力を手にしつつある。
彼はぼくを連れ戻そうとしている。
君を助けようともしている」
「だから?」
「君はずっとはここにはいられない。わかっているんだろう?」
「でも、まだ時間はあるわ。
シノバズにどれだけの才能があったとしても、人である限り巫女の力には遠く及ばない。巫女ももうその力を失っている」
「君は、君が産み出してしまった彼女たちに肉体を与えるすべを探しているのだろう?
答えをすでに人は持っているじゃないか」
「クローンではだめだもの。
クローンは肉体だけじゃなく、人格を持って産まれてきてしまうから。
肉体だけを用意する方法が必要なの」
「ここには、夏目メイがいる。
人は死ねば、皆ここに来る。
君の本当の兄や、産まれてくるはずだった妹もいる。
彼女たちはここをただの黄泉の国だと勘違いしている。
君がここがはそんな場所ではないと教えたら、君の助けになってくれるはずだ」
「あなたこそ、あちら側のあなたにここの存在を教えてあげたら?
あちら側にもここは存在するのでしょう?
そうしなければ、8年後にはあなたの大切な妹は、あちら側に行ってしまうわ」
「妹がそれを望むなら、ぼくはそれを受け入れるつもりだよ」
「わたしも、夏目メイにはもう頼らないと決めたの。わたしのためなら、彼女はきっとまた無理をしてしまうから」
でも、と、わたしは続けた。
「太陽の巫女には、璧隣寝入に会わせてあげたかったわね」
「彼」は、太陽の巫女やそのすぐそばにいた者に、わたしの存在を気づかれることがないよう、巫女が本来持つはずの最高レベルの閲覧権限を強制的に引き下げていた。
だから巫女は、反魂の儀の真実を知らぬまま、その力を太陽に返してしまった。
それは「彼」にとって、大切な友人を裏切る行為だった。
わたしは「彼」に、そんなことをもう二度とさせたくなかった。
「彼」のためにも、わたしは早く、わたしが求める力を見つけなければいけない。
わたしはそう思った。
          
この世界にも秋がある。
五感のすべてが秋を感じていた。
第六感「シックスセンス」。
第七感「セブンセンシズ」。
人の脳は未だすべてが解明されているわけではなく五感の先にはそのようなものが存在し、それは108個存在する。
第一〇八感「ヘブンセンシズ」の先に、アカシックレコードが存在する。
わたしがいるのは、そんな場所だった。
ふたりの太陽の巫女が女王の力に目覚め、ここにたどり着く前から、わたしと「彼」はそこにいた。
脳にとって肉体はただの足枷に過ぎず、肉体があるために五感しか感じられない。
稀に特殊な才能を持って産まれてくる者がいるけれど、そのような者でもたどりつけるのはせいぜい第六感や第七感までだ。
肉体は足枷だが、肉体がなければ脳は生きることもできない。
だから、太陽の巫女のような特別な存在でない限り、人が生きたままこの世界にたどりつくためには、別人格のような存在に肉体を預け、生かし続けさせなければならない。
わたしはそんな風にしてこの場所にたどり着いた。
しかし「彼」は、別の方法でこの場所にやってきた。
肉体を生命維持装置に委ねることでわたしを追いかけてきたのだ。
「君はいつまでここにいるつもりなんだい?」
「ずっと。あなたはもう帰った方がいいわ。いつまでも恋人を待たせていたらかわいそうでしょう?」
「太陽の巫女がこの場所の存在を、シノバズに知らせてしまった。
巫女の力を目の当たりにした彼は、人を超えた力を手にしつつある。
彼はぼくを連れ戻そうとしている。
君を助けようともしている」
「だから?」
「君はずっとはここにはいられない。わかっているんだろう?」
「でも、まだ時間はあるわ。
シノバズにどれだけの才能があったとしても、人である限り巫女の力には遠く及ばない。巫女ももうその力を失っている」
「君は、君が産み出してしまった彼女たちに肉体を与えるすべを探しているのだろう?
答えをすでに人は持っているじゃないか」
「クローンではだめだもの。
クローンは肉体だけじゃなく、人格を持って産まれてきてしまうから。
肉体だけを用意する方法が必要なの」
「ここには、夏目メイがいる。
人は死ねば、皆ここに来る。
君の本当の兄や、産まれてくるはずだった妹もいる。
彼女たちはここをただの黄泉の国だと勘違いしている。
君がここがはそんな場所ではないと教えたら、君の助けになってくれるはずだ」
「あなたこそ、あちら側のあなたにここの存在を教えてあげたら?
あちら側にもここは存在するのでしょう?
そうしなければ、8年後にはあなたの大切な妹は、あちら側に行ってしまうわ」
「妹がそれを望むなら、ぼくはそれを受け入れるつもりだよ」
「わたしも、夏目メイにはもう頼らないと決めたの。わたしのためなら、彼女はきっとまた無理をしてしまうから」
でも、と、わたしは続けた。
「太陽の巫女には、璧隣寝入に会わせてあげたかったわね」
「彼」は、太陽の巫女やそのすぐそばにいた者に、わたしの存在を気づかれることがないよう、巫女が本来持つはずの最高レベルの閲覧権限を強制的に引き下げていた。
だから巫女は、反魂の儀の真実を知らぬまま、その力を太陽に返してしまった。
それは「彼」にとって、大切な友人を裏切る行為だった。
わたしは「彼」に、そんなことをもう二度とさせたくなかった。
「彼」のためにも、わたしは早く、わたしが求める力を見つけなければいけない。
わたしはそう思った。
          
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