あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第28話(第110話)第四部「春霞」鬼の章之弐
「戸田刑事、公安の刑事がひとり殺されたそうね」
電話に出た相手にわたしは言った。
「黄泉の国からの電話かと思って出てみれば、随分下世話なことを聞きますね。
いや、黄泉の国からだからこそか」
戸田刑事はさほど驚いた様子はなかったようだった。
彼は、神奈川県警の、マル暴と呼ばれる暴力団担当の刑事で、あたしが生まれ育った家である「鬼頭組」や、山汐凛が生まれ、紡や芽衣、そして夏目メイを産むきっかけとなった家である「夏目組」と関係の深い人物だった。
発見されたあたしの変死体から、携帯電話が持ち去られていたことを彼は知っているはずだった。
持ち去ったのが、あたしを殺した夏目メイだということも。
だから、あたしの携帯電話からいつか自分に電話がかかってくることは、想定の範囲内だったということだろう。
戸田刑事は、あたしの携帯電話を使って、夏目メイが電話をかけていると思っているのだ。
「あたしが教えてあげた名古屋マユミと宮沢渉は見つかった?」
「……!?」
名古屋マユミと宮沢渉。
そのふたりは、戸田刑事と、昔彼の教育係を務めた安田という刑事が10年前から探し続けている人物だった。
10年前に名古屋で起きた少女ギロチン連続殺人事件。
宮沢渉はその真犯人であり、名古屋マユミは宮沢渉に連れ去られた安田刑事の妻だった。
あたしは鬼頭組の力を使って、ふたりの居場所を突き止め、夏目メイや夏目組の情報を引き出すための交渉材料にしたことがあった。
「まさか本当に黄泉の国からの電話とはね……」
「あたしが鬼頭結衣だろうが、夏目メイだろうが、それとも他の誰かだろうが、今はどうでもいいことよ。
あたしは、公安の刑事を殺した人間が誰か知っている」
「いいでしょう。話を聞かせてください」
「10年前に、この国に大量破壊兵器を持ち込んだテロリストがいたでしょう?」
わたしは、戸田刑事にすべてを話した。
数人の女子高生や、ハッカーがひとりいたところで、どうにもならない相手と戦わなければいけないからだ。
警察の力が必要だった。
「多重人格者の人格管理を可能とするシステムですか……
にわかには信じられない話ではありますが、昨年の夏に青西高校で起きた売春強要事件には確かに謎が多すぎた。
10年前、夏目組の傘下の暴力団が、テロ組織「天禍天詠」を名乗り、そのリーダーである小久保晴美を名乗る人物が、大量破壊兵器をこの国に持ち込んだ事件もまた。
しかし、そのような物が存在するのであれば……」
「信じるか信じないかは」
「私次第ということですね」
戸田のことをあたしはあまり好きではなかったけれど、頭のいい男は嫌いじゃなかった。
戸田刑事だけではなく、わたしはもうひとり連絡を取らなければいけない相手がいた。
「轟(とどろき)、久しぶりね」
あたしは、鬼頭組の現組長に電話をかけた。
その男は実直で、悪い男ではないのだけれど、あたしはその頭の悪さに辟易した。
電話に出た相手にわたしは言った。
「黄泉の国からの電話かと思って出てみれば、随分下世話なことを聞きますね。
いや、黄泉の国からだからこそか」
戸田刑事はさほど驚いた様子はなかったようだった。
彼は、神奈川県警の、マル暴と呼ばれる暴力団担当の刑事で、あたしが生まれ育った家である「鬼頭組」や、山汐凛が生まれ、紡や芽衣、そして夏目メイを産むきっかけとなった家である「夏目組」と関係の深い人物だった。
発見されたあたしの変死体から、携帯電話が持ち去られていたことを彼は知っているはずだった。
持ち去ったのが、あたしを殺した夏目メイだということも。
だから、あたしの携帯電話からいつか自分に電話がかかってくることは、想定の範囲内だったということだろう。
戸田刑事は、あたしの携帯電話を使って、夏目メイが電話をかけていると思っているのだ。
「あたしが教えてあげた名古屋マユミと宮沢渉は見つかった?」
「……!?」
名古屋マユミと宮沢渉。
そのふたりは、戸田刑事と、昔彼の教育係を務めた安田という刑事が10年前から探し続けている人物だった。
10年前に名古屋で起きた少女ギロチン連続殺人事件。
宮沢渉はその真犯人であり、名古屋マユミは宮沢渉に連れ去られた安田刑事の妻だった。
あたしは鬼頭組の力を使って、ふたりの居場所を突き止め、夏目メイや夏目組の情報を引き出すための交渉材料にしたことがあった。
「まさか本当に黄泉の国からの電話とはね……」
「あたしが鬼頭結衣だろうが、夏目メイだろうが、それとも他の誰かだろうが、今はどうでもいいことよ。
あたしは、公安の刑事を殺した人間が誰か知っている」
「いいでしょう。話を聞かせてください」
「10年前に、この国に大量破壊兵器を持ち込んだテロリストがいたでしょう?」
わたしは、戸田刑事にすべてを話した。
数人の女子高生や、ハッカーがひとりいたところで、どうにもならない相手と戦わなければいけないからだ。
警察の力が必要だった。
「多重人格者の人格管理を可能とするシステムですか……
にわかには信じられない話ではありますが、昨年の夏に青西高校で起きた売春強要事件には確かに謎が多すぎた。
10年前、夏目組の傘下の暴力団が、テロ組織「天禍天詠」を名乗り、そのリーダーである小久保晴美を名乗る人物が、大量破壊兵器をこの国に持ち込んだ事件もまた。
しかし、そのような物が存在するのであれば……」
「信じるか信じないかは」
「私次第ということですね」
戸田のことをあたしはあまり好きではなかったけれど、頭のいい男は嫌いじゃなかった。
戸田刑事だけではなく、わたしはもうひとり連絡を取らなければいけない相手がいた。
「轟(とどろき)、久しぶりね」
あたしは、鬼頭組の現組長に電話をかけた。
その男は実直で、悪い男ではないのだけれど、あたしはその頭の悪さに辟易した。
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