気づいたら異世界にいた。転移したのか、転生したのかはわからない。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者。
第91話 すべてを仕組んだ元凶
3日が過ぎた。
レンジは、転移8日目の朝を迎えていた。
彼は、父がスマホに遺してくれた動画を観ていた。
「転移初日のログインボーナスは、ウルトラレア級の巫女がふたり。
ステラとピノアだ。
2日目のログインボーナスは、ダークマターの浄化方法。
これはレオナルドがくれる。
3日目のログインボーナスは、ウルトラレア級の竜騎士とドラゴンだ。
4日目以降のログインボーナスはお楽しみに、ってところかな」
5日目のログインボーナスは、「父が遺してくれた大剣の刀身に、父や魔王の目に映る風景が映し出されることになったこと」だろうということはわかっていた。
そして、その刀身は父の死によって一度何も映さなくなっていたが、死んだはずの父が見ているであろう光景がまた映るようになっていた。
昨晩の、パーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンのブライ版やサトシ版が本当にある可能性が出てきていた。
4日目のログインボーナスよりも先に5日目がわかってしまったが、4日目はおそらく「アルマが戦乙女として覚醒すること」だったのだろう。
そして、「彼女のドラゴン・ヨルムンガンドが仲間になってくれること」だったのだろう。
6日目以降のログインボーナスが何なのかはまだわからなかった。
まさか10001人目の転移者だったりして、と考えたりもしたが、さすがにそれはないだろうなと思った。
「ごめんな、レンジ。
父さんはもうタイムオーバーみたいだ……
あとは、まかせていいか?
……本当にごめんな、レンジ。愛しているよ」
動画を観終わると、レンジは支度を始めた。
ステラとアンフィスがピノアからゴールデンバタフライ~を習っている間、レンジもニーズヘッグとアルマに稽古をつけてもらっていたからだ。
「レオナルド、今日もよろしく頼むよ」
彼は部屋にいた甲冑の狼の頭をなで、その首筋のスイッチを切り替えようとした。
そのスイッチにより「甲冑型」と「狼型」に切り替えられるのだが、そこには昨日まではなかった「ヒト型」が追加されていた。
おそらくはそれが8日目のログインボーナスなのだろう。
エーテルを吸収すればするほど強固な鎧となるとは聞いてはいたが、一定量を超えると進化する、そういうことなのだろうか?
あるいは、この甲冑の狼を作り出した魔装具鍛冶のレオナルドは、ダークマターを浄化する秘術をさらに昇華させ、自分のものとする魔法使いが現れることによって、ヒト型の姿を持つようにあらかじめ仕込んでいたのかもしれない。
「レオナルド、本当にあなたは、レオナルド・ダ・ヴィンチみたいな天才だったんだな。
ディカプリオには似てなかったし、ぼくはタイタニックしか見てないけど」
狼の姿のとき、この甲冑には確かに自我や意思が存在していた。
つまりは、飛空艇の魔法人工頭脳のようなものが、この甲冑にはあらかじめ組み込まれていたのだ。
レンジは、そのスイッチをヒト型に切り替えた。
甲冑に切り替えたときは、狼は一度その体をバラバラに分解し、レンジの身体に自動的に、まるで変身ヒーローのパワードスーツのように装着される。
ヒト型に切り替えると、狼がその身体を一度分解するところまでは一緒だったが、レンジの身体には装着されず、甲冑だけで自立する姿となった。
「よぅ、久しぶりだな。レンジ」
甲冑から懐かしい声が聞こえた。
「って言っても、まだ一週間ぶりくらいか? 1ヶ月ぶりくらいな気がするけどな」
レオナルドの声だった。
レンジは胸から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
「本当に。一週間しか経ってないのが不思議なくらいだね」
「ブライとサトシを倒してくれたみたいだな」
「全部、ピノアのおかげだけどね。ぼくはステラに眠らされちゃってたから」
レンジは自嘲気味にそう言ったが、
「レンジ、お前は何もしなかったわけじゃないだろ?
