あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第4話(第119話)
一限目の授業が終わるまでの間、雨野みかなは少しだけわたしに転校してきた経緯(いきさつ)を話してくれた。
わたしは彼女や山汐芽衣の転校を、両親の仕事の都合か、芽衣が何か病気を患っていて、その療養のためだと勝手に思い込んでしまっていたけれど、そうではなかった。
芽衣はみかなにとって遠縁の親戚に当たるという。
両親を亡くし、身寄りのない芽衣はどこにも行く当てがなく、かといってすでに高校生だった芽衣は施設に入ることもできない。
施設は中学校を卒業するまでしか面倒を見てはくれないのだ。
社員寮があるようなところで住み込みで働く以外に、芽衣には生きていく方法がなかった。
しかし、芽衣は先ほどのように恐怖からいつ子ども返りをしてしまうかわからない。
遠縁の親戚ではあったが、みかなとその兄は、芽衣と大変仲がよかった。
だからふたりは両親に、芽衣を引き取ってくれるよう話した。
しかし、両親はそれを頑なに拒否した。
「わたしのおにーちゃん、パソコンのお仕事をしてるの。インターネットにさえつながってれば、どこに住んでいてもお仕事できるんだ。
だからね、おにーちゃんとわたしは、親を捨ててきたの。
おとーさんやおかーさんじゃなくて、芽衣を選んだんだ」
悲しい話だった。
血の繋がった家族でも、どれだけ話し合いをしてもわかり合えないことがある。
話し合えば理解してもらえると思っていても、相手は話を聞く気も理解をする気もないときがある。
家族を失った芽衣を守るために、みかなや兄は、親を捨てなければいけなかったのだ。
「でも、おにーちゃんもわたしも後悔はしてないんだ」
けれど、みかなや兄が、両親と天秤にかけるほどまでに大切に思われている芽衣が、わたしは少し羨ましかった。
わたしの両親も兄も姉も、ふたりの両親ととてもよく似ていたから。
わたしには、みかなたちのような味方は、もういなかったから。
一限の授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると、わたしはすぐに教室に戻り、ジャージを取りに行った。
それをみかなに渡すと、セーラー服についた口紅を明日までに取ってきてあげると言って、わたしは彼女の制服を預り、そのまま学校を早退した。
わたしには、みかながしてくれた話の半分は本当かもしれないけれど、半分は嘘だとわかってしまった。
わたしは去年の冬に、山汐芽衣を村で見かけたことがあったから。
そのときの芽衣と今の芽衣は、まるで別人のように見えたけれど。
わたしの村には、ちょうどその時期に、一家心中と判断された家があった。
その家には、わたしにとって世界で一番大切な、かけがえのない女の子がいた。
わたしが唯一心を許し、何でも話せる大切な大切な友達だった。
一家心中が発覚する一ヶ月前から、わたしはその子ではない女の子がその家にたびたび出入りしていることを何度も目撃していた。
わたしだけがずっと、一家心中なのではなく一家殺人だと訴えていたけれど、警察も両親も兄も姉も、誰も信じてくれなかった。
山汐芽衣は、わたしの友達とその家族を殺した犯人かもしれなかった。
          
わたしは彼女や山汐芽衣の転校を、両親の仕事の都合か、芽衣が何か病気を患っていて、その療養のためだと勝手に思い込んでしまっていたけれど、そうではなかった。
芽衣はみかなにとって遠縁の親戚に当たるという。
両親を亡くし、身寄りのない芽衣はどこにも行く当てがなく、かといってすでに高校生だった芽衣は施設に入ることもできない。
施設は中学校を卒業するまでしか面倒を見てはくれないのだ。
社員寮があるようなところで住み込みで働く以外に、芽衣には生きていく方法がなかった。
しかし、芽衣は先ほどのように恐怖からいつ子ども返りをしてしまうかわからない。
遠縁の親戚ではあったが、みかなとその兄は、芽衣と大変仲がよかった。
だからふたりは両親に、芽衣を引き取ってくれるよう話した。
しかし、両親はそれを頑なに拒否した。
「わたしのおにーちゃん、パソコンのお仕事をしてるの。インターネットにさえつながってれば、どこに住んでいてもお仕事できるんだ。
だからね、おにーちゃんとわたしは、親を捨ててきたの。
おとーさんやおかーさんじゃなくて、芽衣を選んだんだ」
悲しい話だった。
血の繋がった家族でも、どれだけ話し合いをしてもわかり合えないことがある。
話し合えば理解してもらえると思っていても、相手は話を聞く気も理解をする気もないときがある。
家族を失った芽衣を守るために、みかなや兄は、親を捨てなければいけなかったのだ。
「でも、おにーちゃんもわたしも後悔はしてないんだ」
けれど、みかなや兄が、両親と天秤にかけるほどまでに大切に思われている芽衣が、わたしは少し羨ましかった。
わたしの両親も兄も姉も、ふたりの両親ととてもよく似ていたから。
わたしには、みかなたちのような味方は、もういなかったから。
一限の授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると、わたしはすぐに教室に戻り、ジャージを取りに行った。
それをみかなに渡すと、セーラー服についた口紅を明日までに取ってきてあげると言って、わたしは彼女の制服を預り、そのまま学校を早退した。
わたしには、みかながしてくれた話の半分は本当かもしれないけれど、半分は嘘だとわかってしまった。
わたしは去年の冬に、山汐芽衣を村で見かけたことがあったから。
そのときの芽衣と今の芽衣は、まるで別人のように見えたけれど。
わたしの村には、ちょうどその時期に、一家心中と判断された家があった。
その家には、わたしにとって世界で一番大切な、かけがえのない女の子がいた。
わたしが唯一心を許し、何でも話せる大切な大切な友達だった。
一家心中が発覚する一ヶ月前から、わたしはその子ではない女の子がその家にたびたび出入りしていることを何度も目撃していた。
わたしだけがずっと、一家心中なのではなく一家殺人だと訴えていたけれど、警察も両親も兄も姉も、誰も信じてくれなかった。
山汐芽衣は、わたしの友達とその家族を殺した犯人かもしれなかった。
          
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