あなたが創ったこの世界をわたしは壊したい。
第19話(第63話)
わたしが横浜に来て3日目の朝。
なんだかもう1ヶ月くらい経っているような気がしていたから、まだ3日目だということが、とても不思議な感覚だった。
わたしたちは、3人で朝食を食べて、買い物に出掛けた。
加藤学やわたしがアリスの家で暮らすためには、いろいろと必要なものがあったから。
買い物の途中で、お昼ごはんは外食にすることにした。
学が好きな食べ物は、インドカレーとお寿司。それからオムライスにハンバーグ。
アリスは、辛いものが苦手で、生魚も苦手。でもアリスもオムライスとハンバーグは好きだった。
ふたりともこどもみたいでかわいいなと思った。
ゆうべわたしはふたりにオムライスをふるまったばかりだったから、お昼はハンバーグの専門店にした。
わたしは好き嫌いやアレルギーは特になかったから、アリスはインドカレーやお寿司はふたりがデートするときにでも食べて、と言った。
わたしは、ゆうべ彼に抱かれたことを思い出して、顔が真っ赤になった。
わたしと学は、ゆうべから付き合いはじめたばかりで、そのうちアリスが言うようにデートをすることがあるんだろうなと思った。
なんだか順番が逆のような気がしたけれど、でもきっと恋愛には正しい順番のようなものはないのだと思った。
そんなものは誰かが勝手に決めただけなのだと思った。
買い物が一通り終わった後、帰路につく車の中で、学は、これはまだ憶測の域をでないのだけれど、と前置きしてから、山汐凛と夏目メイたちの話をした。
アリスの知る夏目メイは一度も人格が山汐凛やツムギに変わったことがないらしかった。
だから、加藤麻衣だけが、彼女たちの人格が切り替わるタイミングが、それぞれの人格が持つ携帯電話に着信があったときだと知っていたのだという。
学の知り合いに大学病院の准教授がいて、その人は彼が医療現場を題材にした小説を書いたときに監修を引き受けてくれた人で、その後も親交があるらしい。
その准教授曰く、多重人格、正しくは解離性同一性障害に、そのような形で人格が切り替わる症例は過去にないものらしかった。
人の体は有機物で出来ている。
けれど、まるで無機物の機械を動かすのと同じように、脳からの指令は微弱な電気信号によるものだそうだった。
脳からの指令は、自動車でいうマニュアルとオートマがあるという。
腕や脚を動かす、喋るといった指令がマニュアルで、心臓やその他の臓器といった人体そのものを維持するための指令がオートマにあたる。
それらはすべて電気信号によって行われている。
つまり人体や脳は、有機物によって構成された、非常に高度なコンピュータであり機械であると言えるそうだ。
まだ脳については解明されていないことが多いけれど、現代の科学でも、無機物で人体を毛細血管のひとつひとつまで機械として再現することは不可能ではないそうだった。
ただし、無機物の機械として再現した場合、その体は数十メートルから数百メートルの巨大なものになってしまうという。
それくらい、人体の構造は複雑で、脳はその中でも最も複雑なものだそうだ。
しかし、それほど複雑な脳ですら、その容量は1.7GBほどでしかなく、DVD一枚分どころか、PSPのゲームディスク程度のものでしかないらしかった。
DVD一枚は4.7GBあり、PSPのゲームディスクがちょうど1.7GBだという。
たったそれだけの記憶容量で人体のすべてにマニュアルとオートマで指令を出せるプログラムが存在し、人格や記憶までもその容量に含まれる。
人格それ自体は、フロッピーディスクとCDの間にあったMOという記録媒体程度でしかなく、その程度の容量ならば携帯電話の中に十分に納められてしまうという。
携帯電話の着信が人格が切り替わるタイミングになるということは、その携帯電話の電源を切ったり、携帯電話自体を解約することで、別人格が出てこなくすることや別人格そのものを消滅させることが可能なのではないか、と学は考えていた。
それが可能な場合、別人格は脳にあるのだろうか、それとも携帯電話の中にあるのだろうか、彼はわたしやアリスが思いもよらないことを考えていた。
「試してみる価値があるとは思わない?」
わたしたちは、山汐凛の現住所に向かうことにした。
