あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第23話(第67話)
わたしが、すべてを終わらせる。
そう言ったわたしを、夏目メイは、山汐凛の顔を醜く歪ませてわらった。
まるでその顔は、
「新しいオモチャ、みーつけた」
彼女の言葉通り、こどもが捕まえたバッタやイナゴをおもちゃのように簡単に脚を引きちぎるときのような顔だった。
こどもであるがゆえに、それがどれだけ残酷なことであるか知らない、そんな顔だった。
そして、胸元から取り出したサイレンサー付きの拳銃の銃口をアリスに向けた。
「やっぱり、アリスはわたしのおもちゃにはふさわしくないわ」
なんのためらいもなく、引き金を引いた。
放たれた2発の弾丸は、アリスの脚を撃ち抜いた。
「メイ……? どうして……?」
地面に転がったアリスの脚を、さらに四発、拳銃で撃ち抜いた。
「もうあんたはほんとに用済み。
でも、新しいオモチャを連れてきてくれたから、命だけは助けてあげる」
それから、特別にいいことを教えてあげるね、と彼女は言い、
「シュウは、自殺じゃないよ。
わたしが、ホームから突き飛ばしたの」
アリスにだけ聞こえるようにではなく、あえてわたしにも聞こえるようにそう言った。
そのとき、わたしの中で、何かが壊れる音がした。
それから先のことを、わたしは覚えていない。
わたしは、夏目メイに向かっていき、アメフトのタックルのような形で彼女を押し倒すと、馬乗りになって彼女を殴り続けたらしい。
そのすきに、学が夏目メイの家の固定電話から救急車と警察を呼んだという。
すぐに家の外に戻ってきた彼は、わたしを羽交い締めにして殴るのをやめさせると、夏目メイが意識を失ってはいるが生きていることを確認したそうだ。
学は警察や救急車が来る前に、わたしを連れて車で■■■村を出たという。
夏目メイとアリスは病院へと運ばれたらしかった。
わたしがその話を聞かされたのは、横浜のアリスの家に着いてからだった。
そして、わたしの目の前には今、
「山汐 凛」
「山汐 紡」
「内藤美嘉」
「夏目メイ」
山汐凛を主人格とする、3人の別人格、それぞれの名前が別の筆跡で書かれたシールが貼られた、4台の携帯電話があった。
内藤美嘉と書かれた携帯電話は壊れていた。
山汐凛、山汐紡と書かれた携帯電話は電源が切られていた。
夏目メイの携帯電話だけが、電源が入っていた。
「夏目メイの携帯電話を、内藤美嘉のもののように壊してしまえば、そして、山汐凛の携帯電話の電源を入れれば、山汐紡の携帯電話を山汐凛に返せば、夏目メイの人格は消滅し、山汐凛の体は山汐凛だけのものになるかもしれない。
加藤麻衣や鬼頭結衣、それから草詰アリスや久東秀のような被害者を、羽衣ちゃんのような被害者遺族を出さずに済むようになるかもしれない。
けれど、この四台に書かれた名前を鵜呑みにはできない。
夏目メイが、どんな小細工をしているかわからないからね。
知り合いのハッカーに、この壊れている内藤美嘉の携帯電話を調べてもらおうと思う」
学は一生懸命説明してくれたけれど、わたしの頭には何も入ってこなかった。
兄は夏目メイに殺されていた。
アリスは今度こそ本当に歩けなくなってしまうかもしれない。
それどころか、心が壊れてしまったかもしれない。
学は銃刀法所持で、わたしも傷害か殺人未遂の罪で逮捕されてしまうかもしれない。
わたしは、ひどく後悔していた。
わたしは、横浜に来てはいけなかった。
          
そう言ったわたしを、夏目メイは、山汐凛の顔を醜く歪ませてわらった。
まるでその顔は、
「新しいオモチャ、みーつけた」
彼女の言葉通り、こどもが捕まえたバッタやイナゴをおもちゃのように簡単に脚を引きちぎるときのような顔だった。
こどもであるがゆえに、それがどれだけ残酷なことであるか知らない、そんな顔だった。
そして、胸元から取り出したサイレンサー付きの拳銃の銃口をアリスに向けた。
「やっぱり、アリスはわたしのおもちゃにはふさわしくないわ」
なんのためらいもなく、引き金を引いた。
放たれた2発の弾丸は、アリスの脚を撃ち抜いた。
「メイ……? どうして……?」
地面に転がったアリスの脚を、さらに四発、拳銃で撃ち抜いた。
「もうあんたはほんとに用済み。
でも、新しいオモチャを連れてきてくれたから、命だけは助けてあげる」
それから、特別にいいことを教えてあげるね、と彼女は言い、
「シュウは、自殺じゃないよ。
わたしが、ホームから突き飛ばしたの」
アリスにだけ聞こえるようにではなく、あえてわたしにも聞こえるようにそう言った。
そのとき、わたしの中で、何かが壊れる音がした。
それから先のことを、わたしは覚えていない。
わたしは、夏目メイに向かっていき、アメフトのタックルのような形で彼女を押し倒すと、馬乗りになって彼女を殴り続けたらしい。
そのすきに、学が夏目メイの家の固定電話から救急車と警察を呼んだという。
すぐに家の外に戻ってきた彼は、わたしを羽交い締めにして殴るのをやめさせると、夏目メイが意識を失ってはいるが生きていることを確認したそうだ。
学は警察や救急車が来る前に、わたしを連れて車で■■■村を出たという。
夏目メイとアリスは病院へと運ばれたらしかった。
わたしがその話を聞かされたのは、横浜のアリスの家に着いてからだった。
そして、わたしの目の前には今、
「山汐 凛」
「山汐 紡」
「内藤美嘉」
「夏目メイ」
山汐凛を主人格とする、3人の別人格、それぞれの名前が別の筆跡で書かれたシールが貼られた、4台の携帯電話があった。
内藤美嘉と書かれた携帯電話は壊れていた。
山汐凛、山汐紡と書かれた携帯電話は電源が切られていた。
夏目メイの携帯電話だけが、電源が入っていた。
「夏目メイの携帯電話を、内藤美嘉のもののように壊してしまえば、そして、山汐凛の携帯電話の電源を入れれば、山汐紡の携帯電話を山汐凛に返せば、夏目メイの人格は消滅し、山汐凛の体は山汐凛だけのものになるかもしれない。
加藤麻衣や鬼頭結衣、それから草詰アリスや久東秀のような被害者を、羽衣ちゃんのような被害者遺族を出さずに済むようになるかもしれない。
けれど、この四台に書かれた名前を鵜呑みにはできない。
夏目メイが、どんな小細工をしているかわからないからね。
知り合いのハッカーに、この壊れている内藤美嘉の携帯電話を調べてもらおうと思う」
学は一生懸命説明してくれたけれど、わたしの頭には何も入ってこなかった。
兄は夏目メイに殺されていた。
アリスは今度こそ本当に歩けなくなってしまうかもしれない。
それどころか、心が壊れてしまったかもしれない。
学は銃刀法所持で、わたしも傷害か殺人未遂の罪で逮捕されてしまうかもしれない。
わたしは、ひどく後悔していた。
わたしは、横浜に来てはいけなかった。
          
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