怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

世界が変わっても人間そんなに変わらない12


 朝食それは一日の始まり。
 世の中には朝食を食べない人も居るだろう、だが朝食をしっかりと摂りたい勢の私は朝食を摂らないとその日一日の動きが悪くなるような気がして、用事がある日や仕事がある日なんかは特にしっかりと摂るように心がけている。
 今日もイベント盛り沢山なので例に漏れずしっかりと朝食を摂る。
 今日の我が家の朝食はエルフ達が収穫したフルーツを使ったヨーグルトフルーツサンドとオニオンサラダとオニオンスープ、とても美味しく頂きました。
 食後のコーヒーもゆったりまったりと頂きました。

 ☆ ☆ ☆


 改めて今日の予定を振り返る、ランダムスライムスポナー設置とエルフの魔法講習とエルフ宅訪問が予定されている。
 朝一番のイベントはランダムスライムスポナー設置なのでまずはベルに念話する。

『ベルー!』
『はい!マスター!新階層とスポナーの準備は整えていますよ!エルフ達には連絡済で既に新階層に来てもらっていますのでマスターの準備が出来ましたら英美里と一緒に新階層へ来てください!』
 アバターで向かうので大した準備も無いので早速英美里に声を掛けて新階層に向かう事にする。
『分かった、すぐに俺達も行くからちょっと待っててくれ!』

「英美里!新階層に向かうぞ!準備は良いか?」
 隣の席に座って笑顔でこちらを見ていた英美里に新階層に向かう旨を伝える。
「はい!準備は出来ていますので、早速向かいましょう!」
 返事を受けてから、アバターを取り出して操作を開始する。
 アバターでの初戦闘が出来る事にワクワクが止まらない、玄関で靴を履いて新階層の入り口がある洞窟まで全力で走り出した。
 レベルも上がり更に身体能力も上がっている筈の俺の全力疾走に何の苦も無く並走してくる英美里にどの程度余力があるのか聞いてみる。
「なぁ……俺は全力だけど英美里は今どのくらいで走ってるの?」
 小首を傾げ、暫く考えてから彼女は口を開いた。
「そうですね……このくらいであれば散歩以上ジョギング未満といった感じでしょうか……走るというよりも早歩き程度の速度ですね!」
 やはりうちの守護者は俺よりも遥かに強いという事実に改めて安心感を覚える、外の連中がどの程度強いのかは分からないが英美里が負けることなど想像することも出来ない。
「そりゃ頼もしい!これからも<怠惰ダンジョン>を守護してくれよ!」
「勿論です!」

 その後も英美里と軽く言葉を交わしながら洞窟へと向かって行った。


「到着!まずはベルのところへ行かないとな!」
 洞窟へと到着してコアルームへと向かう、途中見たことも無い横道があったが恐らくあそこから新階層に行けるのだろうと予想しながらベルの待つコアルームへと足を踏み入れる。
「おはようベル!途中あった横道が新階層に行く道?」
『はい!マスター!おはようございます!そうです、あの道から新階層へ降りる階段に行けますよ!転移門の設置が終了した段階でコアルームも新階層へ移転しますよ!』
 挨拶もそこそこに早速本題へ入ろうとベルに話しかける。
「じゃあ早速スポナーの所へ行こうか!」
『はい!マスター!英美里には場所と使い方を伝えているので、英美里に着いて行ってください。ここから先は英美里に任せておけば大丈夫ですから!何かあれば念話で連絡してください!それとアバターで一度私に触れて頂けますか?』
 唐突なベルからのお願いに多少の疑問はあったがまぁいいかと、言われるままにベルに触れる。
『なるほど……はい!ありがとうございます!……楽しみにしていてくださいね!マスター!ではまた後程!』
「おう?じゃあ行ってくるよ!またな!」
「では私の後ろを着いてきてくださいね!」

