怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧
夢を追うもの笑うもの19
自分に都合の良い事ばかりが起きるとどうしても不安になってしまう。
全ての事柄に誰かの意志があるのでは無いかと疑ってしまう。
「ダンジョン間転移門は今すぐ作れるのか?」
「はいマスター!怠惰ダンジョンのDPがあれば作成可能ですので今すぐにでも設置可能です!」
ダンジョン間を行き来出来る転移門というのは非常にありがたいものではあるが、問題点もある。
湯布院ダンジョンと怠惰ダンジョンを繋げた場合、今まで盤石だった怠惰ダンジョンの防衛力に穴が出来る。
合宿所にする予定なので人の出入りが増える、そうなれば必然的に転移門が何者かに見つかり、使用されるリスクが生じる。
怠惰ダンジョンの防衛という点で考えればダンジョン間転移門の設置は辞めておいた方が良いのは間違いない、だが意思を持ったダンジョンコアである<ルゼ>をこのままにしておくのは忍びない。
「千尋と純の意見を聞きたい、ダンジョン間転移門を設置しても良いと思うか?」
俺は反対寄りの賛成といった感じだが、二人はどう思っているのだろうか。
「私は賛成だ。仮に湯布院ダンジョンから何者かが怠惰ダンジョンへと侵入してきても迎撃も防衛も容易だ、転移門をどこに設置するかが問題ではあるがな」
千尋は賛成派。
怠惰ダンジョンの防衛力を信頼しているからこその賛成だろう。
「私は反対だね!確かにメリットは多いし、リスクも今の所はそんなに高くは無いけど……将来的に湯布院ダンジョンを足掛かりに怠惰ダンジョンが攻め込まれるというリスクはあるからね!現状のメリットよりも将来的なリスクを無くすって意味で反対かな!」
純は反対派。
将来的なリスクを避けようと考えるからこその反対。
「なるほどな……ちなみに俺は賛成だ。確かに色々と考えるべき事もあるけど、俺の考えはシンプルだ。ルゼを一人にしたくない」
あれこれ難しく考えた所で、先の事なんて俺には分からん。
だから俺自身の感情を優先して賛成。
ベルを含めた三人が賛成なので多数決的にもダンジョン間転移門の設置は決まった。
「問題は怠惰ダンジョンの何処に設置するか」
設置する事は決定したので設置場所を話し合う。
「やはり無難に地下広場じゃないか?」
「作成途中の第三階層とか?」
「牧畜エリア?」
様々な意見が飛び交ったが、結局地下広場に新たな部屋を作り、そこに設置する事が決まった。
「じゃあ設置場所も決まったし、早速設置してくれ!」
「はいマスター!ルゼ、ダンジョン間転移門の設置許可をだしてください!」
「はい……」
やはりルゼにはベル程の意志の強さを感じない。
これがルゼの個性であるならば問題無い。
だが違うのであれば、これから先ルゼが成長してベルのように感情豊かになる事を俺は願う。
「怠惰ダンジョン側では既に新しい部屋を作成しましたので、後はこちらを改築して設置するだけです!さぁルゼ、一緒にこのコアルームを改築してみましょう!マスター達は念の為コアルームから出ておいてください!」
「りょーかい」
三人でコアルームを後にする。
「ついでに車をアイテムボックスに収納しに行こうか」
「そうだな」
「だね!ミーちゃん!お願い!」
水龍が純の命令で再び大きくなった。
「じゃあ俺は走っていくから!」
「私もそうするよ!」
千尋と二人で逃げるように湯布院ダンジョンの入り口へと走って行った。
「……まぁ良いか!ミーちゃん!頼んだよ!」
☆ ☆ ☆
車も回収して再びコアルームへと戻ってきた。
「ただいま」
「マスター!ダンジョン間転移門設置完了しましたよ!安全確認も済ませておりますので、いつでも帰れますよ!」
俺達が車を回収しに行っている間に確認作業も終えているらしい。
「じゃあ帰りますか!」
新たに設置されたダンジョン間転移門のある部屋へと移動する。
コアルームの隣に作られた簡素な部屋にそれはあった。
「まぁたこれかい……なんで毎回襖なんだよ……」
「情緒ですよマスター!」
目の前にあるのは赤をベースに虎の絵が描かれた襖。
ルゼの意志が弱いのを良い事に自分の趣味を前面に押し出したベルが、自信満々に胸を張って誇らしげにしている。
「いや、別に良いんだけどさ……転移門なんだからせめて門の要素は残しておいて欲しいって俺は思うんだよ」
「次はそうしますね!マスター!」
「良いじゃないか、襖!この鮮やかな赤に虎の絵が映えてとても素敵だぞ!」
「使えれば何でも良いよ!」
「帰ろう……」
色々と言いたい事もツッコミたい事もあるが、疲れてきたのでベル作の赤虎襖に触れた。
怠惰ダンジョンを選択して、怠惰ダンジョンへと帰る。
☆ ☆ ☆
風呂に浸かりながら一人でゆったりと今後の展開を考える。
「湯布院ダンジョン合宿所は明後日には稼働するらしいし、後は千尋と純に丸投げだな……」
即断、即決、即行動、純の率いる冒険者協会は行動に移すのがとても早い。
既にPCHとも連絡を取っており、湯布院ダンジョン合宿所にPCH所属の加護持ちを招集していた。
急な事なので一日空けて、明後日にはPCHの強化合宿が
行われる。
「これで戦力が底上げ出来れば被害者も減るだろう……」
あとは被害にあった人を冒険者協会を介して援助してあげたい。
「救おうとする人が居れば、貶めようとする人が居る……くだらねぇなぁ人間ってのは……」
地球にとっては人間は害悪にしかならない。
何者かが介入して人間社会を破壊しようとしても人間には文句を言う資格は無い。
「害虫駆除と一緒なんだろうな……」
「良し!寝る前にルゼの様子でも見に行こう!」
風呂から上がって新しい家族の元へと向かった。
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