俺はずっと見てたぞ。
お前がピノアやステラを、みんなを導いたんだ。
だから、自分を卑下するな」
レオナルドはそう言ってくれた。
「このレオナルドメイルに与えた魔法人工頭脳には、ブライやサトシ以上の敵の存在を感知したとき、甲冑と狼に続く第三のこの形態と、人工頭脳自体のバージョンアップが自動的に行われるように細工しておいた。
今の俺は、死んだ俺のコピーに過ぎないが、俺もお前たちといっしょに戦わせてもらう」
そして、彼は、
「来るぞ」
と言った。
彼が今こうしてレンジと話しているのは、彼やレンジが知るブライやレンジの父以上の存在を感知したからなのだから、それは当然のことではあったが、あまりにも突然すぎた。
「窓の外を見ろ。
オリジナル・ブライが率いるリバーステラの大艦隊のお出ましだ」
レンジは窓に駆け寄り、外を見た。
そして、恐れていたことが現実になってしまったのを見た。
「本物のブライの野郎が、いつから俺たちの知るブライになってやがったのかは、俺にもわからねーけど……
ピノアが倒してくれたあいつは、まだましな奴だった。
ステラやピノアを娘と想い、大切に想う、サトシがお前に対して抱いていたのと同じ『心』があったからな。
だが、あの艦隊にいるブライは違う。
時だけじゃなく、世界さえも超えて、すべてを仕組んだ元凶だ」
          
レンジは、転移8日目の朝を迎えていた。
彼は、父がスマホに遺してくれた動画を観ていた。
「転移初日のログインボーナスは、ウルトラレア級の巫女がふたり。
ステラとピノアだ。
2日目のログインボーナスは、ダークマターの浄化方法。
これはレオナルドがくれる。
3日目のログインボーナスは、ウルトラレア級の竜騎士とドラゴンだ。
4日目以降のログインボーナスはお楽しみに、ってところかな」
5日目のログインボーナスは、「父が遺してくれた大剣の刀身に、父や魔王の目に映る風景が映し出されることになったこと」だろうということはわかっていた。
そして、その刀身は父の死によって一度何も映さなくなっていたが、死んだはずの父が見ているであろう光景がまた映るようになっていた。
昨晩の、パーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンのブライ版やサトシ版が本当にある可能性が出てきていた。
4日目のログインボーナスよりも先に5日目がわかってしまったが、4日目はおそらく「アルマが戦乙女として覚醒すること」だったのだろう。
そして、「彼女のドラゴン・ヨルムンガンドが仲間になってくれること」だったのだろう。
6日目以降のログインボーナスが何なのかはまだわからなかった。
まさか10001人目の転移者だったりして、と考えたりもしたが、さすがにそれはないだろうなと思った。
「ごめんな、レンジ。
父さんはもうタイムオーバーみたいだ……
あとは、まかせていいか?
……本当にごめんな、レンジ。愛しているよ」
動画を観終わると、レンジは支度を始めた。
ステラとアンフィスがピノアからゴールデンバタフライ~を習っている間、レンジもニーズヘッグとアルマに稽古をつけてもらっていたからだ。
「レオナルド、今日もよろしく頼むよ」
彼は部屋にいた甲冑の狼の頭をなで、その首筋のスイッチを切り替えようとした。
そのスイッチにより「甲冑型」と「狼型」に切り替えられるのだが、そこには昨日まではなかった「ヒト型」が追加されていた。
おそらくはそれが8日目のログインボーナスなのだろう。
エーテルを吸収すればするほど強固な鎧となるとは聞いてはいたが、一定量を超えると進化する、そういうことなのだろうか?
あるいは、この甲冑の狼を作り出した魔装具鍛冶のレオナルドは、ダークマターを浄化する秘術をさらに昇華させ、自分のものとする魔法使いが現れることによって、ヒト型の姿を持つようにあらかじめ仕込んでいたのかもしれない。
「レオナルド、本当にあなたは、レオナルド・ダ・ヴィンチみたいな天才だったんだな。
ディカプリオには似てなかったし、ぼくはタイタニックしか見てないけど」
狼の姿のとき、この甲冑には確かに自我や意思が存在していた。
つまりは、飛空艇の魔法人工頭脳のようなものが、この甲冑にはあらかじめ組み込まれていたのだ。
レンジは、そのスイッチをヒト型に切り替えた。
甲冑に切り替えたときは、狼は一度その体をバラバラに分解し、レンジの身体に自動的に、まるで変身ヒーローのパワードスーツのように装着される。
ヒト型に切り替えると、狼がその身体を一度分解するところまでは一緒だったが、レンジの身体には装着されず、甲冑だけで自立する姿となった。
「よぅ、久しぶりだな。レンジ」
甲冑から懐かしい声が聞こえた。
「って言っても、まだ一週間ぶりくらいか? 1ヶ月ぶりくらいな気がするけどな」
レオナルドの声だった。
レンジは胸から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
「本当に。一週間しか経ってないのが不思議なくらいだね」
「ブライとサトシを倒してくれたみたいだな」
「全部、ピノアのおかげだけどね。ぼくはステラに眠らされちゃってたから」
レンジは自嘲気味にそう言ったが、
「レンジ、お前は何もしなかったわけじゃないだろ?
俺はずっと見てたぞ。
お前がピノアやステラを、みんなを導いたんだ。
だから、自分を卑下するな」
レオナルドはそう言ってくれた。
「このレオナルドメイルに与えた魔法人工頭脳には、ブライやサトシ以上の敵の存在を感知したとき、甲冑と狼に続く第三のこの形態と、人工頭脳自体のバージョンアップが自動的に行われるように細工しておいた。
今の俺は、死んだ俺のコピーに過ぎないが、俺もお前たちといっしょに戦わせてもらう」
そして、彼は、
「来るぞ」
と言った。
彼が今こうしてレンジと話しているのは、彼やレンジが知るブライやレンジの父以上の存在を感知したからなのだから、それは当然のことではあったが、あまりにも突然すぎた。
「窓の外を見ろ。
オリジナル・ブライが率いるリバーステラの大艦隊のお出ましだ」
レンジは窓に駆け寄り、外を見た。
そして、恐れていたことが現実になってしまったのを見た。
「本物のブライの野郎が、いつから俺たちの知るブライになってやがったのかは、俺にもわからねーけど……
ピノアが倒してくれたあいつは、まだましな奴だった。
ステラやピノアを娘と想い、大切に想う、サトシがお前に対して抱いていたのと同じ『心』があったからな。
だが、あの艦隊にいるブライは違う。
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