あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第24話(第106話)
その女の子は車椅子に乗っていた。
まるで不思議の国や鏡の国から飛び出してきたような女の子だった。
色素の薄い長い髪と、大きな瞳と長い睫毛、甘ロリのファッションが印象的な、人形のようにかわいい女の子だった。
傍らには、執事のように男装した女の子がいた。
「何をしてるの?」
と、わたしに声をかけたその女の子は、写真を撮ろうとしていたことを咎めるような口調ではなくて、純粋にわたしがしていることに興味がある、そんな口調だった。
「わたし、明日か明後日にはこのマンションに引っ越してくるの。
だから、友達にこのマンションだよって、写メを送ろうと思って」
と、わたしが答えると、
「ここに住めるってことは、あなたの家はお金持ちなんだね」
と、その子は言った。
「うちは別にお金持ちじゃないかな……
おにーちゃんが、お金を持ってるの。
ここに引っ越してくるのも、おにーちゃんとわたしと、知り合いの女の子だけ。
おとーさんとおかーさんには家がちゃんとあるから」
わたしは、どうして知らない女の子に、そんなことを話しているのだろうと思った。
「お金を持ってるのが、親が兄弟かは別に関係ないと思うんだよね。
あなたがお金持ちの家の子なのは変わらないから。
あなたは、お友達に、うちはこんなにお金持ちなんだよって自慢したいの?」
「別にそういうわけじゃないけど……」
「あなたがそういうつもりはなかったとしても、お友達はそう受けとるかもしれないじゃない。
お友達が普通の家の子だとしたら、なおさらだと思わない?
あなたがお金持ちだと知って、あなたから離れていくかもしれない。
あなたを利用しようと考えるかもしれない。
そういう可能性、ちゃんと考えた?」
いやな女の子だな、と思った。
だけど、この子はそばにいる執事みたいな格好の女の子といっしょにマンションから出てきた。
このマンションに住んでいるお金持ちの家の子なのだ。
もしかしたら、今までにたくさんそういう経験をしてきて、わたしが同じ目に遭わないように忠告してくれてるのかもしれないと思った。
「羽衣さんは、たぶんそんな人じゃないはずだから……」
わたしが思わず口にしてしまった友達の名前に、
「あなた、羽衣の友達なの?」
意外にもその子は食い気味で食いついてきた。
「羽衣って、久東羽衣のこと?」
その子の口から、羽衣のフルネームが出てきたことに、わたしは驚いた。
わたしは、驚きのあまり、うん、と答えるだけで精一杯だった。
そして、
「もしかして、あなた、雨野みかな?」
わたしの名前を知っていたことにも驚かされたわたしは、今度はうなづくことしかできなかった。
「へー、あなたがねー」
彼女は車椅子を器用に操りながら、わたしの周りを円を描くように何周もまわった。
まるで、わたしの頭のてっぺんから足のつまさきまでを、なめまわすように見るようだった。
そして、その子は、車椅子を止めると言った。
「羽衣から聞いてたほどかわいくないんだね」
むかついた。
それがわたしと草詰アリスの、ファーストインプレッションだった。
          
まるで不思議の国や鏡の国から飛び出してきたような女の子だった。
色素の薄い長い髪と、大きな瞳と長い睫毛、甘ロリのファッションが印象的な、人形のようにかわいい女の子だった。
傍らには、執事のように男装した女の子がいた。
「何をしてるの?」
と、わたしに声をかけたその女の子は、写真を撮ろうとしていたことを咎めるような口調ではなくて、純粋にわたしがしていることに興味がある、そんな口調だった。
「わたし、明日か明後日にはこのマンションに引っ越してくるの。
だから、友達にこのマンションだよって、写メを送ろうと思って」
と、わたしが答えると、
「ここに住めるってことは、あなたの家はお金持ちなんだね」
と、その子は言った。
「うちは別にお金持ちじゃないかな……
おにーちゃんが、お金を持ってるの。
ここに引っ越してくるのも、おにーちゃんとわたしと、知り合いの女の子だけ。
おとーさんとおかーさんには家がちゃんとあるから」
わたしは、どうして知らない女の子に、そんなことを話しているのだろうと思った。
「お金を持ってるのが、親が兄弟かは別に関係ないと思うんだよね。
あなたがお金持ちの家の子なのは変わらないから。
あなたは、お友達に、うちはこんなにお金持ちなんだよって自慢したいの?」
「別にそういうわけじゃないけど……」
「あなたがそういうつもりはなかったとしても、お友達はそう受けとるかもしれないじゃない。
お友達が普通の家の子だとしたら、なおさらだと思わない?
あなたがお金持ちだと知って、あなたから離れていくかもしれない。
あなたを利用しようと考えるかもしれない。
そういう可能性、ちゃんと考えた?」
いやな女の子だな、と思った。
だけど、この子はそばにいる執事みたいな格好の女の子といっしょにマンションから出てきた。
このマンションに住んでいるお金持ちの家の子なのだ。
もしかしたら、今までにたくさんそういう経験をしてきて、わたしが同じ目に遭わないように忠告してくれてるのかもしれないと思った。
「羽衣さんは、たぶんそんな人じゃないはずだから……」
わたしが思わず口にしてしまった友達の名前に、
「あなた、羽衣の友達なの?」
意外にもその子は食い気味で食いついてきた。
「羽衣って、久東羽衣のこと?」
その子の口から、羽衣のフルネームが出てきたことに、わたしは驚いた。
わたしは、驚きのあまり、うん、と答えるだけで精一杯だった。
そして、
「もしかして、あなた、雨野みかな?」
わたしの名前を知っていたことにも驚かされたわたしは、今度はうなづくことしかできなかった。
「へー、あなたがねー」
彼女は車椅子を器用に操りながら、わたしの周りを円を描くように何周もまわった。
まるで、わたしの頭のてっぺんから足のつまさきまでを、なめまわすように見るようだった。
そして、その子は、車椅子を止めると言った。
「羽衣から聞いてたほどかわいくないんだね」
むかついた。
それがわたしと草詰アリスの、ファーストインプレッションだった。
          
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