 ベルに別れを告げ英美里の後ろを着いて行く、横道に入ってしばらく進むと、洞窟と同じ質感で出来た階段が現れた。
「この階段を降りると新階層ですよ!」
「ああ!楽しみだな!」
 階段の先を見やれば上よりも広い空間が確保されている事が分かる。
 階段をくだると大型のトラックが優に通れるほどの大きなトンネルが続いていた。
 トンネルの先には出口があるのか光が入り込んでいるが、ここからでは外の様子が光の具合なのか良く分からない。
「出口に向かって行けば良いのか?」
「そうですね!光で見えづらいかもしれないですがあの先へ向かいます!エルフ達も待っているでしょうから!」
 言われるままに出口へと進んでいく、進むにつれて外の様子が見えるようになってきた。
「おいおい……マジか!すげーな!これがダンジョン!」

 視界に入ってきたのは緑で出来た絨毯、まるで高原にでも来たのかと錯覚しそうになりながらもトンネルの出口まで辿り着く。
「高原じゃん……なんだあのデカい木は……」

 トンネルを抜けるとそこには緑の絨毯で覆われた草原地帯と遠くに見える山々、ぽつぽつと生えている木々と赤い屋根の建物、ひと際大きく存在感を放っている巨木。
「ここが新階層です!周囲の山々はダミーらしいですが太陽は疑似太陽なので本物と同じような効果を発揮してくれるそうですよ!」
 英美里が説明をしてくれているがあまり耳に入ってこない、この光景に意識を奪われてしまっている。
「この草原地帯は非常に広く作られているそうで、歩いて端まで行くのに一般的な方であれば丸々一日はかかるそうなのであまりトンネルからは離れないようにとベル様から聞いています!」
「それと端まで行くとダミーの効果が無くなり壁しか見えなくなるらしいです!新階層はトンネルを中心として草原、湖、森林のエリアが広がっているので暇な時に散策をしてみたいですね!」
「聞いてますか?」
 英美里に呆れるように話しかけられやっと意識が戻ってきた。
「あぁ、聞いてた聞いてた!それであの大きな木はなんだ?」
「あれはこの階層の環境を整える為の木らしいです、あの木があることで自然に近い環境が作られるらしいですよ!詳しくはベル様に聞いた方が良いかと!」
「へー!あの赤い屋根の建物は?」
「あれは牧畜を行う為にベル様が用意した物ですね!畜舎のような物だと言ってましたよ!」

 気になる事ばかりでつい質問ばかりしてしまうがそろそろ本題へと移りたい。
「ちなみにエルフ達はどこに?」
「あの建物の中に居るみたいですね!行ってみましょうか!」
 英美里に促され建物へと歩いて行く。

 建物は大きく、3つに別れていた。
 いづれも解放型の畜舎のようでそれぞれが草原に柵が設置されている場所へ繋がっておりいくつかの単房も備えられていた、大きさから鶏用、牛用、豚用であることが窺える。
「すごいしっかりした作りだな!でもこの大きさだと掃除が大変そうだな……っとここは家?」
 3つの畜舎が繋がっている中心には一軒家が建てられていた。
 中へ入るとエルフ達が俺達が来るのを待っていたのか椅子に座って待っていた。
「お待ちしておりました!この建物は素晴らしいですね!お風呂や台所にベッドルーム!ここで暮らす事も想定した作りですね!」
「リーダーがここを気に入ったのは分かったよ、おまたせ!」
 会うやいなやこの建物についての感想を聞かせてくれたリーダーと挨拶をかわし、他のエルフ達にも挨拶をしていった。