なんだかもう1ヶ月くらい経っているような気がしていたから、まだ3日目だということが、とても不思議な感覚だった。
わたしたちは、3人で朝食を食べて、買い物に出掛けた。
加藤学やわたしがアリスの家で暮らすためには、いろいろと必要なものがあったから。
買い物の途中で、お昼ごはんは外食にすることにした。
学が好きな食べ物は、インドカレーとお寿司。それからオムライスにハンバーグ。
アリスは、辛いものが苦手で、生魚も苦手。でもアリスもオムライスとハンバーグは好きだった。
ふたりともこどもみたいでかわいいなと思った。
ゆうべわたしはふたりにオムライスをふるまったばかりだったから、お昼はハンバーグの専門店にした。
わたしは好き嫌いやアレルギーは特になかったから、アリスはインドカレーやお寿司はふたりがデートするときにでも食べて、と言った。
わたしは、ゆうべ彼に抱かれたことを思い出して、顔が真っ赤になった。
わたしと学は、ゆうべから付き合いはじめたばかりで、そのうちアリスが言うようにデートをすることがあるんだろうなと思った。
なんだか順番が逆のような気がしたけれど、でもきっと恋愛には正しい順番のようなものはないのだと思った。
そんなものは誰かが勝手に決めただけなのだと思った。
買い物が一通り終わった後、帰路につく車の中で、学は、これはまだ憶測の域をでないのだけれど、と前置きしてから、山汐凛と夏目メイたちの話をした。
アリスの知る夏目メイは一度も人格が山汐凛やツムギに変わったことがないらしかった。
だから、加藤麻衣だけが、彼女たちの人格が切り替わるタイミングが、それぞれの人格が持つ携帯電話に着信があったときだと知っていたのだという。
学の知り合いに大学病院の准教授がいて、その人は彼が医療現場を題材にした小説を書いたときに監修を引き受けてくれた人で、その後も親交があるらしい。
その准教授曰く、多重人格、正しくは解離性同一性障害に、そのような形で人格が切り替わる症例は過去にないものらしかった。
人の体は有機物で出来ている。
けれど、まるで無機物の機械を動かすのと同じように、脳からの指令は微弱な電気信号によるものだそうだった。
脳からの指令は、自動車でいうマニュアルとオートマがあるという。
腕や脚を動かす、喋るといった指令がマニュアルで、心臓やその他の臓器といった人体そのものを維持するための指令がオートマにあたる。
それらはすべて電気信号によって行われている。
つまり人体や脳は、有機物によって構成された、非常に高度なコンピュータであり機械であると言えるそうだ。
まだ脳については解明されていないことが多いけれど、現代の科学でも、無機物で人体を毛細血管のひとつひとつまで機械として再現することは不可能ではないそうだった。
ただし、無機物の機械として再現した場合、その体は数十メートルから数百メートルの巨大なものになってしまうという。
それくらい、人体の構造は複雑で、脳はその中でも最も複雑なものだそうだ。
しかし、それほど複雑な脳ですら、その容量は1.7GBほどでしかなく、DVD一枚分どころか、PSPのゲームディスク程度のものでしかないらしかった。
DVD一枚は4.7GBあり、PSPのゲームディスクがちょうど1.7GBだという。
たったそれだけの記憶容量で人体のすべてにマニュアルとオートマで指令を出せるプログラムが存在し、人格や記憶までもその容量に含まれる。
人格それ自体は、フロッピーディスクとCDの間にあったMOという記録媒体程度でしかなく、その程度の容量ならば携帯電話の中に十分に納められてしまうという。
携帯電話の着信が人格が切り替わるタイミングになるということは、その携帯電話の電源を切ったり、携帯電話自体を解約することで、別人格が出てこなくすることや別人格そのものを消滅させることが可能なのではないか、と学は考えていた。
それが可能な場合、別人格は脳にあるのだろうか、それとも携帯電話の中にあるのだろうか、彼はわたしやアリスが思いもよらないことを考えていた。
「試してみる価値があるとは思わない?」
わたしたちは、山汐凛の現住所に向かうことにした。
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