怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

夢を追うもの笑うもの12


 ベルが英美里のレベリングのお手伝いをしているのを眺めながら、気の練習を行っているのだが中々どうして上手くいかない。

「うぉぉって感じってどんな感じなんだよ……」

 ベルの教え方について多少の不満を溢しながらも気の操作の練習を続ける。

 やはり、この手の事に関して俺には才能が無いのだろう。だが才能が無いからといって諦めるのも恰好が悪いので何とか初歩の初歩ぐらいは出来るようにしたい。

「魔法と気を同時に使えたらカッコイイしな!頑張ろう!」

 気合を入れ直して再度気を動かす練習を続けるのだが、一向に気は動いてはくれない。

 そうなると段々と飽きが来る、上達している実感が無いとどうしてもモチベーションが維持出来ないのが凡才足る由縁なのかもしれない。


「飽きたな……千尋達は今頃東京か……お土産とか買ってきてくれるかな……出来れば食べ物が良いけど」

 気の練習にも飽きがきて、遠い地に居る嫁へと思いを馳せる。土産話も嬉しいが一番嬉しいのはやはり土産物だ、東京と言えばお土産で有名な銘菓も多いので出来れば銘菓を土産として買ってきてくれると大変嬉しい。

 お土産を買ってきて欲しいと言っておけば良かったと思わなくも無いが、催促しているみたいで恥ずかしくて口には出せなかった。

「ベルだったら何の躊躇いも無くお土産頼むんだろうけど……」

「はいマスター!ベルはちゃっかりしっかりとちーちゃんにお土産を頼んでいますよ!出来れば食べ物にして欲しいと頼みましたので、ちーちゃんがお土産を買って帰ったら一緒に食べましょう!」

「ナイスだベル!ありがとう!」

 女神はここに居た。

 普段はあまりお菓子を食べる方では無いのだが、特別な機会が無いと食べられ無い物には滅法弱い。

「ところでマスター!気の操作はどうですか?出来ましたか?」

 小首を傾げながら訪ねてくるあざと可愛いベルに軽くときめきながらも平静を装う。

「いや、全然上手くいかない……コツとか無いのか?」

「コツですか、そうですね……」

 頭を捻りながらコツが無いかと考えてくれるベル。ベルは俺とは違って気の操作も最初から上手く出来ただろうから、コツも何も無いのかもしれないが、俺としては何でも良いからヒントが欲しい。

「最初は血液の流れを意識すると良いかもですね!気の操作をするんでは無くて、気を血液と一緒に流す感じです!」

 思っていたよりもすっとまともなヒントが聞けて良かった。何事も聞いてみるものだな。

「ありがとう!早速そのイメージでやってみる!」


 気を取り直して練習を再開。

 血液、気、一緒に、流れる。

 こういのうのはイメージが大事だ。

 体の中に流れる血液をイメージして、その血液と一緒に俺が感じているこの暖かい気を流す。


「うぉぉぉぉぉぉ!」

 気合も忘れない。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!」

 気合十分、イメージも完璧。
 すると、今まで動く気配の無かった気が僅かだが動いた気がした。

「うごけぇぇぇぇ!」

 今までよりも更に気合を入れて、イメージを固めて、気を操作する。徐々に気の流れる量と速さが増してきた、これは気のせいでは無いだろう。俺はやっと、気を動かす事に成功した。

「まだ油断するなぁ!もっともっともっともっとだ!」

 イメージは心臓というポンプにより、血液が体中を循環する様、そこに暖かい気を流して一緒に体の中を循環させる。

 気が体の中を駆け回り、循環していく。すると同時にアバターの体温も上昇している気がした。体がぽかぽかと暖かくなる。

「これが体内気功か……」

 拙いながらも体内気功を成功させたようで既に効果は表れていた、一番初めに気付いた事は体がいつもより軽く感じる事だ。

「ベル!体内気功出来たっぽい!見てくれ!」

 英美里のお手伝い中のベルを呼び寄せる。

「はいマスター!……おぉ!出来てますね!まだまだ拙いですが、一応は体内気功は出来てますね!もう少しこのまま体内気功の練度を上げて、慣れてきたら一度実践に移りましょう!」

「了解だ!」

 成長を実感出来ると人はこうも嬉しいのかと今更ながら思ってしまった。

「良し!この調子で気の操作をマスターしてやるぜぇ!」


『もしもし!拓美君?今良いかい?』

 気の操作をマスターするべく気合を入れていたら、純から念話が入った。

『良いけど、どうした?何か問題でも起きた?』

『問題というか……あ!ちなみに今、安相さんと馬場君とお話してたんだけどね!実は、冒険者協会に安相さんと馬場君も入れて欲しいって話をされてるんだけどさ!流石に駄目だよね?』

 馬鹿である馬場はまだしも、日本のトップである安相さんまでもが冒険者協会への加入をしたいとは何事なのだろうか。

『いや、意味が分からないんだけど……どうしてそんな話になったんだ?』

『まぁ簡単に言うと、PCH内で内部分裂?対立?が起きてるみたいでね、このままじゃPCHとしての本懐というか役割が果たせそうに無いからって事みたいだね!利権問題って嫌になるよねぇ!』

 PCHという組織の内で対立が起きた事は予想していたのだが、PCHの中でも重要人物である安相、馬場の両名が冒険者協会への加入をしてしまえば、国の管理する組織であるPCHには何か問題があると言っているようなものだ。

 そうなると困るのは俺達でもあるので出来れば二人には冒険者協会への加入はして貰いたく無いというのが俺の意見だ。

『流石に無理かな……あくまでも冒険者協会ってのはPCHがあってこその民間団体だから』

『だよね!良かった!実はもう断ったんだけど、一応確認しとこうと思ってね!お土産はお菓子でも買って帰るから!またね!』

『あぁ、気を付けて帰って来いよ』

 純との念話を終えた。

 やはりというか何というか、PCHの反応が遅かった理由はこれでハッキリした。

 もしかしたら俺達がダンジョンから資源を得られるという事を発表した事が原因で利権問題に発展して、PCH内部
で対立が起きたのかもしれない。

「まぁ、こういう非常時でも利権で揉めるのが政治家って人種だもんな……」

 利権を巡って争うのは政治家としては正しい姿勢なのかもしれないが、せめて非常時だけは慎んでほしいというのが一国民として細やかな願いでもある。




























「お土産、お菓子って言ってたな!ひよこ、バームクーヘン、ラスク辺りだと嬉しいな!」

 お土産ってテンション上がるよね。







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