「それでは全員集まりましたので、ランダムスライムスポナーの所へ向かいましょう!」
 英美里が音頭を取り皆でスポナーの所へと向かう。
「それでスポナーはどこにあるの?」
 俺以外の皆が一斉に真下を指差した。
「下?」
「はい!この家の地下に広い空間があって、そこに設置しているそうです!早速地下へ向かいましょうか!」
 歩き出す皆に着いて行くと玄関の大きな靴箱を開いている、靴箱の中へと入っていくが明らかにおかしい、そんなに大人数が入れるスペースは無い筈だ、だが皆入ってしまい俺も靴箱を覗くとそこには下へ向かう階段が続いていた。
「なるほど……靴箱から地下に行くのね」
 階段を下りていく、かなり下まで続く階段を降り切ると球場程の広さと20メートルはありそうな高さがある広い空間に出た。
「広いな……」
 皆は中心に集まっているので俺もそこへ向かう。
「これが<ランダムスライムスポナー>です!」
 中心には腰の高さ程の大きな水晶のような物が地面から生えていた、綺麗な四角柱型のそれは透き通るような青色だった。
「綺麗だな、これに触ると魔力を使ってスライムが生成されるのか?」
「はい!では早速やってみましょう!少し離れていてください!まずは私が倒して見せますので参考にしてみてください!」

 英美里から少し離れた場所まで移動する、移動したのを見て英美里がスポナーに触れた。
 スポナーが淡く光った瞬間、バスケットボール程の大きさの青色をした何かが英美里の目の前に現れた。
「これは……ブルースライムですね!スライムは核と呼ばれる物が体の中心に存在しています、この核を破壊しない限り倒すことが出来ませんので核を狙って攻撃しましょう!」
 ブルースライムの中心にはまるで顔のような模様のある拳ぐらいの大きさの石のようなものが存在していた、恐らくあの顔もどきがスライムの核なのだろうと見ていると、唐突にブルースライムが弾けて消えた。
「このように核を壊せば簡単に倒せますから!順番にやってみましょう!」
 意味が分からなかった、ブルースライムが急に弾けて消えたと思ったら英美里がやってみろと言い出したのだ。
「ちょっと待ってくれ!今なにをしたの?急に弾けて消えたんだけど……」
 小首を傾げながらこちらを見てくる英美里が口を開く。
「腕を振って核を破壊しただけですが……」
 なんだそれは、俺の目がおかしいのかとエルフに目配せするとリーダーが代表して答えてくれた。
「英美里様、私達でもぎりぎり腕が動いた事が分かる程度ですので……児玉様では恐らく見えていないと思いますよ」
 何か納得したように何度か頷く俺の護衛。
「ではもう一度、今度はゆっくりと壊してみますね!」
 再びスポナーに触れる、今度は赤色のスライムが生成された。
「レッドスライムですね!では、いきますね!」
 今度は俺の目でも腕が動いたのが分かった、だが正直なんの参考にもならない。
「うん……スライムって素手で触って平気なの?」
 さっきの事は忘れてスライムについて質問する。
「スライムは基本的に溶解が主体のモンスターですがカラースライムであれば長時間触れていなければ何も問題ありませんよ!倒してしまえば消えますから、素手でも充分討伐可能な筈です!」


 俺は悟った英美里基準では大丈夫な事でも俺基準ではどうなるか分からない事を、現にリーダーを見ると首を横に振ってきた。
「私達では素手でスライムに触れれば溶かされる危険がありますので、武器を使用して討伐しましょう」
 リーダーの言葉に全力で賛同する。
「そうだな!そうしよう!」
「そうですか……それは想定外でしたね……ご主人様すみません、武器になるようなものは用意していません……今日は見学だけでも良いですか?」
 申し訳無さそうにこちらを見つめてくるが、こればっかりはしょうがないと思い首を縦に振る。

「では、私たちの武器を使って倒してみますか?」
 リーダーからの救いの手が伸びてきた。
「武器持ってるの?」
「はい、スライムを倒すと言われていたので木で作った武器を数種類用意していますから!……どうぞお選びください!」

 そう言ってリーダーがアイテムボックスから取り出したのは木製の長剣、短剣、槍、弓矢、杖、昆の6種類。
 俺は迷う事無く槍を手に取る。
「この槍を貸してもらうよ!」
「ではご主人様!武器も手に入れましたのでスライム討伐をやってみましょうか!」
「おう!任せろ!」





 初のモンスター討伐に心躍らせながら槍をしっかりと握り、スライムの生成を待つ。
「核を狙う!それだけだ!」



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